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向こう側

作者: 紫月紫織

投稿テストを兼ねているので若干改行などに不備があるかもしれません。

怖がってもらえたらいいな。

 仕事柄、夜遅くまで自室で作業をしていることがある。

 これはそんなある日に体験した出来事。


 うちの廊下は良く音がする、ギシギシ軋む音、人の足音と思わしきとんとんとん、という音。

 大体は家鳴りか、風でドアが揺れる音(横に引くタイプのドアです)か、上の階の足音なんだろうと思っていた。


 時刻は午前3時過ぎ、そろそろ疲れてきたし寝ようかとおもった矢先に、部屋の前から足音が聞こえた。

 親が起きているのかとおもいドアを開けて廊下へ出ると真っ暗、結構すぐに出たつもりだがもう部屋に戻ったのかと思って部屋の方を見ても明かりはついていない。

 上の階から響いた足音だったのだろうと思ってこの時はそのまま眠りについた。


 翌日親と話してみて驚いた。

 上の階の人は先月引っ越していって今は空き室だというのだ、知らなかった自分にも驚いた。

 では、昨日の足音は一体どこから響いていたのだろうか?

 家鳴りだったのだろう、そう思ってその時はそのまま忘れてしまったのだ。




 それから一月ほどして、また夜遅くまで作業していた時のことだ。

 ガララ、という部屋のドアが開く音がした。

 午前三時を回っている頃にだ。


 作業の手を止めて振り返ってみると、ドアは開いている。


 だが誰も居ない。


 怪訝に思ってドアの前まで言ってみるも、今も両親の部屋も明かりが付いている様子はない。

 そもそも用事があってドアを開けたのなら何も言わずにいなくなるのはおかしい話だ。


 少し考えた結果、ドアを開く音が聞こえたのは空耳でドアは最初から開いていた。


 そう考えるのが一番の落とし所だろう。


 一人納得した私はドアを今度こそちゃんと占めて再び作業に戻った。


 そして数分後。


 ──ガララッ


 今度こそ確かに聞こえた、そう思って即座に振り返る。



 ドアは、開いていた。



 けれど誰もいない。

 廊下は暗いまま、両親の部屋もやはり見た感じ明かりはついていない。


 ぼちぼち夜が冷える季節になってきていたとはいえ、それとは違う意味の寒さが背筋を伝う。

 一体何故ドアが開いたのか……何か出て行ったのか?



 ──それとも何か入ってきたのか?



 嫌な想像を頭を振って払う。

 疲れているのだろう。


 私は作業をそのままに寝床へ入ることにした。


 余談だが、私はロフトベッドの下を寝床にして、ベッドの周囲にもカーテンを下げることで光を入らないようにしている。

 夜遅くまで、悪ければ日が登ってから寝ることもある生活のため寝床を暗くしているわけだ。


 パソコンの電源を落とし、寝床に入るべくカーテンを引いた。



 その瞬間、黒い女が飛びついてきた。



 その勢いに押されて後ろに転げる。

 寝床に入るまでにつけていたかすかな明かりに照らされて浮かび上がる女は、眼窩と口の中に闇を湛えていた。

 首に手を回されており振り払うことも出来ない。

 押し倒されたような状態で目の前には化物のような女の顔。

 たまらず絶叫するも両親が起きてくる様子もない。


 ──ごぽり

 ────ごぽっ


 女が口を動かすたびに、粘性のある液体が泡立つような音がした。


 やがて──女の眼窩と口から闇が溢れだしたのだ。


 ぼたぼた、ぼたぼた


 溢れだした闇は私の顔を、服を、私の部屋をゆっくりと埋め尽くし、やがて私の視界は女の顔だけになり、そして────




 ドアを叩く音がした。


 どうやらいつの間にか寝ていたようだ。

 ドアに対して返事をすると、母親が買い物に行くということで声をかけてきたらしい。


 ガラリと開かれたドア、次の瞬間母親が悲鳴のような声を上げた。




 驚いて自分を見ていると、私の着ていた寝間着は真っ黒に染まっていた。




 寝間着は洗っても黒いままだったので捨て、私は改めて部屋を確認してみたけれど私の着ていた服以外に何も変わったところはなかった。


 その後も、特に何も起きていない。


 一体あの夜のことはなんだったのだろうか。


 一つだけ言えるのは、あの日以来私は生活を規則正しい物に直しロフトベッドの上で寝る生活に戻ったということだ。

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