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閑話 クーゲル家第一執事

 クーゲル家第一執事




 私はセバス。氏はありませぬがクーゲル家第一執事を任されており、日夜旦那様の為に奔走させて頂いております。


 元々は先々代様、つまり今の旦那様のお祖父様、ベアード様にお仕えしておりました。

 今から40年ぐらい前でしょうか……。

 私も当時は若うございました、傭兵業で金を稼ぎ、男児が一度は夢見る強さを求めておりました。

 しかしそれはベアード様に出会って変わりました、あれは私が傭兵として最後に戦場に立った時でした。


 傭兵として参加していた当時の私はそれまで負けなしでして少々天狗になっていた時期でしたな、いやはやお恥ずかしい。

 そんな私めに降りかかったのは敵軍の罠でした。

 部隊は半壊、私めも大怪我を負い身体の欠損こそ無いものの、いつ死んでもおかしくない状況でした。

 しかしそんな時でした、ベアード様が現れたのは。

 半壊した部隊を、それも傭兵部隊を守るために単騎で敵を蹴散らしていったのです!

 その動きはまさに鬼神! 人とはあれほどの強さを持てるものなのかと感動したほどです。


 そして敵軍を押し返した後思わず聞いてしまいました、「なぜ、助けてくれたんだ・・・」っと、傭兵は金をもらって戦争に参加する。

 だが言い換えてしまえば傭兵団でもない限り戦場で死ねばその者の分の金を払わなくて済むと。

 ですがベアード様はおっしゃいました

「別に彼奴等が気に食わなかっただけだ……それに傭兵とはいえお前さんらは一時とはいえ俺の仲間だ」


 それからでしたな、自分の弱さを知り、あの方のために何かしたいと考えるようになったのは。

 どうすればベアード様に自分の命を救ってもらった恩を返せるのだろうと

その後、私は傭兵業から足を洗い、まず情報を集めました。

 そしてベアード様が開拓領地を持っていることを、そして現在はその下準備中であると。


 そしてある時知ったのがベアード様の人材発掘。

 ならばベアード様が欲する人材になろうと、そんな時でしたベアード様に再開したのは。

 丁度商人とのつながりを作ろうとしてらっしゃったのでしょう、領地開拓となれば当然様々な資材が必要になる。

 そうなると懇意とする商人の存在は必然、しかし今の私では商人になるのはいささか難しい。

 そしてベアード様に会えた私はつい直球で聞いてしまったのです。

「貴方はどんな人材を探しているのですか」っと、一瞬あっけにとられたベアード様でしたがすぐに笑顔になるとこう言ったのです。

「そうだな、商人とのコネはできたしそうなると……」

 そして少し悩んだ末に出たのが

「有能な執事だな、開拓し領として発展させるためにはどうしても家臣団は必要になる、俺の意を汲み信頼できる執事が」

 それが私の人生を決定した瞬間でしたな、私は直ぐ様こう答えました。

「ならば私がその執事になりましょう、今すぐは無理でも貴方が領地開拓を行うその日までに」


 ベアード様は私のその宣言を笑って受け止めてくださいました、そして「5年だ、それまでに立派な執事になれ、そして立派な執事になった時俺のもとに来い」、ベアード様はそう仰ったのです。


 それからでした私が必死になって執事としての修行を積んだのは。

 昔の伝手を使って探し当てたのはかつて王家に在籍し、現在は隠居しているもののそれでも執事として最高峰のと言って過言でない御方。

 最初は当然断られてしまいました、他にも師事を受けたいと言ってくる者が後を絶たず、厳しい修行に逃げ出してしまう者、または諦めてしまう者ばかりのご様子。

 ですが私は諦めませんでした、何度も足を運び続け、それから一月たった頃でしょうか、セバスチャン様に認められたのは。

 それからは過酷な修行の日々でした、礼儀に始まりマナー、料理、掃除、果ては商業、諜報、武術、帝王学、完璧な執事として必要な要素を約5年掛けてみっちり教えこまれました。

 ええ、正直なんど死ぬかと思いましたがベアード様の役に立ちたい!そして何時かあの隣に立ちたい一心で乗り切りました。

 そして修行の完了である最終日、セバスチャン様から告げられました。

「5年間、よく私の修行に耐え抜きましたね、もはや私の教えるべきことは何もない貴方こそが私のたった一人の後継者だ」

 そう仰ったセバスチャン様はとても儚げでした。

「そして、君に執事としての名を送らせてほしい、私が弟子たる貴方に送れる最後の物だ・・・」

 そして私めがセバスチャン様からセバスの名を贈られたその瞬間、これからはセバスと名乗ることにいたしました。

「私には子供はいなかったが、最後にこの世に私が生きた証を残せそうだ……」

 その時セバスチャン様は自分の死期を悟っておられたのでしょう。

「セバス……我が最愛の息子、そう呼んでも構わないでしょうか?」

 私は元々孤児でしたので親と呼べる存在はおりませんでしたが、最愛の息子と呼ばれた瞬間、私めは胸の奥が熱くなりました。

 過酷な修行の5年間が一転して夢の様な時間へと。


「はい、父様……」


 その日は修行の完了を祝い、お互いに料理を出しあい、父様の苦労話や王家に使えていた間の経験談や失敗談、いろいろな事を夜遅くまで話し合いました。


 そして朝日が昇るころに最愛の父は天に召されました……。


 それから少々ごたごたしておりましたがなんとかベアード様の出立に間に合わせることが叶いました。

 そこからの十数年はあっという間でした。森を切り開き、田畑を開梱し村から町と呼べる様になるまで。



 っとと、少々思い出にふけってしまいましたな。

 しかしクーゲル家の執事として長年仕えさせて頂いておりますが、クーゲル家は親子三代に渡って退屈になるということがありませんな。

 旦那様もお戻りになったようですが……なにやら籠を抱えているご様子。

 あれがまた新たな騒動を呼びこまなければいいが……いや、旦那様が持ち帰った以上なにか起こるでしょうな!


 では、執事として旦那様を支えるとしましょう。













 あれから旦那様がお帰りになるとすぐに私めとリーシャを執務室に来るように仰ると、そそくさと部屋に駆け込みました。

 私もすぐに鎧の脱着を手伝うために執務室に入りましたが、そこには獣人の赤ん坊が横になっているのが目に入りました。

 鎧の脱着と片付ける傍らに赤ん坊を観察しておりましたが興味深げにこちらを見つめておりました。


 片付けを済ませ直ぐ様窓を開けると旦那様に魔法をかけました。

 これは修行自体から重宝させてもらっております清潔の魔法、欠点があるとすれば水で洗い流した後のサッパリ感が得られないことでしょうな。

 旦那様も忙しい時はこれで済ますのですがそうでない時は水で洗い流す派なのです。

 ですので今回は匂い消しで所謂空気の清潔かですかな。


 そして、そんな所にリーシャが紅茶を持って参上いたしました。


 それからでしたな、ベアール様の爆弾発言は。


「この子を家の養子兼跡継ぎ予定として育てようと思うんだ!」


 ああ、この方はまた……まあ現状だと分からないわけではないのですがな。

 おそらく旦那様は引かないでしょうが、言うべきことは言っておきましょう。


「失礼ながら旦那様、養子はまあまだ納得しましょう、ですが跡継ぎ予定というのはいささか……」


「そ、そうでございます、それに跡継ぎならご長男が」


「しかたがないだろう、あのバカが3年前に勝手に出て行って連絡の一つもよこさない。そうなると次を用意しないといけないがそうそう簡単に男子に恵まれるわけもない。それに家の様な開拓領地に嫁ごうなんて物好きはそうそういないだろうしな」


 そうなのでございます、数年前にご子息様がいきなり出て行かれてしまわれて跡継ぎが現在いないのです。

 奥方様であられるアイリス様もご子息様を出産なされてから元々の身体の弱さが祟り4年前に亡くなられましたからな。

 かと言ってわざわざ家に嫁に来ようという物好きはいないでしょうな、対象から外されてる利権狙いの貴族を除いては。


「なので俺はこの子を跡継ぎ予定として育てようと思う、それに俺はアイリス以外の嫁を取るきはリーシャを除いて無いぞ」


 そして旦那様はかなりの愛妻家でいらっしゃいました。

 アイリス様が亡くなられた後もただ一人を除いて後妻を取ろうとしませんでした。

 そしてそのただ一つの例外が我が娘であるリーシャなのです。

 親子ともども仕えさせて頂いておりますが、リーシャの場合は旦那様と共に生活し育ったおかげなのか、ある意味ではアイリス様より気を許していた節もあります。


「旦那様、そのようなお戯れはおよしください、私は旦那様の……メイドでございます……」


 しかし当の本人がアイリス様に義理立てしているのか、はたまた決心がつかないせいなのか旦那様を受け入れられないでいる。

 親としては旦那様と結婚して早く幸せになってほしいものだが……私にできるのは時にほんの僅かな後押しと見守ることだけである。


「分かりました、ではその子が7歳になるまでに継ぐに足る資質を備えていたならば私も納得しましょう」

 ですが今はこの止まりかけた空気を動かしましょう。


「ありがとう、そしていつもすまないな、いつも私のわがままに付きあわせて」


「いいえ、旦那様と共に生き、そして時に諌め、止めるべき時に我が生命を持って止める、私めが先代様より、そして亡き奥様から仰せつかった役割であり、私の生きがいでございます!」


 さて、ここで釘は指しておかねばなりませんな。

「しかし、資質が見受けられなければその時は……」

 ついベアード様直伝の鬼迫を使ってしまいましたがこれで大丈夫でしょう。

 しかしもし資質がなかった時は……私の執事としての全てを叩き込んでみるのも楽しそうではありますな。


 その後、赤子を包んでいた布から金貨が出てきたりと少々色々ありましたがこれからまた色々と楽しい日々が続きそうですな。



 いつの日かそちらに言った時はあの時よりもたくさんの話ができそうです、続きはいつかそちらに行く時までお待ちください、父様。


なんだろう、主人公なんかより周りの方がよっぽどキャラ立ってしまった気が・・・、違うんです、最初はもっと短くする予定だったんです!

でも書いてたらどんどん膨れていって・・・次はメイド長ことリーシャさんです。

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