面接とギルドカード
長らくおまたせしてすいませんでした!
面接とギルドカード
side試験官
俺は今、ギルドで新人共の入会試験を行っている。
昔は冒険者としてバリバリ冒険に出かけてたんだがだが、ある時膝をやってしまってな……。
今はこうしてギルドで職員をしていたりする。
最近の悩みは自分の息子が冒険者になると言って聴かないことか……。
原因はわかってる、自分が昔話した冒険譚や他の冒険者の話に憧れてるんだってことには。
親としては危険な冒険者なんかよりは、騎士とかそっちを目指して欲しいんだがな……。
そしてさっき冒険者登録に来た息子とギルド内で口論する始末。
そんな後に、他の登録者の腕を見るためにこうして試験官として見ているんだが、今回はいい腕してる奴らがそこそこいるな、これは成長が楽しみだ。
だが息子よ、てめぇは駄目だ!
そんな中現れたのはさっき息子が絡んだ子だった。
見たところ家のバカ息子より小さい体格、正直心配になるな。
まあ、小さくてもできるやつはいるからこの子はどうかな?
「次は坊主か、さっきは家のバカが突っかかったようでわるかったな」
「あまり気にしてませんから大丈夫ですよ。ですがそう思うのでしたら手加減するか、合格にしてくれると嬉しいですね」
ローブのフードを目深に着込んでいるせいか、顔がはっきり見えないがいい性格してるなこいつ。
「ハッ、抜かせ、実力のないやつに合格出して死なれちゃ寝覚めが悪いんでな。せめて最低限戦える力があれば合格にしてやるよ!」
実際問題、これまで剣を一度も振ったことないようなやつを冒険者にしてすぐに死んだ例も昔は結構あったからな。
場所によっては受付で即発行なんてところもあるらしいから恐ろしい話だ。
ここは迷宮王国なんて呼ばれるだけあってダンジョンとかもあるからこうして実技試験を設けているわけだ。
落ちた奴にも本人のやる気次第でフォロー入れてるしな。
「なるほど、では行きます!」
そういって棒を握った子は俺に突撃してきた。度胸があるのか知らんが、返り討ちにさせてもらおう。
そう思った矢先だった、こっちの間合いに入る手前で着ていたローブをこっちに投げつけてきたのだ!
視界が塞がれてとっさに木剣でローブを払ったが、直ぐ様、棒を槍のよう使い木剣のリーチの外から突いてくる。
手加減しているとはいえ、防戦一方だ。
出鼻を挫いてこっちのペースを崩してからの攻撃、こっちが軸足を動かさないで戦ってるのも気づいているなこりゃ。
どうやらこれまでの連中との試験をしっかり見ていたようだな。
そして気がつけば背中に木製のダガーが命中していた。
ローブと一緒に投げやがったなこいつ……、それにしても小柄だと思ったが……女の子かこいつ!?
銀髪のロングヘヤーを紐でまとめ、まるで尻尾のようにも見える。
顔の方は伸びた髪が上半分を隠すような髪型をしており、表情が読みづらいな。
服装は厚手の長袖に、腰にはベルトがつけられ、そこにポーチとなどがぶら下げられていた。
本来はそこにいろいろ入れてるんだろうな。
どうやらさっきのダガーもそこに刺してあったようだな。
7年後が、いや、これからの成長が楽しみな子だな。
sideout……
sideトリス
「一応これで一本ですよね?」
「確かにそうだが、これは有効打といえるのか?」
あ~、まあそう思われるよね。速度的にも深々刺さるわけじゃないし、鎧を着てたらまあ弾かれる可能性高いからね。
「そうですね、確かに有効打かと言われたら微妙ですけれど、僕の本業は今のところ薬師です。つまりこれが実践であれば当然そのダガーには……」
「なるほど、即効性の毒なり何なりしこんでるってわけか……よろしい、合格だ。それにしても棒捌きもなかなかだったぞ、今後が楽しみだなおい!」
こうして実技試験は突破できたのでした。
ちなみ実技試験には魔法の方もあったのですが、そっちは割愛します。
すこし目立ったのでそっちは目立たないように最低限のマジックアローを用意された的に打って終わりました。
そして肝心の面接です。
と言ってもこれはこれはある意味自己アピールの様な場である。
ここでアピールした内容はギルドに保管され、PTメンバーやクランメンバーなんかを探す人の情報源になったりします。
面接室に通されてから椅子に座ると、対面には男女の二人の面接官が。
「トリスさんですね、実技試験の合格おめでとうございます。
これより面接を行います。貴方はなぜ冒険者に?」
「一つは身分証のためです。私がこの国に来たのは錬金術士になるためで、冒険者と相性が良いんです」
「なるほど、では貴方の特技は?」
「薬の作成ですね、簡単なポーションなんかも作れます。後は護身術として棒術と投擲術、ちょっとだけ魔法が使えますね」
「では最後に、貴方は冒険者としては何がしたいですか?」
冒険者としてか……、やっぱりあれだよね。
「見てみたいんです」
「見てみたい、ですか?」
「はい、まだ見たことのない色んな物を。それは景色かもしかしたら人かもしれないし、もしかしたら冒険かもしれない。そしていつか一緒に旅をしたい人たちがいるんです」
「「…………」」
あれ?なにか変なこと言ったかな?
「あ、あの~」
「しっ、失礼、最近の冒険者を目指すものとしては珍しい部類でしたもので」
「ええ、ではこの後ギルドカードを発行するので別室の方へ移動をおねがいしますね。そちらには係員が案内してくれるのでそちらに付いて行っていただければ」
「はい、ありがとうございました!」
お辞儀をした後、係員に連れられて部屋を後にした。
こうして僕のギルド試験は終了となったのだ。
その後、連れて行かれた部屋には何やら大きな水晶がついた機械のような、おそらく魔道具と思われる物が置いてあった。
「これよりギルドカードを新規に発行しますので、この水晶に触れていただきます。
こちらのマジックアイテムで貴方の技能などを読み取り、ギルドカードに書き込まれます」
そして水晶に触れると、ピカッと光るわけではなく、じんわり光り始め、そこから魔道具が稼働し始め、ちょっとした駆動音のような音が部屋に木霊する。
そして光が収まると魔道具の下部分からガシャッと銅板が出てくる。
「はい、これにてギルドカードの発行を完了しました、最後にギルドに情報の写しをしたいのですが構いませんか?」
え? 写し? た、多分大丈夫だよね……。平常心平常心。
「大丈夫です、けど、僕が知ってるギルドカードとは随分と違う気が?」
前にヴェルグにぃに見せてもらったギルドカードとは違って銅板にガラスみたいなのがはめ込んであって、更には小さな石のようなものもはめられていた。
「実はこのギルドカード、この国で試験的に導入されている最新式のギルドカードのプロトタイプなんです。
魔術師ギルドと学院の共同開発なので、こちらに来たばかりの人は驚かれる方も多いですね……では、少々お待ち下さい。そちらに使い方の手引書もございますのでお読みいただければ幸いです」
「わかりました」
それから手引書を読みながら少ししてから、書き写し終わり、ギルドカードが返還された。
そこにはこう記されていた。
【冒険者名:トリス】
【性別:女 年齢10歳】
【種族:人間】
【ステータス】
HP70/70
MP150/150
【魔法スキル】
魔力操作Lv20
魔力感知Lv25
生活魔法LvMAX
魔法陣術
火魔法Lv12
土魔法Lv13
風魔法Lv10
水魔法Lv16
身体強化魔法Lv10
【戦闘スキル】
体術Lv15
気術Lv3
短剣術Lv10
棒術Lv20
弓術Lv15
投擲術Lv15
隠密Lv20
気配察知Lv20
【特殊スキル】
悪臭耐性Lv10
【生産スキル】
調合 Lv25
木材細工 Lv20
料理Lv25
算術Lv18
調香Lv14
良かった、隠蔽スキルはちゃんと機能してるみたい。
こうして、無事に冒険者になることができたのだった。