閑話 クーゲル家とベアール
ここから3連続で閑話です、でき上がり次第順次投稿します。
そして1000PV突破ありがとうございます!
※9月29日 一部訂正しました。
クーゲル家とベアール
俺はベアール=クーゲル、クーゲル家現当主にして元王国騎士団副団長。
まあ昔は副団長なんてのをやっていたが今は辺境の開拓地領主なんてのをやっている。
この開拓地自体もざっとできて37年ってところか。
元は爺様が冒険者兼傭兵業みたいな事をしていたのがある戦の時に武功を建てたのが切っ掛けだったらしい。
そこから国王に騎士に叙任され最初は名誉騎士だったのだが、そこからさらに武功と、どこから身につけたのか作法に礼節と身につけ、あっと言う間に王国騎士団の中で最強の名を手に入れてしまっていた。
そこから王様が最強の騎士が名誉騎士というのは問題があるとして一気に伯爵まであげようとしたので宮廷が待ったをかけた。
ちなみにこの国での階級は上から順に国王→王族→公爵≡侯爵→辺境伯→伯爵→子爵→男爵→名誉男爵→騎士爵→名誉騎士という順で決まっている。 公爵と侯爵は基本同等とされてはいるかその辺はやはり格というものもあって一概に全て同等とはいえない。
その後の名誉爵に関してでは領地を持たない一代貴族として存在するので若干格が下に見られる傾向がある。
分かりやすい例で言えば男爵と名誉男爵では男爵の方がやや上とされてはいる。
だが公儀の上では同等であると明記されているため微妙な力関係である。
話はそれたが爺様の代では話し合いの末、子爵になりかけたのだが爺様は恐れ多いと男爵に落ち着いたとか。
だが爺様の本音を聞いたところでは「政なんぞに関わるより体動かすか部下たちを鍛えたほうがよっぽど楽しい」と豪語しさらには「正直儂の性格に合わん、考えてみろ、あんな魑魅魍魎が跋扈する世界で元平民の儂がやっていけると思うか?」っと、本音を暴露した。
ついでに云うなら男爵に落ち着く代わりに政にはかかわらず国の武力である騎士として国に貢献すると約束したのだ。
言い換えれば「宮廷政治とか貴族付き合いの様な小難しいことはやりたくないから騎士だけやらせてくれ」っと脳筋宣言とも取れるのだ。
そしてついでとして頂いた領地が当時のこの開拓地である。
まあ騎士団長しながら開拓領主の二足のわらじはさすがに無理が有るだろうと、団長職を降りるまで領地を開拓することはなかったがその間に商人等のコネを作りつつ人材探しや人材育成。
時折ドキドキ!?野外合宿と称した騎士隊の訓練を領地の視察ついでに行っていたようである。
かつての先輩騎士聞いたのだが当時の騎士団長の異名は鬼団長だったとか。
さらに訓練でいった領地では念のための水と一日分の保存食を持たされた状態での行軍&魔物討伐、食料は基本現地調達といったものを1週間かけて行うものだったとか。
さらに一部の貴族騎士からは「こんなの騎士のやることじゃない!」とか腑抜けた事を言う者もいたそうだがその圧倒的な鬼迫ともいうべき迫力に引き下がったと言う。
ついでにその騎士の実家、階級問わずで黙らしたとか。
ただ当時の爺様のもとで修行を積んだ騎士たちはみな数々の武功を上げ、軍の中ではかなりの上役に付いている。
現在でもほとんどの軍上層部の方々は爺様に頭が上がらないとか…。
そんな爺様だが唯一頭が上がらないのが冒険者件傭兵時代から連れ添い、相棒だった婆様だ。
自身の過去については余り触れたがらないが、爺様の作法や礼節の出処は婆様だと睨んでる。
大まかな領地管理は爺様だったがその実、婆様がしっかり管理してたからここまでこれたとも聞いている。
あの無茶苦茶な爺様の手綱を唯一握れる人物として様々な人物から一目置かれた存在だ。
かつて爺さんにマンツーマンで修行付けられた時は危うく死ぬかと思った。
婆様が途中で止めてなかったら今頃俺はこの世にいなかったかもしれない……まあその修業のおかげで今の強さが有るのも事実だが。
後で親父に聞いた所、親父の時は見たこともないご先祖の顔を何度も拝みかけたと言っていた。
ちなみに現在婆様は王都の屋敷に、爺様は今でも時折騎士たちを扱いて震え上がらせてるとか。
そして爺様→親父→俺と三代続いた領地で今日も視察と称した警邏に出ているのだ。
今回の視察は最近ゴブリンが目撃されたと報告の上がった森を通った街道だ。
この道は主要な街道とつながった一本で、我が領においての外との大事な道の一本、そこの安全を守るのは領の発展において大事な意味を持つ。
あれから街道を通って外側ちかくまで行って何もなかったので、森の外縁部を通って反対側の道も見て回ることになった。
それからお昼を回った辺りで反対側の道も中程まで来た頃だろうか、嫌な匂いが感じられた。
「ベアール様」
「ああ、この匂いは……」
従士のリックも気づいたようだ、こいつは親父の代からうちに仕えてくれている。
優秀なやつで元々は戦場で爺様がまだ若かったリックの父親を拾ったのが始まりだったとか。
そのせいか父親ともども我が家に仕え、領を支えてくれている。
ついでに小さい頃から俺と一緒に育った仲だ。
「近くにゴブリンがいるな、奴ら独特の臭いにおいが漂ってくる……少し急ごう」
そう言って歩を早めると奥の方から子供の鳴き声が聞こえた気がした。
「リック!?」
すぐにリックにも確認を取ると「ええ、急ぎましょう!」っと、直ぐ様街道を走りだしたのだった。
それから走るとすぐにゴブリン達と「ふぇええええええええん!」っと大きな鳴き声を上げている赤子を視界に入れた。
ゴブリンの方はいつ襲いかかってもおかしくない状態だった。
直ぐ様リックたちに合図を送ると弓を構え、ゴブリン達に矢を放ち始めたのだった。
それからはあっという間だった、最後に残ったボスらしき個体も片付け各人員に指示を出し、後は死体の処理をするのみである。
すると突然赤子が泣きだしたのだった。
(しかしこんな所に赤子を捨てるとは。)
そしてリックと私で近づくと泣くのをやめ、こちらを見ているようだった。
一言言いたい、かわいい! っと。
こんな格好をしている俺が言うのも何だが子供とか子犬とか子猫とか大好きなのだ。
ただ肝心の子供や動物たちだが、俺が近寄ると怯えるか逃げ出してしまうか泣きだしてしまうのだ。
実の息子や親戚の子にまで泣かれた時はさすがにショックだったよ……。
だがこの子は違った、しばらくこちらをみつめている。
「こんな所に赤ん坊を捨てるとは……可哀想に」
すぐにリックに話を振られ平静を装いつつこの子を拾い上げる。
だがその時に赤ん坊が「あう~、あうあう~」っと笑ったのだ。
思わず私は大声を上げてしまいそうになるが赤ん坊の手前、そこは踏みとどまった。
「それにしても人間の赤子にしかみえんが先ほど変身するところをチラッと見たからな…まさかワーウルフ種とは」
そう、この子は先ほどまで獣人の姿をしていたのだ、おそらく狼種なのだろうが赤子では子犬と変わらん。
おもわず頭をワシャワシャとなでてしまった。
「この辺では見ない毛並みでしたね、少なくともこんな所に捨てるのはなにか訳ありでございましょうか?」
そう、わざわざこんな所に普通捨てたりしないのだ。
ここは領内への街道の途中、普通ならわざわざこんな辺境領地に捨てに来るという事自体おかしいのだ。
捨てるにしても普通なら教会の前なりスラムに捨てるなどが普通なのだ。 子をすてるというのがそもそもおかしいのだがいかんせん貧富の差というのはなかなか難しい問題なのだ。
「だが、今どきワーウルフ種というだけで毛嫌いする者など、それこそ超の付く純血主義ぐらいのものだが……」
若気の至り、酒の勢い等々、王族や貴族でも庶子というのが生まれることがあるがそう言う存在に過敏に、特に多種族との混血に反応する輩もいるのだ。
後継承権争いとかで捨てられたりとかな、この子もその部類の可能性もある。
まあそんなのはこの国では割りと少数派だったりするのだが……。
「ベアール様、ゴブリンの死体の処理準備整いました」
考え事をしていると死体処理の準備が完了したことを告げられすぐに考えを横におき、死体の処理を開始するのだった。
あれからゴブリンを焼いた後、残りの処理をリックに任せて俺は拾った赤子を連れて家路についていた。
最初のうちはこちらを見ていた赤子も、かごに揺られる内に眠ってしまったようだ。
すると赤ん坊は獣人の姿に戻って寝息を立て始めたのだ。
正直すぐに抱きかかえたい気もしたが、そこはなんとか抑えて赤子を起こさない程度に急いで帰った。
……競歩並のスピードで移動していたのは余談である。
途中で部下たちを解散させてから屋敷にたどり着く。
中には入れば直ぐ様「「お帰りなさいませベアール様」」っと、家人達が出迎えてくれた。
さて、私の考えを聞いて二人はどう思うか……。
……閑話なのにかなり文字数多いかも……あれ?閑話になってない?