朝ですよ~!朝食ですよ~!そして新居ですよ~!
※飯テロ注意……になるのかな?
正直自信ない。
朝ですよ~!朝食ですよ~!そして新居ですよ~!
爽やかな朝、鳥の囀り、そしてちょっと視界を遮る朝霧。
まだ日が出てきたばかりの早朝、珍しく人間状態で目を覚ましたのだ。
普段は寒かったりしたから獣人形態で眠っていたのだけど今日は別だった……なぜならば。
「ぐー……ぐー……zzz」「すー……ぴー……すー……ぴー……」
ガルドさんと羽毛100%なヴェルグさんに挟まれて眠ったからです。
はい、獣化状態で寝てたらめっさ熱かったです!
挙句の果てにはヴェルグさんが抱きしめてきたのでたまらず夜中に目を覚まして人化した次第です。はい。
時間をみれば今は5時ぐらいでしょうか……。とりあえず魔法で指先に水を出して水分補給。
そこから羽毛100%から這い出てからまた魔法で水を出して顔を洗い、朝食の準備です。
まずは魔法で水をだして桶に水を溜めながら献立を考えます。
それにしてもまともに料理するの、実は初めてなんですよね。
少なくともこの世界に生まれてから一人で調理するのは初です!
メイドさんが倒れた直後は、作りおきの物を食べてたんです。
そして、それがなくなった直後にあれでしたからね。
まあ、常識をもって調理すれば少なくとも食べれるものができるはず……。多分……きっと。
まずは今ある材料の確認をすることから始めよう。
おそらくセバスさんだろう、すでに最低限の食材は運ばれてました。
普通のギャロにレタスの様な食材で名前はタスト。
確率を操作しできそうな名前ですね。
それに黒パンと、今日は豪華に少量ながらベーコンに牛脂までありました。
それに加えて、この前買った食材を合わせれば、少しはまともなものが作れるはず! 多分、きっと……。
というわけで竈に火を入れて準備を初めます。
ついでに、まず形からということで、デュアルボディで変身してから調理に取り掛かります。
まず乾燥ワカメをまな板の上でカット、ハサミがないのでナイフでやってるけどちょっと手間ですね。
そして今度は鍋に水を入れて火にかけます。
そしてそこにお湯にならない内にワカメを投入。
そして待ってる間に玉ねぎ。
こっちでは【オニタマ】と呼ばれる、まんま玉ねぎを一口サイズに切っていきます。
咥えてギャロも、厚さ5ミリぐらいのイチョウ切りにしていきます。
そしてベーコンも軽く切って、ギャロやオニタマと一緒に鍋に投入!
それからしばらく煮込んでいきます。
途中竹製のスプーンで味をみながら塩を適量入れていきます。
そして味が整えばスープの完成。その後は一旦、鍋を竈から外す。
そして【ポト】と呼ばれる、じゃがいもらしき物の皮を剥いてから薄切りの輪切りにしていく。
このポト、地球のじゃがいもと同じで芽には強い毒があるのだ。
一時期はそのせいで、悪魔の実だとか、魔王の野菜だとかで、忌避されていたのだが、やっぱり痩せた土地でも育ち、なおかつ大量に取れるためどうにか食べられないかと研究していた人がいたのだ。
そして研究の結果、近年になって芽に毒があり、陽の光に長時間当てずに暗所で保管すれば問題無いということがわかったのだ。
ちょっと芽が出たぐらいならえぐり取れば害は無くなることもわかり、徐々に広まっている食材なのである。
さて、後はフライパン代わりの小鍋に火を入れてから、牛脂を入れます。
全体に油が敷けたら今度はそこに薄切りにしたポトを焼いていきます。
そしてある程度ポトに火が通ったら形を整えて円形に少しずつ重ねて、そこにベーコンを乗っける。
そしてそれを裏返してベーコンもポトと一緒に焼いていけば……。
ポトのガレットもどきの出来上がり、かな?
もうちょっと食材と調味料があればな~。
バターとか、卵とか、牛乳とか……、無い物願っても仕方ないか。
一応二人が目を覚ましたら気がつけるように、マーキングとレーダー、分割思考を使ってるけど、……今のとこ起きる気配はなし。
朝食の準備出来たら起こしに行きますか。
それにしても、こっちの体だと細かいことがあっちよりスムーズにできるんだよね……。
さて、皿に料理盛ってからチェンジして起こしに行きますか……。
二人は寝室でまだ寝ていた……。
「ガルドさん、ヴェルグさん、朝ですよ~」
声をかけてみたが起きる様子は無し。
仕方ないと思い揺さぶって起こそうとする。
「朝ごはんで来ましたよ~」
体を揺さぶって起こそうとすると「う~ん……、う~ん……」
ヴェルグさんは、苦しそうに唸っていた。二日酔いかな?
「ガルドさんも起きてください」
ガルドさんも揺さぶると、いきなり腕を伸ばして僕を捕獲してきた。
「ガルドさんなんて他人行儀だぞ……。パパってよんでくれ~」
そう言いながら、掴んで離してくれません。
「が、ガルドさん、は、はなしてくだしゃい!」
「パパって呼んでくれるまで離さんぞ~」
そのままガルドさんの力はどんどん強くなり、身動きがとれなくなる。
「わ、わかりましたから離してください、ガルドパパ!」
「そうそう、それでいいんだ」
そのまま頭をワシャワシャと撫でられ、しばらく動けなかった。
(ぼく、うまくやっていけるのかな? いや、確かに嬉しくはあるんだけど……)
その後、ヴェルグさんが起きて、二日酔いで苦しそうにしているのが印象的でした。お酒って怖いね。
お水を飲んで幾らか楽になったようだけど……。
その後、人数分のスープを事前に準備していたお皿に注いでいく。
ちゃんと人数分あるね。
一応確認して……。
1、2、3、4……うん、ちゃんとあるね。
……ん?
いち、にぃ、さん、よん……よん!?
えっと、席についてるのはガルドパパ、ヴェルグさん、ベアパパ……。
ベア様!? なんで!? しかも隣りに座ってるし!?
「あのベア様、いつの間にそこに座ってらしたんですか? てかなんでここにいるんですか!?」
「そんなつれないこと言うなよ。パパって呼んでくれ。
なんでここにいるかと聞かれたら、朝の慣らしで走っていたら美味しそうな匂いがしてきたからに、決まってるじゃないか」
ハッハッハって笑って言われても……。まあ、多めに作ったけどさ……。
「まあ、いいですけど。ではいただきましょうか」
というわけで朝食です、がんばって作ってみたけどはてさて反応は……。
「あぁ、これは二日酔いにちょうどいい……」「ベーコンと野菜のスープか、うまい……。けどこの緑の物体は何だ?」
「それはワカメだな。シェルダー等の海洋国家では、お湯で洗ってサラダにいれたりするんだが……、これはうまいな」
反応は上々、ワカメの出汁もいい感じみたいだ。
「こっちもいいな、黒パンに挟んで食べても良さそうだな」
「これもこっちでは見ない食材だな」
「これはポトだな。最近になって食べ方が確立されたやつだが、薄切りにするのは見たことなかったな」
あ~、こうゆう調理は無いのかな? この世界の料理って基本煮るか焼くかの2択っぽいんだよね。ベアパパの屋敷で生活していた限りだと。
「よかった、お口にあって」
「料理のうまい息子とは、うれしいもんだな」
ガルドさんがそう言って、ベア様もうんうんと頷いてる所悪いんだけど、これ厳密に言えば、娘の料理に成るんだよね……。
そんな事を考えながら朝食は過ぎていくのだった。
うん、まさか足りないなんてことになるとは予想外だったけど。
「さて、朝食も済んだことだしちょっと家に帰るとするかね」
ガルドパパは僕が切ったアプの実をつまみながらそう言った。
「帰るって、飛んで帰るんですか?」
そう思って聞いたんだけどガルドさんは首を振って「いやいや、ここから歩いてすぐに帰れるぞ」と、言っていた。
それに対してベアパパも「この辺に人の住んでる場所なんてあったか?」っと疑問符を浮かべていた。
「な~に、すぐに分かるって」
家を出て、馬車から荷物を背負うとそのまま裏手、森の方に歩き出す。
「ほれ、少し急ぐからちょっとおとなしくしてろよ」
ヴェルグさんが僕を肩車して歩き出す。
そのまま先頭をガルドパパ、僕とヴェルグさん、そして殿をベアパパで森のなかを進んでいく。
そして小屋が見えなくなるぐらいまで進んだら、ガルドさんが荷物からなにか取り出した。
あれは、すず? いやちっちゃなハンドベルかな?
「ねえヴェルグさん、あれは何?」
「そうだな~……、愛と敬意と親しみを込めてにいちゃんって呼んだら教えてやる」
なんだろう、ガルドパパといいベアパパといい、積極的というかなんというか……、そんなに言われたいのかな?
「わかったよ……。あのヴェルグにぃさま」
「もう少し砕けて構わないんだぞ? まあいきなりは無理だよな。あれは鍵さ」
「鍵? でもあれって音を出す道具だよね?」
「そっ、音を出して扉を開けてもらうためのな」
どうゆうことだろう?
そして、ガルドパパがベルを鳴らすと、辺りが急に霧に包まれていく。
「な、何だこれは!?」
「はぐれるんじゃないぞ、はぐれたらどうなっても知らんからな」
何かすごく危険な香りがしてきた。
思わず後ろにいたベアパパに「ベアパパ、僕の手握って」と言ってしまっていた。
それからガルドパパの案内で進むと次第に霧が晴れていき、晴れた先には家があった。
けど、明らかに違っていたのだ。
僕達がいた森と、今いる場所の森の植生が全く違うものに変わっていたのだった。
「ようこそ、我が家へ」
どうやらこの不思議な場所が、僕の新たな住処になるようです……。
次回辺りで一旦章区切りになるかもです。