仮名と疑問、そして和解と愛情と、今まで言えなかった一言
今回は難産でした……そして結構長いです!
いままでで一番の長編です、分割しようかとも考えましたが今回はわけずにそのままいきます!
そして累計PV数2万突破&ユニークアクセス3000人、並びに評価ポイント200P突破ありがとうございます!
これからも頑張っていきますので
異世界錬金術師 転生したらモフモフしていた をよろしくおねがいします!
仮名、疑問、そして和解と愛情と今まで言えなかった一言
はい皆さんこんばんは~。
今日はここ、クーゲル領お祭り会場からお送りしております。
なんでこうなったって?
それを説明しますのでよろしくお願いします。
遡ること3時間ほど前、僕達が村の入口についた時でした。
どういうわけか、入り口にはベア様率いるクーゲル領の衛士の皆さんが待ち構えておりました。
多分、ドラゴン状態のガルドさんが村の近くに出没したからなのかな?
「さて、お出迎えのようだな……」
「みたいだな……」
それからはガルドさん達とベア様の、話し合いと言うなの説明会が始まりました。
事情を聞いて、すぐに親たちが集められ、子供たちの再会となりました。
「かぁちゃぁぁん!」「ままぁ~!」「とぉちゃぁぁぁん!」「おやじぃぃぃぃ!」「パパぁぁぁ!」
「アン!よかった……よかった……」「ダン! ああ、ああ……」「メイ、メイ……、ほんとにメイなのね……」
「クロ、おかえり……」 「……すまない、ゴー。私が不甲斐ないばっかりに……」
お互いの姿を見つけ、泣きながら抱き合う親子の姿は周りの人にまでその涙を伝播させていった。
でも、その時の僕はなぜか胸の中を締め付ける感覚と自分の中での違和感……。
子が親を呼び、それに親が子の名を呼ぶ。ただそれだけのはずなのに。
それは次第に大きくなっていき、大きくなった違和感は一つの答えをだしてしまう。
(ああ、そういうことなのか……、ずっとあった違和感は……)
この世界では概ね7歳の時に正式に名前を付ける風習が定着している、だけどそれだと呼び名に困る。
特に集団となるほどに。
それゆえに仮名と呼ばれるものが付けられる。
だがその仮名は所謂愛称に近いものが有る。
例えばアンだったら、正式に名付ける時はそれを元のした名前になる事が多い。
それは例えば、アンナだったりアンナマリーだったり、あるいはジョアンナだったりするかもしれない。
それ故に仮名にも親は愛情を込めてつけるものなのだ……。
そう、僕には仮名がない……。
今まで疑問に思わなかったのが他の同年代ぐらいの子と関わったことがないのだ。
基本、屋敷の中での生活で、偶にベア様やセバスさんと外にでても子供には出会わなかったりで、機会がなかった。
多分そのせいなんだろうな。習っても特に疑問に思わなかったのは……。
そしてそう疑問に思ってしまったが最後、頭のなかでいろんなことを考えてしまう、養子にとった様々な理由とか。
例えばそれは、ベア様はもしかしたら、息子さんのに帰ってきて欲しかったのかもしれない。
例えば僕を養子として引き取った事を息子さんが知ったら、息子さんの方から帰ってくるかもしれない。
噂の方もそれとなく流せばもしかしたらと。
多分、子供を縛り付けたくなかったんだろうな、ベア様優しいから。
だから息子さんが家を嫌っていたなら仕方ないと。自ら探すことはしないで。
まあ、全部憶測でしかないけど。
愛情だってもらっていたと思う。
でもそれが家族としての愛情なのかはわからない、どこかしら一線を引いていたような気がする。
そして僕ももしかしたらそれとなく気づいてて言わなかったのかもしれない……。
拾ってもらってから約5年間、ずっと言わ無かった言葉があるんだ。
それから子供たちが戻ったことによる宴が開かれることになった。
屋敷に備蓄してあった食料を半分ぐらい使っての、少し大きなものに。
それから他の人に指示を出した後に、ベア様、それにセバスさんとご子息のアルトルードさんがこちらにやってきた。
「すまなかった!」
そして、最初にでたのがベア様の謝罪だった。
「こっちの落ち度とバカ息子の所為でとんでもない目に合わせてしまった」
そして、アルトルードさんも一緒に頭を下げていた。
「申し訳ない!私の妻の行いで君に謝っても謝りきれない事をしてしまった」
「えっと……」
それから場所を、僕が一週間近く住んでいた離れに移してから、向こうの事情説明になった。
まず僕が離れた後の顛末。
まずアルトルードさんは屋敷を飛び出してから数年間ずっと、冒険者として生計を立てていたらしい。
そしてある依頼で一緒になった人達と意気投合、それから固定パーティーでずっとやってきたとか。
ちなみにそのパーティー内でお互い惹かれあったのが、今の奥さんとか……。
けど3年前になって、パーティーのリーダー役だった人が大怪我をして冒険者を引退することになってパーティーは解散してしまった。
その後もしばらくは冒険者をしながら二人で生活していたのだが、ある時に子供ができてしまい、奥さんのほうが冒険者を引退することに。
それからしばらくは家を借りて簡単な依頼を受けながら慎ましく生活していたようだ。
そして子供が生まれて2年、奥さんと二人これからどうしようかと考えていた所に算盤とクーゲル領の噂を聞いたらしい。
そしてしばらく話しあった後生まれて2歳になった子供を連れてクーゲル領に向かった。
途中、馬車の乗り継ぎで王都に寄ったとのことで、そこで流行病をもらってしまったのではとのこと。
しかもタイミングが悪く広がり初めたばかりで病に全然気づかなかったとか。
補足するとこの病、妙な特徴があって患者が2種類に分けられる。
一つは潜伏型、ウィルス感染してから大体2周間から1ヶ月ぐらいで病気が発症、そこから咳や飛沫から感染して患者を増やしていくのだが、ここで2つ目の特徴。
潜伏型から移された患者は早期発症することだ。
この所為でアルトルードさんが帰ってきてからすぐに村で病が広がったといえる。
ベア様にいたっては感染源であるアルトルードさんと至近で口喧嘩した所為で、いくら丈夫な体をしていても発症してしまったようなのだ。
掛かるのに、時間はかかったみたいだけど。
まあ唯一の救いは、屋敷からは全然出なかったおかげで、感染経路が限られたため、かかった人数が少なくてすんだことでしょうか。
そして話を聞くに、僕を襲ったのはアルトルードさんの奥さんらしく、その理由が幼い我が子を助ける為だったようです。
ベア様、アルトルードさんと倒れ、それに続いてお子さんまでも病に冒されてしまったのだ。
セバスさんは王都へ向かっていて不在。
リーシャさんもベア様の看病で手一杯。
クーゲル領内において、奥さんにとっての頼みの綱の旦那さんであるアルトルードさんのみ。けれどそのアルトルードさんも病で寝込んでいる状態。
そして、体力も病気に対する抵抗力も低い幼子の体調が、日に日に悪くなり、このままではそう遠くない内に命を落としてしまうかもしれない。
そんな時にどこから聞いたのか、奴隷商人と特効薬の噂だったそうです。
そこからの行動は早かったみたいで、この奥さん、元冒険者の腕を活かして奴隷商人を見つけ、交渉したようなのです。
だけど、最初は自分の身を差し出そうとしたようなのですが拒否されたようで、そして求められたのが子供だったみたいです。
その後どうするべきか考えてる時に一人でいた僕をみつけて決断したようなのです。
自分の子の命と、他の子の生命を天秤にかけて……。
その話を聞いた時、僕はこう思ってしまいました……。
その子がすごく、……羨ましいと。
正直言って恨まないって言うのは難しいですけど、僕はこうしてなんとか生きています。
それに、その愛おしい我が子を守る母親を見て、真正面から批難する気にはなれませんでした。
だって、母親っていうのは本来そういう者のはずだから……。
そう考えるとあの時の狂気はある意味、葛藤ゆえの狂愛とも見れるのかもしれません……。
少なくとも、まともな精神状態では行えなかったのかもしれません。
そうして特効薬を手に入り、危うい所でしたけど子供の容態も回復し、今は元気にしているようです。
そして肝心の親子喧嘩ですけど、お互い病に倒れる直前に和解できたようなのです。
なんでも最後に、武器なし防具なしの殴り合いの末、お互いを理解し合ったとか。
どうせなら夕日をバックにしてほしいものですな。
素晴らしきは肉体言語と言うべきか……。
ベア様も奥様が死んでから息子さんとの距離に悩んでいたようで、そのせいでアルトルード……。
ええかげん長いので、略してアルトさんとの間に溝ができたとか。
そしてそのせいでうまく触れ合えずに息子さんが家を飛び出してしまったようです。
けれどその溝も今回の件でだいぶ修復されたみたいです。
そしてその後数日してからセバスさんが帰還して今回の件が発覚したようです。
ちなみにベア様はリーシャさんの賢明な看護により特効薬無しでセバスさんが薬をもって帰る前日に回復したとか。
ベア様の体力恐るべし、まあ代わりにリーシャさんがその後に発病したみたいですが……。
そして現在、奥さんとお子さんは屋敷の中で謹慎中だとか……まあ、事情も事情だけど事が事だしね。
その後はセバスさんが帰ってきてから今度は急いで情報収集、違法商人に売られた子達の捜索をしていた所に今回の冒険者ギルド経由の護送の話である。
本来はもっと時間がかかるはずだったのだけど……ガルドさん達のおかげで予定よりかなり早く着いたのである。
連絡ってどうしてるんでしょうね?手紙とかじゃこういう緊急時には時間がかかりすぎるし……。通信用のアイテムでも在るんですかね?
「許してくれとは言えん。だが、すまなかった……」
ベア様とご子息の精一杯の謝罪、土下座であった。
異世界にも土下座の文化ってあるのか……。
「ベアール様、頭を上げてください。そもそも僕はベア様に助けてもらってなければ死んでいたんですから」
「……ありがとう」
だけど、これでもう……、立ち上がるベア様に僕は告げた。
「けれどこれで僕がここにいる理由が無くなりましたね……。
僕が拾われたのはアルトルード様が出て行って、空席だった跡継ぎを用意する為の物。
だけどアルトルード様が戻られた今、スペアの僕がいる理由は無し……。
養子の話も無かったことになりますね」
「それはちがう!俺はお前を養子にすると!」
「――それに、屋敷に僕の居場所は無さそうですから……」
息子さんが帰ってきて、奥さんがいて、さらには子供までいて、それに……。
とても僕の居場所は無さそうです。
もし今無理に入ってもお互いに居心地悪いだけになりそう。
けど、そんな時に今まで黙っていたガルドさんが「まあ、そんなに急いで決めんでもいいだろう」割って入ってきたのだ。
「それにあんな事が起こった後ならお互いに冷静さを欠いているようだしな。
お互い一度距離を置くべきだと思うぞ」
「いえ、僕は冷静に「どう見ても冷静ではないの」
そう……なのかな?
それにセバスさんも頷いている、だったら冷静じゃないのかも……。
「この子は俺が預かる」
「そんな勝手に」勝手ではないぞ、余り言いたくなかったがこれはお前さんの爺さんからの頼みでな。
気に入らなかったらそのまま黙っているつもりだったが俺はこの子が気に入ってな」
そういってガルドさんはぎゅっと抱きしめてくれた。……けどちょっとまって、いまものすごい爆弾発言が飛び出した気がするんですが!?
「ベアードとはあいつが冒険者時代からの付き合いでな、前に王都に寄った時にあいつに頼まれてな」
「ちょっとまて親父! 俺はその話聞いてないぞ!」
「そりゃそうだろう、お前さんはその時、王都見物でいなかったからな。
ついでにこの話はそこの糸目執事も聞いているぞ」
ベア様が振り向いてセバスさんを見つめた。
セバスさんは目をそらして「はい、薬を買いに行った時にベアード様に捕まりまして、その時にお話を」
「そしてこの子の反応見てから俺の判断に任せるってな、けど現状すぐに決めるのはお互いに痼を残しそうだからな。……少し頭を冷やせ」
そう言って僕もベア様も黙ってしまった……。
けどその後にガルドさんがベア様に耳打ちするとベア様の重苦しかった空気が一転、すこし晴れやかな感じになり、その後さらにガルドさんが呟くとこんどは体全体から汗をだらだらと流れはじめた。
一体何を言ったんだろう?
獣化している状態でこの距離なら普通に聞こえるはずなのに全く聞こえなかった。魔法かな?
それから少しして一旦解散となった。
ガルドさんもヴェルグさんも宴の準備にいってしまって完全に一人になってしまった。
(何やってるんだろうな……、僕は……)
それからしばらくぼーっとした後、ヴェルグさんが僕を呼びに来た。
「ほらほら、祭りが始まるぜ!」
そして、この間みたいに僕の手を掴んで引っ張っていったのだ。
そして冒頭に戻るのであった。
そこはもう宴ってよりは完全に祭りである、中央には巨大なキャンプファイヤーを置いてその周りで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。
旅の吟遊詩人の様な人も混じりながら大人はお酒を飲み、子供たちには……、あれは前に僕が食べた小さな飴が振る舞われていた。
他にも果物とか、あれどっから持ってきたんだろう?
けどそんな疑問を抱いたらヴェルグさんが教えてくれた。
「ああ、あれは俺達からの差し入れ、見舞い品だな」
「いつの間に買ってたんですか?」
「施療院で一度別れてから直ぐな。それにしてもお前も大変だな~」
「そうですね……、これからよろしくお願いします、と言えばいいんでしょうか?」
「それはお前さんが決めることだな。まぁしばらくこの祭りを楽しんで来い!」
ヴェルグさんはそう言って背中をポンっと押すと酒呑みたちに混ざりに行きました。
「楽しむ……か」
そう呟いてからしばらく周りをぐる~っと回ることにしました。
おっきな篝火は人を集め、そこに用意された食事に人はお腹を満たし笑い合ったり家族や友人と語らったり。
さっきの空気が嘘のように明るいものへと変わっていた。
一度は売られてしまった子供たちも今は家族と一緒に笑い、泣き、触れ合っている。
「家族……か」
そう一人ごちりながら周りを歩いていると、祭りの外側から見守るように座っている人がいた。
ベア様だった……。
どうしようか悩んで、一度深呼吸してから頭をスッキリさせてから決めた。
「ベア様、隣いいですか?」
話をしようと。
「ああ」
許可をもらってから隣に座る。今のベア様はかなりラフな格好をしていた。
領主としてではなく、多分一人の人として此処に座っているのかもしれない。
「聞きたいことが在るんですけどいいですか?」
「……ああ」
さっきみたいにウジウジ考えるのはなんか嫌だった。
それに、さっき自分で考えたこともベア様に聞いたわけじゃない。
単なる僕の憶測、被害妄想といってもいいものだ。
だからこの際、腹を割って話し合おうと思う。
「ベア様はどうして、アルトルード様をすぐに探しに行かなかったんですか?」
まず今回の根本にあるものだ
「無理に縛り付けたくはなかったんだ……。
ここが嫌で出て行ったのなら無理に連れ戻すのはやっぱりな……」
ああ、やっぱりベア様は優しい人なんだな。
「じゃあ、どうして僕を養子に?」
ベア様は少し間を開けて重い口を開くようにして口を開いた。
「最初に見つけた時は可哀想だと思ったのが1割、出て行ってしまった息子の事が2割……」
「え?それじゃ残りの7割は?」
ちょっとかなりビックリだった、息子さんのことの比率がもっと高いかと思っていたのに。
「その、嬉しさが7割だな。その……、初めてだったんだ。
俺が抱っこして笑ってくれた子供は」
「…………」
思いがけない言葉に、僕は完全にぽかーんっとして、何も言えなかった。
「領内の子供たちもそうなんだが、俺が抱っこすると泣き出す子ばっかりでな。 あんな風に笑ってくれたのは初めてですごく嬉しかったんだ。
バカ息子にも小さい頃は抱っこしようものなら泣き出されてな……。
おっきくなっても、どう接していいかわからなくなって……、そのせいであいつにも寂しい思いをさせてしまった」
ああ、僕は馬鹿だ、何やってるんだろう本当に……。
「確かに、養子をとった噂を流せばもしかしたら息子も帰ってくるかもしれないという考えも無かったわけじゃない。
だがそれはあまりに身勝手な話だ!
止めようかとも思ったが算盤のこともあって、そこそこ噂が広がってな……。
結果的に息子は帰ってきたが君を危険な目にあわせてしまった」
ベア様の腕は自然と僕を抱きしめていた。
「君が売られてしまったと聞いた時は売った息子の妻を殺してしまいそうになった……。セバスとリーシャ、それにアルトが止めなければ剣で切り捨てていたかもしれない……」
ベア様の話を黙って聞き続ける。
「その後は少しの間心にぽっかり穴が開いたような気分だった……。
けどすぐに違法商人の足取りを追うことにしたんだ。
その為に怒りをぶつけそうになったアルトの妻にも頼んで、人相書きなんかも提供してもらいながらな。
そして丁度王都にいる父もこの違法商人達を追っていてね。
そこで合同で情報を集めながら、色々ルートや目星をつけて追っていた所に冒険者ギルドからの知らせがあったわけだ」
気がつけばベア様のお膝の上に座らされていて。
「君が無事だと知らされた時は正直神に感謝したよ。
同時に自分の無力さも思い知った……」
そのままぎゅっと抱きしめられながらベア様は泣きながら
「無事でよかった……」
僕の中にいろんな感情が流れてきて整理できなかった……。けどその流れは出口を求めて涙となって流れ落ちた。
気がつけば僕もそのままベア様と一緒になって泣いていた。
それから数分、目を赤くしながら涙を拭って向き合った。
最後にどうしても聞かないといけないことがあったからだ、僕が抱いた疑問と違和感の切っ掛け。
「ねぇ、どうして僕に仮名を付けてくれなかったの?」
もうベア様を疑ってはいないのだがそれならなんで付けてくれなかったのかがすごく疑問だ……。まさかセバスさんの暗躍とか?
「それはだな……、その……」
なんだろう、急にベア様が小動物のようにモジモジし始めた。
顔を赤らめ恥ずかしそうにしながら言った。
「実は、どれにしようか決められなくて。
候補は沢山浮かんだんだけど……、そしたらズルズルとここまで……。
アルトの時はアイリスが主導で決めていてな……」
ああ、そうだった、そうだったよ、ベア様って変なところで不器用で残念な部分があるんだった。
「この数時間悩んでいた僕は何だったんだか……」
顔を赤くして恥ずかしそうにうつむくベア様を見て、思わず突っ込みたくなった、あんたは乙女か!?
「まったく、しょうがない領主様……、お父さんだ」
気がつけばずっと言わなかった言葉を放っていた。
むしろ線引していたのは自分だったんじゃないか?
こんな人にずっと愛されていたのにね。
その後、顔を見上げてびっくりしつつも嬉しそうなベア様が印象的でした。
そしてそんなところでどこからともなく「どうやら話し合いは済んだようだな」
後ろからガルドさんが現れました。
最近レーダー先生が仕事してくれません。
チートをもらったはずなのに、周りの人のほうがチートで、僕は普通の一般人に思えてきます。
その後は、僕とベア様とガルドさん、三人で今後の事を話し合いました。
その結果、僕は一度ベア様の養子になった後で、そこからさらにガルドさんのところに養子に出されることになりました。
流石にもう屋敷に居場所がないとは言わないけど、居づらい部分が在るのは確かなのだ。
そしてなんでこんなまどろこしいことをしたかというと、何かあった時にベア様の所に帰れるようにとのことです。
身元保証人の一人にするんだとか。
まあ、そんな事は早々ないとは思うけどね。
それとガルドさんも冒険者を辞める気はないため、もうちょっと成長するまではあんまり連れ回せないそうなのだ。
忙しくない時は問題ないそうなんだけど、ダンジョンに潜ってる時とか、護衛依頼受けてる時は、そうホイホイ気軽に帰れないとかで……、そういう時に僕をベア様にあずけるんだそうです。
すぐに帰る秘策があるそうですけど、一体どんな秘策なんでしょうね?
大雑把にまとめると
1、ベア様との関係も保ちながらガルドさんの子供になったよ! パパが二人になったよ!
2、忙しい時はベア様のとこに預けられるよ! いつでも遊びに行っていいよ!
3、僕が住んでた離れは、当分使ってくれて構わないよ。
近いうちに一軒立てるからそれまではあそこを使ってね。
もうちょっと話を詰める部分はあるけどそれはまた後でとのことです。
その後は3人で祭りの賑に参加して楽しみました。
周囲の賑に押されて、歌わされることになったのはちょっと大変でした。
この世界に生まれてから歌ったことなんて全然なかったから何を歌おうかと考えたけど。
知識にあった陽気なアニソンを歌ってみた。
おかげで会場も盛り上がって、途中から吟遊詩人さんも音を出してくれたので、そこから気分が高揚して、ハイテンションになったのは内緒である。
宴もたけなわになり、その日は解散となりました。
ガルドさんとべろべろに酔ったヴェルグさんは屋敷の方に泊まらずに僕がいた離れの方に向かいました。
しかしベッドで3人も眠れるわけもなく、しょうがないので三人でそのまま敷布団をしいて床で寝ることに。
「さぁ~て寝るぞ寝るぞ!」と、そのまま三人、身をくっつけて眠ることになったのは予想外でした。
ちなみに翌朝、二日酔いでダウンしているヴェルグさんが見られたのは余談である。
というわけで、色んな意味で家族回でした。
ちなみに皆さんだったら何歌いますかね?