留守番と突入と独り善がりの友情
今回は割とスローな感じの日常回だよ!パロディ要素少なめだよ!(ないとは言っていない)
『ほうほう……〈アルカトピア警察に特殊犯罪対策課設立〉ねぇ……。ディークの存在が公に捜査されるかもなー』
「ねぇミューズ〜。活動する時の身バレを防ぐために、新しい名前考えたんだけど……!」
『おっ!正義の味方っぽい。聞かせてくれよ!』
「ふふーん、その名も〈ミューズ・ナイト〉!」
『モッズコート着て、トランシーバーで歌いそうな名前……』
平日の朝。二人だけのリビングでは、親子のような和やかな会話が繰り広げられる。
『確か、ハルの親御さんって海外赴任だっけ? いつ帰ってくんの?』
「二ヶ月後! それまでには憑依解除してよ!」
『え〜、やだよ! こんなに居心地いいのに!』
「あっ、もうこんな時間……! 学校行ってくるね!」
『ちょっ、ここに一人かよ!? 俺、来客とか対応できねぇよ!?』
「お客さんなんて来ないから! 大丈夫!」
『おい待て、それフラグ……』
国立アルカトピア学園。この大都会に住む未来ある若人の成長を見守っている巨大な私立高校、いわばマンモス校である。
「おはよう、ハルちゃん! クマひどいけど、寝不足?」
「うっ、うん。最近ちょっと色々あってね……!」
校門をくぐる直前の長い坂。春には桜の名所として語られるその坂を、二人の少女が自転車を押しながら語り合う。
「えっ……大丈夫? あの化け物が出てきて以来だよね? なんかあったらすぐ言ってよ、私たち親友じゃん!」
「ありがとうユウ……。でも、なんともないよ!」
ユウはハルの瞳をしげしげと覗き込み、彼女は思わず目を逸らした。
(夜の街で怪物狩りとか、言えるわけないじゃん!!)
『あれっ?カシューナッツ切れてる? ハルが帰ったら買ってきてもらわないと……!』
ミューズはため息を吐いた。部屋の片隅に置かれたゴミ箱に入っているナッツの空き容器の数は、暇を持て余すコウモリの怠惰を物語る。
ピーンポーン
響き渡るチャイムの音にミューズは振り返り、玄関をちらりと確認する。
『ハル!? ……が帰るにはまだ早いよな。という事は来客!? おいおいおいおい、どうする? 居留守使う? いやいやそれも……』
ピーンポーン……
『これ出なきゃマズいやつだよな!? どうする、もし〈素質持ち〉じゃなかったら、姿見えないし間違いなく都市伝説案件じゃん!? 通報されるってこれ!』
ピーンポーン……
『出るか……』
ミューズはそう呟き、ゆっくりとドアスコープを覗き、その限られた視界に男の姿を捉える。
『新聞なら間に合ってんだよ!!!』
ミューズの渾身のシャウト。彼は勢い余ってドアを開けてしまう。
そこに立っている男は仏頂面で手帳を広げた。
「〈アルカトピア警察・特殊犯罪対策課〉の者だ……。ここにディークが居るという情報を得た……」
『あっ、コレまずいヤツだ』
『へぇ、それがアンタの願い……?』
「うん! ハルちゃんに嫌われたくないの……!」
夜の公園。小さなサメのディークに少女は答える。
「ハルちゃんは私の親友なんだから!」
モッズコートにトランシーバー:ドラゲナイ。あれダーゲナイの方がそれっぽい。