説明回とマル秘能力とwin-winな関係
今日は説明回だよ。戦闘シーンないよ。作者の怠慢だよ。
休日。少女はいつにもまして早起きをした。同じ部屋の同居人にどうしても慣れないからだ。
「ミューズって浮いたまま寝るんだね……。てっきりコウモリって天井にぶら下がるものかと……」
『俺はコウモリをモチーフにしただけでだな……! 本来ディークは浮くんだよ!』
呆れながら話す赤目のコウモリに、宿主の少女は話しかける。
「ねぇ、ちょっとディークについて興味湧いたんだけど……」
『確かに説明回は必要だな……。今後の展開的にも、な』
一人と一匹が話しあう空間には、誰も邪魔するものはいない。ジーンズにTシャツといったラフな格好のハルは、目の前に浮かぶ寄生生物に矢継ぎ早に質問を始める。
「そもそもさぁ、ディークってなんなの?」
『この街に夜現れる生き物。憑依する奴らの願いを叶える見返りに、そいつを操る事ができる』
「えっ、それ先に言ってよ! それならもっとちゃんとした願いにしたのに! 生半可な願いなら損しかしないじゃん……」
『安心しろ! お前みたいに俺らが見える――“素質持ち”は願い以外のメリットもある!』
そう言い切るミューズに、ハルの知的好奇心は刺激される。
「メリット!? えっ、どういう事!? 願いが叶う以外になにがあるの……?」
『ふふーん、ちゃんと聞いとけよ。素質があるものは、俺達の固有の能力を使いこなせる!』
「ほほう、それは憑依するディークによって変わるんだよね? どんな能力? 日常生活に使える?」
『よし、聞いて驚け! 俺の能力は! “触れた血液をほかの物質に変える”事だ!!』
「この契約ってクーリングオフできないの?」
ハルは窓の外にコウモリを放り投げようとしながらそう聞く。都会の片隅にあるそれなりのマンションから落とされそうになるミューズは、必死に彼女を説得する。
『待って! 頼むから早まるなって! きっと日常生活で利点あるよ! 止血とか!!』
「ほとんど戦闘向きじゃん!! 使いにくいわ! そんだけのメリットで、私の平穏な生活崩さないでよ!」
『安心しろ。昨日みたいな化け物は、夜にしか出ないぞ』
「えっ、どういう事……?」
『ディークに憑依された者――俺達の言葉で〈ディークノア〉――は夜にしか活動できないんだよ。太陽の下では、ディークの力は生存活動に精一杯になるからな。だからお前の日常生活はできる限り尊重される、ようにする!』
「その……ディークノア?を倒せば安全が戻るんだよね……?」
『まぁそう言う事だな。ハルは周りのやつをディークノアから守り、俺は人間を操れて万々歳。win-winな関係じゃん。誰も損をしない! 完璧!』
「私の意志は!?」
『そうと決まればアレだ、戦い方のレクチャーだ! 行くぞ未来のヒーロー!!』
「それを言うならヒロインでしょ……」
情報量が多過ぎる