悪女
多分、漫画の世界は、黒髪でちょっとSで優しければ、大概上手くいくのだ。男女関わらず。
そんな要素を併せ持ったヨウコは、現実という枠に当てはまらない。早い話がモテる。けれど、彼女は長続きしない。
「付き合うって、終着駅なのよ」
陽子は言う。この一年で、両手を越える数の男の子と付き合っ彼女だが、決して「悪女」などではない。ただ、考えていることと、やっていることが矛盾しているだけ。
「どうせ飽きちゃうのよ。デートして、キスして、セックスして、その後は? 結婚? 子供? なら、付き合う前で立ち止まった方が気楽じゃない?」
彼女はしきりにカップの中身をスプーンでかき混ぜる。ミルクはおろか、砂糖も入っていない真っ黒な液体を。
「こうやってかき混ぜ続けていたら、どんどん酸化して、雑味が増す。私達みたいに。恋の数だけ女は成長するーーって嘘ね。結局、独り身の女が自分の正当化の為に言ってるだけ」
「そうなのかなあ」
自虐気味に話す彼女に肯くことも出来ず、私はミルクティーを口へと運ぶ。けれど、砂糖がお茶に合っておらず、堪らず微妙な顔をする。
「ああ、だめよ。ここのマスター砂糖入れない主義だから。砂糖の違いなんて解らないわ」
私には彼女が「自分は砂糖の違いが解る」と言っているのだと解釈した。
彼女は付き合った男の子は多いけど、男を知らない。けれど、私と話す時は、彼女の言う「独り身の女」の様な雰囲気を醸し出している。そのアンバランスさが私を引きつけ、彼女に同族嫌悪も抱かせる。
「ミホは男の子と付き合うってなったらどうする?」
「何も出来ないかな。いや、したいと思わないかな。私もきっと」
「正解ね。いきなりデートに誘う様じゃ多分長続きしないわ。春に出会って、夏に思い出を作って、秋に衝突して、冬で愛を誓い合う。そんな王道パターンは、寿命が一年の女にしか出来ないのよ」
恐らく漫画のことを言っているのだろう。ここでも私と意見が一致したことに、私は嬉しくも悲しくもあった。
「まあ、何もしなくても。長続きしないんだけどね」
彼女は、十七の少女の笑みを向ける。
じゃあ、何で付き合ったの、そう尋ねると彼女は答える。
「私はもとの味が強過ぎて、砂糖に飢えているのよ」と。




