第四話 〜cherryの温もり〜
「わ、私の名前!…何で知っているの……」
私は驚いてその言葉を絞り出すのが精一杯だった。
掠れた声しか出せなかった。
だって…見ず知らずの人が私の名前を知っていたのよ?
…驚くのも当然でしょう?
〈…仕方ないんだ。覚えていなくとも…〉
そう言ってCHERRYは悲しそうに顔を歪めた。
儚くて、切ない顔。悲しみや憂いにじっと耐えてる感じ。
涙が、今にもこぼれ落ちそうで。
思わず、頬に手をやった。
CHERRYの頬に、触れた。
きめ細かな肌、と言うか、柔らかくて絹のような肌…と言うか。
さらさらしてて、気持ちよかった。
流れ落ちた涙が、私の手に吸い込まれていく。
私の手に、濡れた感覚があった。
暖かくて、それは、まだこぼれ落ちたばかりの涙だと分かる。
…覚えていないって、何?
知りたいことが沢山あったけど、今はCHERRYの頬にこうやって触れているだけで良かった。
安心できた。
何より、体温が、鼓動が、命が、感じられて。
〈…瑠、璃。……覚えているのか…?昔も…こうやってくれた…〉
…え?
私は、ちっとも分からなかった。
だって、何一つ知らない。
CHERRYのこと…。
「何の、事…?」
〈早く…思い出してくれ…〉