第二章 元素(5)
とばっちりをくらった蓮都はセツナのうしろをとぼとぼと歩いていた。
「アンタのせいよ……。こっち見てるから……!」
「あれは、まあ、俺のせいだ、ごめん」
頭を下げる。素直に謝るのが一番だ。だがセツナは怪訝な面持ちのまま踵を返す。
「やけに素直ね……気持ち悪い。さっさと行くわよ変態」
なんなんだこいつは。
アストやスヴァルト、ルフェールにクレアトラス。誰も個性的ではあるが、彼女は別格だ。変人だ。確かにアストの言うとおり美しくはあるがそれだけだ。それ以外には殺気ぐらいしかない胸はない。
変な奴に関わってしまったな、と学園生活二日目にして思う。本来なら目立たずに学園生活を送るつもりだったが、アストに何やら意味のわからないことをされ、さっきからずっと頭痛がするし、玲美はずっと何か唸ってぶつぶつ呟いている。
と、突然セツナが振り向いた。
「アンタの精霊、うるさいから黙らせなさい」
「え?」
その音を発したのは蓮都ではない。この場で最も精霊という言葉に適する玲美本人だった。
「何驚いているの? もしかして私如きに精霊の声が聞こえないとでも思ったわけ?」
「いや……、そうじゃないんだ」
実際そうだった。何を基準にこいつ――玲美の声が聞こえるのは知らなかったのだが、アスト以上の実力者、もしくはエルフのような種族だけだと思っていたのだ。もしかするとこいつは高ランクを持っているのか。
いや、そうだとしても……。何故スヴァルトはあのとき……。
今それを考えても無駄だろう。
「何よ、黙り込まないでくれる?」
蓮都は考えるのをやめ、持ってきた竹箒であたりを掃除し始めた。セツナはむすっとした表情のまま同じように作業をする。
そしてそれは起こった。唐突で、刹那的に。