第二章 元素(4)
「錬金術というものは、簡単に言えば元素からなるものだ。万物は元素からできており、基本的には八大元素で構成されている。最も錬金術師は全てを使いこなせるわけではない。それに精霊からの元素供給がなければ発動しない。それが錬金術だが――」
淡々としたチョークの音が講義室に響く。
講義室は日本にあった学校の教室のような造りになっていて、音はよく通っている。蓮都はそんな講義室でアストの講義を受けていた。
文字がまったくわからない蓮都は暇を潰すように欠伸を噛み殺し、講義室に視線を巡らす。
ふと、ある女生徒を発見する。
――――『絶対零度の女王』。
黒と白の少女。
窓際の席の彼女は校庭を眺め続けている。その表情は儚げ――いや、怖い。視線に気が付いた彼女は絶対零度の双眸で蓮都を射殺す。ぞくっと背中に嫌なものが走る。
と、同時。
「セツナ・ベースレイン。いい加減にしないか。新入生を怖がらせるな」
さすがにアストに頭は上がらないのか素直に謝る。
「……はい、すみません」
「だが、蓮都・鋼宮、貴様にも非はあるぞ。いくら彼女が美しいとはいえ、授業の最中に見惚れるのは関心しないな」
「――なっ……!」
蓮都ではなく『絶対零度の女王』――セツナ・ベースレインが反応する。
「せっ、先生! ふざけないで下さい! 戦闘ばっかりして馬鹿になったんですか? 死にたいんですか?」
びきびき、と彼女の周りの温度が急激に低下する。たまらず、周りの生徒は席を立ち逃げ出す。だが、怒りの矛先を向けられているアストはまったく動じていない。
「校則違反だ。中庭の掃除でもしてこい」
瞬間、温度が正常に戻った。セツナが何をしたわけでもなかった。が、彼女ははっとすると「わかりました」と小さく言って、講義室を出る。
「蓮都・鋼宮。貴様もだ」
とばっちりだ。くそったれ。