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夕刊

作者: WAIai
掲載日:2026/08/05

お昼過ぎの時間帯、小林は愛車のジープで、新聞を配っていた。朝刊ではなく、夕刊である。太陽傾き、熱気でこれ以上はないだろうという陽気の中、エアコンをつけてハンドルを回す。

「ーあれ」

お客さんの家に着いた時、重たい荷物を持っている人がいるので、小林はエンジンをかけたまま、停車させ、車から降りる。

「大丈夫ですか?」

声をかけると、家の奥さんが両手まんばいになった袋を持ち、ふーふーと言っている、

「こんにちは、小林さん」

「こんにちは」

挨拶を交わすと、小林は夕刊を脇に抱え、両手を差し出す。

「俺が持ちます。腰や足にきたらいけない」

「…でも」

「いいんですよ。俺は男だから力がありますし」

袋の片方を受け取ると、夕刊を渡し、もう片方も受け取る。

奥さんは手が痺れたのか、振っている。

「本当にすみません」

「いや、いいんですよ。これくらいはやらせてください」

「先に玄関を開けてきますね」

奥さんは夕刊を大事そうに持ちながら、玄関へ向かう。

どうやら施錠していたらしく、鍵を取り出すと、玄関を開ける。

「ここに置いてください」

「はい。…よいしょっと」

玄関の床にビニール袋を置くと、小林は手を払う。

「ここで大丈夫ですか?」

「大丈夫です。あとは私がするので」

奥さんはにこりと笑ってくれ、小林はほっとする。

「ありがとうございました。あとは夕刊も、お疲れ様です」

「はい。仕事な真面目にやらないと」

ははと声を立てて笑うと、小林は頭を下げ、行こうとする。

すると奥さんが追いかけてきて、声をかけてくる。

「ちょっと待ってください」

「はい?」

小林は不思議に思ったが、奥さんがあるものを差し出してくる。

「ーこれ、どうぞ」

差し出されたのは、パックのジュースだった。

味はグレープ。

小林は戸惑い、奥さんに言う。

「これは…。その、大丈夫です。いただくわけにはいきません」

「いいから。夏は過ぎたとはいえ、まだまだ暑いですから」

強く押してくるので、小林は戸惑いながら受け取る。

冷蔵庫から出したばかりなのか、冷えていて美味そうだった。

「運んでくれたお礼です」

「ありがとうございます」

小林は礼を言うと、ジュースを大事そうに持つ。

「じゃあ自分はこれで」

「はい。また明日」

手を振られたので、頭を下げることで返す。

車に戻ると、玄関のドアが閉まったので、ジュースにストローをさす。

「…美味しい!!」

小林は喉が乾いていたので、とても嬉しかった。

人間、良いことをすると、良いことが返ってくると、言葉を噛みしめる。

一気にごくごくと飲んでしまうと、パックを潰し、ごみ箱へ捨てる。

「…さて、次に行くか」

機嫌良く独りごちると、車を移動させたのだった。


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