熱と亀裂
午後の熱気は、疲れ切ったエアコンの吐息をすり抜けて、重くまとわりついていた。店内は半分ほど埋まり、砂糖とバニラの香りの中で、会話のざわめきが漂っている。アイスをよそうことにまだ不慣れなリン・ユエは、準備台のそばでつまずいた。小さく息を呑む声とともに、ストロベリーとチョコレートのスクープが彼女の白いブラウスに落ち、胸元に粘つく地図のように広がった。
カウンターの向こうにいたアドリアンは、すぐに反応した。
「こっちへ」
笑いと心配が混ざった声で彼女の手を取り、「奥に使えるものがある」と言った。
ビーズのカーテンの向こう、狭い空間へと彼女を連れていく。そこはほとんど物置のようで、シンクと積み上げられた箱、そしてちらつく電球が黄色い光を投げていた。空気には洗剤と砂糖の匂いがこもっている。
「ブラウス、渡して」
彼の声はさっきより低かった。
耳まで赤くなったリン・ユエは、震える指でボタンを外した。シンプルな下着にも汚れは及んでいた。アドリアンは濡れた布を手に近づいたが、拭こうとはせず、そのまま彼女を見つめて動きを止めた。空気がぴんと張りつめる。彼の中を、暗い思考がよぎる――家族を救えないなら、せめて“英雄”を傷つけることはできる。
布を置き、ゆっくりと溶けたアイスの縁を彼女の冷たい肌に触れさせる。リン・ユエは小さく震えた。次の瞬間、彼の唇が彼女のそれを捉える。優しさではなく、貪るような衝動的な口づけだった。アドリアンの手は彼女の背をなぞり、やがてジーンズへと滑り落ちる。衣服は抵抗にならなかった。荒い息とともに消え、狭い空間で二人の体が熱を帯びてぶつかり合う。
彼は彼女を持ち上げ、シンクの縁に座らせた。リン・ユエは不慣れなまま、彼にしがみつく。
「これが初めてなの」
首元で囁かれたその言葉は、彼の欲望にさらに火をつけた。
最初は荒く、わずかな痛みを伴ったが、やがてそれは圧倒的な感覚の波へと変わる。リン・ユエの声が狭い部屋を満たし、金属に響くリズムと混ざり合う。一つ一つの動きが新たな声を引き出し、触れるたびに電流のような刺激が走る。
店の外では、クララが機械的な笑顔でミルクシェイクを作っていた。しかし、不意に動きが止まる。奥から聞こえる音は明らかだった。彼女の表情は凍りつき、やがて諦めと恥ずかしさに歪む。
(ほんと、最低ね……兄さん)
彼女は乱暴に音楽の音量を上げた。ポップソングがほとんどすべてをかき消す。
「さあ、音楽上げていこう!」
無理に明るい声を作り、「今日はお祝いよ!」と続けた。何か対策をしなければならない――防音でも何でも、この騒ぎで店を潰すわけにはいかない。
一方、テーブルに座っていたイェ・フェンはすべてを聞いていた。息遣いも、声も。グラスを持つ手は途中で止まり、心が砕ける。リン・ユエの声だと分かっていた。彼女への想いは酸のように胸を焼く。大音量の音楽は侮辱のように響いた。
(こんなもの、聞かされるべきじゃない)
怒りと痛みが限界まで押し上げる。彼は一気に飲み干し、金を置いて、火事から逃げるように店を出た。
外の夜風は、胸の熱を少しも冷ましてはくれなかった。
それはただの嫉妬ではない。
屈辱だった。
そして屈辱は、行き場を失うと力を求める。
その夜、誰かが決めた。
ヴァルモンも「失うこと」を学ぶべきだと。




