すべてはコントロール下に
アドリアン・ヴァルモントはオフィスのソファに体を預けていた。
靴は脱ぎ、ジャケットは背もたれに掛けられ、胸の上には開いたポップコーンの箱。何ひとつ急ぐ必要のない人間の、穏やかなリズムがそこにあった。
壁には画面がほぼ全面を占めている。金融チャートもニュースも映っていない。映像だった。
カメラはわずかに揺れている。夜の映像。車両。キャサリンが降りる。妨害信号。最初の一撃。二撃目。
救出の瞬間。
――美しい実行だ――アドリアンはポップコーンを口に運びながら呟いた――。清潔だ。ほとんどプロ並みだ。
右側にはヴァレンハイム警察署長がいたが、微笑むことはなかった。
左側の市検事も同様。
その背後にはチーム全員が静かに作業していた:サブモニター、タイムライン、書き起こし、電子スタンプ、番号付きフォルダ。声を出す必要はない。
――その角度は――検事が画面を指さす――。どこから?
――プライベートカメラ――アドリアン――契約済みの警備会社のものだ。会社は六か月前に倒産した。我々が資産を買収した。映像も含めて。
署長は横目で彼を見た。
――買ったのか?
――家族が買った――アドリアンは視線を戻さず――。僕はただ署名しただけだ。
別の画面には地図が表示されていた。ルート、迂回、正確な時間。
――ここ――アドリアンは続ける――車両の進路変更だ。即興ではない。前もってこの番号からの電話に対応している。
検事はタブレットに視線を落とす。
――マルコスの電話。
――裁判所命令で傍受――アドリアンは眉を上げる――。すべて合法だ。事件の三日前だ。
検事は新たな興味をもって彼を見る。
――三日前?
――ああ――彼は答える――。推測をやめ、聞くことを始めたのがその日だ。
画面には音声記録が表示される。
「経路は自然に見せること。過剰な暴力は避ける。救出は清潔であること。」
部屋に沈黙が落ちる。
アドリアンはゆっくり咀嚼する。
――一番好きな部分は――と言う――これだ。
別の録音。
「彼女に怪我をさせるな。物語が台無しになる。」
署長は腕を組む。
――物語――と繰り返す――。好きな言葉だな。
――マルコスが好きなんです――アドリアンが訂正――。自分を物語の中にいると思っている。機能的なヒーロー。都合のいい悪役。適切なタイミングでの救出。後の恋愛。
肩をすくめる。
――よくある話だ。
検事は画面をスワイプする。メッセージ、支払い、送金が表示される。
――誘拐の人間――彼女が言う――即興じゃなかった。元軍人だ。幽霊会社に雇われた。
――マルコスの間接的所有――アドリアンが付け加える――。三層を経由して。なかなか良いが、十分ではない。
ポップコーンをもうひとつ。
――古典的な間違いだ。
――何だ?――署長が問う。
アドリアンはわずかに微笑む。
――力は叩くためだけにあると思うことだ。
検事はタブレットを閉じる。
――共謀、誘拐、司法妨害、証拠操作、国内での傭兵使用……
――そして詐欺――アドリアン――。大きな詐欺も。忘れるな。いつでも詐欺はある。
部屋に重い沈黙が落ちる。
――なぜ前に介入しなかった?――署長がついに問う――。誘拐を止められただろうに。
アドリアンは画面を見る。キャサリン、安全。マルコス、効率的。すべて正しい場所にある。
――全体像が必要だった――と彼は言う――。穴も、推測も、即興ヒーローもなしで。
わずかに体をひねる。
――神話を壊すなら、途中で止めるのではなく、行動させてこそだ。
検事は長く彼を見つめる。
――あなたは強くない――彼女は言う――。戦わない。武装した男を指揮しない。
――ああ――アドリアンが認める――。必要なかった。
肩をすくめ、リラックスして座る。
――金がある。影響力も。時間も。そして退屈な弁護士たちも。
再び画面を見る。マルコスがキャサリンを車に乗せる。集中し、真剣で、自分の役割を全うしたと思っている。
――悪役はたいてい愚かだ――アドリアン、考え込むように――。持てるものを使わず、一枚のカードに執着する。
微笑む。
――僕には当てはまらない。
画面を消す。
オフィスは沈黙。
――続けろ――やっと立ち上がり言う――。逮捕は適宜でいい。できれば明日だ。今日はまだ忙しい。
空のポップコーンの箱を机に置く。
――あ――付け加える、どうでもいいことを思い出したように――。報道には正しい言葉を使え。
検事が顔を上げる。
――どの言葉?
アドリアンはシャツを直す。
――「落ちたヒーロー」ではない。
優しく微笑む。
――自分の救出の首謀者だ。
そしてオフィスを出る。
空はヒーローに機会を与えた。
問題は単純だ:
悪役は観察することを選んだ。
家に着くと、迎えに出たのはモニカだった。
彼女の第一反応は恐怖ではない。
混乱だった。
アドリアン・ヴァルモントは一人ではなかった。
その後ろには複数の警官。IDと武器を明示。二つの顔をモニカはすぐに認識した:市の検事とその補佐の一人。
――ヴァルモント様……――唾を飲み込みつつ――。何か?
アドリアンは落ち着いてコートを脱ぐ。まるでビジネス会議から来たかのように。
――キャサリンはどこだ?――問う。
焦りも心配もない。観察だけ。
モニカは一瞬ためらう。
――メインホールに――答える――。エリーズ様と、マルコス氏と一緒です。
アドリアンは頷く。
――案内しろ。
モニカが前を歩き、状況を整理しようとする。迅速に、正確に。すべてプロトコルに従っているが、彼女には完全には理解できない。
ホールに入ると、場面は別の物語のようだった。
キャサリンは立って、青ざめ、まっすぐ。警察を見て、第一反応は恐怖ではなく混乱だった。
なぜこんなに多くの警官が?
なぜエリーズとマルコスも?
彼女の頭は以前のようにシーンを組み立てようとするが、すべてのピースが場違いに見える。
エリーズ・ヴァルモントが隣に、穏やかな、ほぼ母性的な表情で立っている。
後方にはマルコス。
背筋を伸ばし、胸を張り、微かな笑み。
自分の英雄的行為が世界に認められていると信じている笑み。
そして、アドリアンを見る。
何も言わない。反応もない。声も出さない。
わずかに頭を動かすだけ。
それで十分だった。
警官たちは即座に展開。精密な動作。銃を上げ、マルコスを指す。
笑みが凍る。
――な、何……?――呟く。
キャサリンが一歩前に出る、反射的に。
――待って!――叫ぶ――。彼が救ったのよ。あなたたちは……
声が震える。数日間信じてきた確信が揺らぎ始める。間違って見たのか?誤解していたのか?
――スターリング嬢――検事が介入、毅然として――。離れてください。
アドリアンは彼女を見つめる。咎めも感情もなし。疲れだけ。
――違う――言う――。彼はそうしなかった。
マルコスは一歩下がり、困惑する。
――冗談か?――吐き捨てる――。脅しか?先に着いたからって卑怯か?
沈黙。
検事はフォルダを掲げる。
――マルコス・R――言う――。共謀、重誘拐、傭兵の使用、現場操作で逮捕。他の財務上の容疑も確認中。
マルコスは短く、神経質に笑う。
――馬鹿げてる。俺が止めたんだ。
――雇ったんだ――検事、淡々と言う。
タブレットを取り出す。電源オン。
音声。映像。メッセージ。送金。
すべて、整然と、否定できず。
ホールは沈黙。
キャサリンは足元が揺れるのを感じる。
――信じられない……――呟く――。見たのよ。彼が私を助けた。
警官たちが進み、マルコスを手錠で拘束する。
――キャサリン!――叫ぶマルコス――。何か言ってくれ!俺は君のためにやったんだ!
動けない。検事が示す証拠が、彼女が築いた物語の層を一枚ずつ剥がしていく。
現実が目の前で書き換えられる。映像、メッセージ、送金のたびに、かつて憧れたヒーローは少しずつ消えていく。
あの嘲るような笑みは消える。
胸を張った姿も。
マルコスはアドリアンを純粋な憎悪で見る。
――お前は何もしていない――吐き捨てる。
アドリアンはただ頭を下げる。それだけ。
足音が廊下を去る。
キャサリンは立ちすくみ、震え、エリーズが隣にいる。
――かわいそうな子――彼女が呟く、ほとんど哀れみのように――。世界は行動する者を常に報いると信じていたのね。
署長が近づき、場の緊張を少し緩める。
――キャサリン――声は毅然――。理解するのは難しいだろうが、我々に仕事をさせてほしい。
――何…が…起きたの?――彼女、囁く。
――救出は本物だ。脅威もあった。しかし、すべてコントロール下にあった。彼は……ただ、自分が助けていると信じていただけだ。
――マルコス…?――彼女、信じられない様子で囁く。
――彼の行動は証拠を変えない。誰がヒーローかを決められない。我々が決める。
アドリアンは後ろで、動かずに観察する。いつもの通り。
キャサリンは深呼吸。すべてが合致する。心はまだ受け入れたがらない。
救われたと思った男は、今、落ちた。
何もしなかった男が、すべてを手に入れた。




