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英雄の誓い

その夜、彼らは祝った。


街の酒は見た目より強かった。最初は甘く、後から裏切る。


笑いはぎこちなく始まった。生き延びることには慣れていても、祝うことには慣れていない。


だが少しずつ、ここ数日の重さが溶けていった。


金の箱は、テーブルの上で忘れられていた。


アドリアンはいつもより多く話し。


ナラはいつもより多く聞いた。


何気ない話。


心地よい沈黙。


一瞬長く続く視線。


何週間も張り詰めていた何かが、静かにほどけていった。


距離は偶然ではなくなり。


呼吸は自然ではなくなり。


夜が部屋を包み込んだとき――


二人とも、何が起きているか理解していた。


不器用な瞬間もあった。


激しい瞬間もあった。


そして何より――


人間的だった。


数時間だけ。


戦争も。


旅も。


未来の重さも。


すべて消えた。


残ったのは、ただ二人だけだった。


朝は容赦なく訪れた。


光が古びたカーテンの隙間から入り、木の床に金色の線を描く。


ナラが先に目を覚ました。


ゆっくり起き上がる。


床には服が散らばっていた。


昨夜の決断の地図のように。


そして彼を見た。


アドリアンは仰向けで眠っていた。


穏やかな呼吸。


あまりにも平静で――


それが彼女の胸の混乱と対照的だった。


頬が熱くなる。


シーツを握り、視線を落とす。


ほんの一瞬、笑いかけた。


服を拾い集め、静かに着る。


最後の紐を結ぶとき、背後で気配が動いた。


アドリアンが目を覚ました。


視線が合う。


そしてすぐ理解した。


ナラは見なかった。


小さく呟いた。


「……けだもの」


怒りではない。


からかいでもない。


もっと複雑な何かだった。


アドリアンは何か言おうとした。


冗談か。


謝罪か。


しかし言葉は見つからない。


ナラはコートを取り、部屋を出た。


振り返らずに。


その日一日。


彼女は彼の数歩前を歩いた。


必要なことだけ答え。


目を合わせない。


しかし離れもしない。


彼が止まれば、彼女も止まる。


彼が市場を見ると、彼女は別の物を見るふりをする。


だが遠くへは行かない。


それは――


慎重に保たれた距離だった。


静かな戦争。


始め方も終わり方も分からない戦争。


そしてその頃――


英雄は運命を果たしていた。


村の上にはまだ煙が漂っていた。


祝宴はなかった。


沈黙だけだった。


カエルは村の端に立ち、地平線を見つめていた。


シャーマンが近づく。


「ジャガーはただの魔物ではない。試練だ。

外の者で生き残った者はいない」


北の山を指す。


霧の向こうに、巨大な遺跡。


「第一の誓いの神殿だ。選ばれた者しか入れない」


胸の鍵が震えた。


二日間の登山。


密林。


霧。


足音だけ。


やがて見えた神殿は墓のようだった。


黒石の円が門を封じている。


鍵が燃える。


ルーンが光る。


石が震える。


扉が開く。


「ここから先は一人だ」


内部。


青い結晶。


壁の戦史。


中央の台座。


そして――


忘れられた英雄たちの骨。


影が動く。


幽霊の戦士。


「力か。支配か」


「生存だ」


戦い。


記憶の嵐。


裏切り。


戦争。


王冠を持つ霊が問う。


「民を束ねるか。支配するか」


カエルは答えた。


「憎まれても――束ねる」


影は武器を下ろした。


台座が光る。


骨と黒曜石と羽の王冠。


失われた部族の名が刻まれていた。


カエルがそれを取ると、胸の鍵は沈黙した。


外へ出ると夕日。


山の斜面には人々。


村。


部族。


何千もの視線。


族長たちが跪く。


彼が救った少女が赤い紐を腕に結ぶ。


「もう……あなたは私たちのもの」


歓声。


太鼓。


槍。


松明。


シャーマンが宣言する。


「今日から――

すべての民は一人の守護者の下を歩む」


カエルは笑わない。


ただ槍を地面に突き立てた。


静かな誓い。


そして風が吹いた。


まるで――


彼に頭を下げるように。

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"読んでいただきありがとうございます!コロンビア人ですが、日本のアニメや小説が大好きで頑張って書いています。翻訳ツールを使っての投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。"
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