reverse time to come No.0005 戻ってきた理由
その夜、春江は引き出しの中をひっくり返した。
腕時計が、戻ってきた"意味"をどうしても確かめたくて。
手帳には古いレシート・未開封のお守り、その下にあったのは小さな写真。
病院のベッとの上で笑う夫と、幼い一人の少年が写っていた。
"達也"甥っ子春江の弟が若くして離婚したとき、数カ月間、預かり生活を共にした。やがて祖母に引き取られた。
春江の家にいたのは半年ほど。その時間春江と夫にとって、癒しの時間になった。病床でも、夫は達也に折り紙や将棋を教えていた。
春江はそっとデジタルの腕時計を手に取る。傷だらけのボタン、曇った液晶。今ではぴったり時刻があっている。
もしかしたら達也がテレパシーを送ったのかもしれない。
それはありえないかもしれないけど、そう思いながらも春江の中で確かに何かがほどけていく感覚があった。
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翌日、春江は小包を用意し、中には写真と動き出したこの腕時計。数年ぶりに住所を調べて、達也宛てに手紙を添えて送った。
《覚えてますか?壊れてしまった腕時計、あなたが直すと言っていた腕時計。今も動いています、あなたと一所に過ごした時間がもう一度私を動かしてくれました》
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郵便局を後にした空の下で、春江は腕時計を見つめた。
止まったままのアナログ腕時計、この止まった時間も含めて人生の一部と感じる。
『ありがとう!』
そう呟いて空を見つめた。




