3/6
reverse time to come No.0003 止まる、戻る
「止まってる・・・」
春江は目の前のアナログをそっと持ち上げた。確かに昨日まで時を刻んでいた。秒針は「4」のところで止まっている。電池切れ?
買ったばかりなのに・・・
「まさかね、偶然よね」
だけど、不安が胸の奥でドキッとさせた。
今朝戻ってきたデジタルの腕時計は、狂った時刻を刻みながら、動いている。
一方で、新品のアナログ時計は完全に静止していた。
春江は思わず自分の手首を見つめた。深くなったしわ、増えてるしわは、歳月をモノ語る。気づけばただ日々をやり過ごすだけの生活になっていた。
夫を亡くし、アンバランスな気力、何も感じなくなって、それでも、「時間に追われている」ふりをしていた。
そうしなければ、自分が自分でいられなくなるから。
その時テーブルの上のデジタル腕時計の電子音「ピッ」。
誰かが遠隔操作したみたいだった。
驚いて、腕時計を見ると、数字が揺れていた。
今まで合わせられなかった時刻表示が"現在の時刻"になっていた。
正確な時刻だった、午前09:02。
「えっ・・・うっそぉー」
止まった時計と正確に表示した時計。
忘れていた過去と戻ってきた想い、それらが春江に問いかけている気がした。




