第76話 グリマレオン海域への道
それから、三日歩いて、貿易都市ザンドクルに到着した。
到着したのが夜だったため、そのまま宿に泊まり休むこととした。
◇◇◇
翌日。
「さて、情報収集もかねて、商船を見に行こうか」
俺の言葉に全員が同意する。
商船の出している、店にて。
「すみません、ちょっと聞きたいんですけど、グリマレオン海域って知ってますか?」
俺はあえて、そのままの言葉で男店主に尋ねてみる。
「そりゃ、商船で商売してるんだ。知ってるさ。グリマレオン海域は原因不明なんだが、羅針盤が狂うし、黒い霧が出るんだ。だから、商船は迂回して進んでるよ。かなりの手間なんだがなぁ……」
男店主は頭をボリボリとかく。
「そうなんですね。ちなみに、グリマレオン海域の黒い霧とかが何とかなったら、助かりますか?」
俺は尋ねる。
「そりゃ、大助かりだよ! 商品運ぶのに、わざわざ遠回りしないで良いんだからな!」
男店主はやや興奮気味に話す。
「ですよね……! グリマレオン海域に入っていって、原因を解決しようと思いませんか?」
俺はやや明るい声で尋ねてみる。
「バカ言うんじゃないよ! ただでさえ危険な海域なのに、原因を解決しようとするだぁ? そんなこと一商船ができるかってんだ!」
男店主は声を荒げる。
「そうですよね……。逆に、グリマレオン海域を突破したいような、勇気溢れる人とかいないですか?」
俺は努めて穏やかに話す。
「ああ⁉ そんな奴いね……。いや、あの人はグリマレオン海域を突破したがるかもな……」
男店主が真剣な表情に変わる。
「あの人……? どなたのことか聞いてもいいですか?」
「ここ貿易都市ザンドクル一番の商会、イルディセリナ商会の会長だよ。何でも、娘さんが船の事故に遭ったそうだが、その時にグリマレオン海域に引きずり込まれたって話があるんだ。」
「グリマレオン海域に引きずり込まれる……? そんなことが起こるのか?」
俺は疑問符を浮かべながら尋ねる。
「あの海域では何が起こるかわからねぇ。ある程度距離が離れた所を航海していたとしても、嵐なんかでグリマレオン海域に引きずり込まれることもあるって話だ」
男店主は健康的だった日に焼けた顔を、みるみる青い顔に変化させる。
船旅をする者だからこそ、その恐怖が実感できるのだろう。
「嵐……。そんなこともあるんだな……」
「ああ、そうだ……。イルディセリナ商会の会長は、既に何度かグリマレオン海域に船を出している。でも戻ってきた船がないとも聞いている。困ってはいるだろうな……」
男店主は辛そうな顔をする。
「そんな状態なんだな……。話を聞かせてくれてありがとう。イルディセリナ商会の場所を教えてもらってもいいか?」
「おいおい、兄ちゃん。こんだけ話したのに、つれねぇじゃねぇか。こういう時は何か買っていくもんだろ?」
男店主の表情は一転して、ニカっと歯を見せて笑う。
「それもそうだな。じゃあ、ここにある綺麗な貝殻のネックレスを四つもらえるか?」
俺は小さな貝殻が一つ施されているネックレスを指さす。
美しい貝殻であり、陽の光をエメラルドの輝きにて反射している。
「まいどあり! 四つってことは後ろにいる美人さん達にもプレゼントするってことか?」
男店主はニヤニヤと笑いながら話す。
「そういうこと。たまには、ご機嫌取っとかないとな……」
俺は小声で呟く。
「おーい。ヴェル殿。アタシには聞こえてるぞ?」
シェリナが言葉を飛ばしてくる。
忘れていた……。エルフは耳が良いんだった……。
「え? 店主と話してただけだぞ? 何でもないよ」
俺は笑顔を作る。
きっと引きつってる笑顔だろうが……。
「ほい。ネックレスだ。イルディセリナ商会はあっちだ。このまま歩いていけば看板があるから、それでわかるだろう」
男店主は貝殻のネックレスを渡した後、イルディセリナ商会の方向を指さす。
「ありがとう、おっちゃん」
俺は礼を伝え、仲間のもとへ戻る。




