第74話 今後の方針
「なっ……! 勇者がそんなことしてたのか⁉ なんのために⁉」
シェリナが驚きながら、聞いてくる。
「オーレンは魔王軍四天王の眷属になっていた。詳しいことはわからないが、戦って敗北したみたいだ……」
「それで、無理やり従わされていたということですか?」
ルクスハートが悲しみの混じる声で尋ねる。
「……いや、そうじゃないと思う。オーレンは俺に対する憎悪だけしか感じなかった。もちろん操られていた可能性もあるが、あの感じは本性のオーレンなんだと思う……」
俺は自分で言いながら、辛い気持ちになってくる。
「そんな……。勇者パーティーにいる時にもひどい扱いをしていたのに、まだ、恨みがあったということですか⁉」
ルクスハートは怒りの表情をみせる。
「俺にもよくわからないんだけどな……。勇者パーティー、ルミナス・ブレイヴがおかしくなったのは、俺がパーティーを抜けたからだと言っていた。まあ、『俺がルミナス・ブレイヴの幸運を奪っていった』とかいう言いがかりでしかない理由だったがな……」
俺の声はだんだんとボリュームダウンしていく。
「……でも、ヴェル様……お辛そうな顔です」
ルクスハートが俺の顔に手を添えて、真っ直ぐ見つめてくる。
「……元々いたパーティー。しかも勇者が悪に堕ちていた……。その理由に俺が関係しているとあれだけ言われたら、気にもなってしまうよ……」
俺は自分で思っている以上に、責任を感じてしまっているのかもな……。
「ヴェル様…………。ヴェル様は何も悪くないです! 今までも困ってる人達を救ってきました。そのうちの一人が私です!」
ルクスハートは真剣な眼差しだ。
「そうだよ。その勇者の言うことなんて気にするな。アタシも助けられたうちの一人だ!」
シェリナがルクスハートに続く。
「セラも! セラも!」
セラが手をあげる。
「……ははは。ありがとな。みんながそう言ってくれると、俺も自分が間違ったことをしてないって思えるよ」
俺は声を上げて笑う。
「ふふ。ヴェル様が元気になってくれてよかったです」
そう言い、ルクスハートは俺の顔から手を離す。
「そうだなぁ。これからの動きも考えないとな……」
俺は呟く。
「というと?」
シェリナが尋ねてくる。
「勇者のオーレンが悪に堕ちていた。そして、俺がオーレンは滅した。現状勇者が存在しないんだ。まあ、言い伝えでは勇者はこの世に必ず一名存在することになるらしいから、そのうち新たな勇者が出てくるとは思うけどな。勇者の左胸には紋章が浮かび上がる」
俺はオーレンが自慢げに見せてきた紋章を思い浮かべる。
思い出しても腹立ってくるな……。
「つまり、勇者不在の世界で誰が魔王軍と戦うか……ってことか……」
シェリナが俺の考えを先読みするように言葉を紡ぐ。
「そういうことだ。今までにも、魔王軍と戦うことはあったけど、あくまで不浄で困ってる人を助ける、ということを目的に動くなかでぶつかっただけだからな。……勇者の代わりか…………」
俺は押し黙る。
「ヴェル様なら、なれますよ! って勝手なこと言っちゃダメですよね……。ごめんなさい」
ルクスハートが明るい声を出した後、身勝手を言ってると気付いたように謝る。
「セラもヴェル様なら、勇者なれる思う!」
セラが無邪気にルクスハートに同意する。
「……ありがとう。……もし俺が、魔王軍と戦うために旅をするって言ったら、みんなはどう思う?」
俺は全員の顔を順番に見ていく。
「私はどこまでもお供しますよ! そう決めて村を出ましたから!」
ルクスハートは覚悟の宿る瞳で応える。
「セラも……ヴェル様と一緒にいます! セラが……ヴェル様を守ります!」
セラはどことなく大人びた顔つきだ。
「アタシも一緒に行くよ。魔王軍が諸悪の根源であることは間違いないからね」
シェリナは力強く言葉にする。
「わかった! これからは、魔王を倒すために旅をしよう。より一層厳しい旅になると思うけど、一緒に来てくれ!」
俺は立ち上がる。
「もちろんです!」
「セラも!」
「アタシもだ!」
全員が同意してくれる。
俺は良い仲間に恵まれたよ……。
「面白かった!」
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