第73話 勇者と未来
俺は村に戻る。
「ヴェル殿! 腹を怪我してじゃないか!」
シェリナが焦った声を出す。
「ヴェル様……大丈夫……?」
セラが心配そうな顔をする。
「ヴェル様! すぐに回復させます。《ヒール》……!」
ルクスハートが回復魔法を使ってくれる。
温かな感覚と共に、痛みがひいていく……。
「……ありがとう。ルクスハート」
俺はルクスハートに礼を伝える。
「いえいえ、大丈夫です! ひどい怪我でしたけど、苦戦したのですか?」
ルクスハートが俺の目を見て質問してくる。
「苦戦……。そうだな。苦戦したよ……」
俺は複雑な気持ちで回答する。
村人の一人が声をかけてくる。
「あんた! あ、いや、ヴェル様! 村を救ってくださってありがとうございます! ……あと、今までの俺達の言動をお許しください……。闇に困っていたとはいえ、村に寄ってくださった方に対する言動ではありませんでした。すみません!」
村人が深々と頭を下げる。
「申し訳ございません!」
他の村人達も続いて、頭を下げる。
「ああ、いいよ。気にしないでください。急にこんな状況になったら、焦る気持ちもわかりますから……」
俺は努めて穏やかな声を出す。
「その……あいつはどうなりましたか? オーレンは……?」
村人が尋ねる。
「オーレンは……。邪悪な存在だと判断して、滅した……」
俺は短く返答する。
「そうですか……。ありがとうございます! 勇者の名をかたる邪悪な者でしたから、当然だと思います!」
村人の声が少し明るくなる。
「オーレンは……」
俺はそこまで口にして、続きを言うのをやめた。
オーレンが実は勇者だったなどということは、村人……いや、ここノクシェルド大陸の人間にとっては絶望でしかないだろう……。
勇者の不在……。ノクシェルド大陸の未来を思うと、憂鬱になってしまう……。
「ヴェル様は、村を救ってくれた英雄です! 村で休んでいってください! 宿代も必要ありませんので!」
村人が笑顔を見せてくれる。
「ああ……ありがとう」
俺は沈む気持ちを抑えながら答えた――。
◇◇◇
俺は村から離れて、草原に一人でいた。
「はぁ……。オーレンがろくでもない奴だとは思っていたが、まさか魔王軍四天王の闇の眷属になってるとはな……。勇者の名が聞いてあきれるよ……」
俺は嘲るように笑う。
ああ、考えるのも面倒になってきたな……。
俺は草原に寝転がる。
「眠ってる間に世界が平和になってくれたらいいのにな……」
俺は呟く。
すると、上から声が聞こえてくる。
「ヴェル様が弱音を吐いているところって、初めて見たかもしれないです」
ルクスハートが優しげな笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「セラ……ヴェル様心配……」
セラは不安の色が混ざった表情をしている。
「話してくれよ。何があったのかを」
シェリナが短く、しかし明瞭に言葉を発する。
「みんな……探しにきてくれたのか……? …………村を闇で覆っていたのは……勇者オーレンだった……」
俺は低い声で呟く。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
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