第72話 オーレンとの決着
「ビビってんじゃねぇよぉ! 能無しぃ! 《黒炎球》……!」
オーレンは巨大な黒炎の球を、剣を持たない手から放出する。
「《腐乱の刃》!」
俺は身体中から、《デコンポズ=エッジ》を放出し、《ブラックファイア=スフィア》を切り刻み霧散させる。
「は! そこそこやるじゃねぇか! でも、お前は近接戦闘が苦手だったよなぁ!」
オーレンは一気に距離を詰めてくる。
「《呪詛強化》……」
俺は呪いにより、身体能力を上昇させる。
そして、オーレンと互角以上に斬り合う。
「な、なぜだぁ……! 近接戦闘はできなかっただろ! 能無しぃぃいい!」
オーレンは怒号を上げる。
「あの頃とは経験してきたことが全然違うんだよ。今の俺とお前じゃレベルが違い過ぎる」
俺はショートソードでの一撃を放つ。
「《闇の盾》……!」
オーレンは全力と思われるシールドを張る。
しかし、オーレンの努力もむなしく、俺の斬撃は《ダーク=シールド》を簡単に破壊し、オーレンを五メートルほど吹き飛ばす。
「う、嘘だ……。嘘だぁぁあああ! こんなこと……。こんなことあっていい訳がねぇぇえええ!」
オーレンは半狂乱で叫ぶ。
「これが現実だよ。オーレン。レベルの差が出た。ただ、それだけだよ……」
「うっ……。俺は能無しを……ヴェルを連れて帰らねぇと殺される……。嫌だ……死にたくない……死にたくねぇよ、俺……!」
オーレンはガクガクと震え始める。
俺はオーレンの肩に手を置く。
「オーレン、勝敗はもう明らかだ。村にかけてある闇魔法を解け。あと、リュミセルダの居場所を教えてくれ。俺が倒してくる」
俺はオーレンの目を真っ直ぐ見る。
「ヴェ……ヴェル……お前……まさか、俺のために……?」
オーレンの目に涙がうっすら浮かぶ。
「別にお前のためだけじゃない。リュミセルダはお前のように、人の心を利用して悪事を行っているのだろう……? 俺はそれを止めたいだけだ……」
「うっ……ぐっ……。ヴェル……俺はお前にひどいことをたくさんしてきた……。それなのに許してくれるっていうのか……?」
オーレンは今にも泣きだしそうな顔をしている。
「……許さない。けど、これ以上叩きのめそうとは思わない。これから、まっとうに生きるなら……」
「ヴェル……。すまないぃぃ。俺は……俺は…………」
そこで、急にオーレンの言葉が途切れる。
「ぐっ……。ご……は……。リュミ……セルダ……。遠隔で…………」
そのまま、オーレンは倒れ込む。
「おい! おい、オーレン! しっかりしろ!」
俺は何度もオーレンを揺さぶる。
「俺……死……ぬ……。居……場所。……グリマレオン……海域…………」
オーレンは静かに目を閉じる……。
「おい! オーレン! …………ふざけるなよ、リュミルダ……! 用済みになったら、殺すのか……! 俺はお前を許さない……! 必ず、倒しにいくぞ……!」
俺は叫びを上げる。
「…………なーんちゃって」
俺の腹に深々とオーレンの剣が突き刺さる……。
「お前……今までの……演技だったのか…………?」
「能無しはやっぱり、能無しだなぁぁあああ! 何油断してんだよ⁉ このまま黒炎で焼かれろ……! 今すぐ自分が悪かったと認めるなら、最低限の痛みにしてやるよ……!」
オーレンは魔物のような顔で俺を見下ろす。
「……オーレン……。お前はもうダメだ……。俺も本気でいく……。《合成呪法》《ポイズン×カース》――不浄人」
俺の体色は毒の紫と呪いの黒が斑に入ったものに変わる。
「な、なんだ……その姿……」
オーレンは驚愕して立ち尽くしているようだ。
「……お前を不浄とみなして、滅する」
俺はショートソードに猛毒と呪いを纏わせる。
「ま、待て待て待てぇぇえええ! お、お、俺が悪かった! ヴェル、俺達元パーティーメンバーだよな? 許してくれ……。俺も魔が差しただけなんだぁぁ……!」
オーレンは頭を下げて懇願する。
「黙れ……不浄野郎……。不浄を滅するのが俺の使命だ……。《スラッシュ=ポイズン&カース》……!」
俺の放った猛毒と呪いの巨大な斬撃はオーレンを飲み込む。
「ぐぎゃぁぁぁああああ……!」
オーレンの叫びは途切れた。
「オーレン……お前には失望したよ」
俺は一人呟く。
村を覆っていた闇は一気に晴れていく――。
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