第61話 儀式
セラは俺の肩からぴょんと飛び降り、すぐさま詠唱する。
「セイントロア……!」
聖なる咆哮が空気を揺らす。
地響きが聞こえてくる。
俺は振り返らず、目の前の敵に集中した。
「まずは、巻き込まれてる村人がいないか、確認する。《ハイパーアブゾーブ》……!」
俺は身体中に不浄をどんどん吸収していく。
「ぐぎゃぁあああ」
魔物達のうめき声が上がる。
しかし、魔物達も当然、攻撃をしてくるため、ショートソードで攻撃を逸らす。
このレベルの敵なら、回避に集中しながら、《ハイパーアブゾーブ》を使っていれば、問題はなさそうだ。
――俺は《ハイパーアブゾーブ》でゾンビを優先して吸収していく中で気づいた。
「なんだ……? この中には村人は混ざっていないようだな」
瞬間、俺の脳裏に想像したくないことがよぎる……。
「……まさか……! 魔法陣の方のゾンビが村人なのか……!」
俺は魔法陣の方に目を向ける。
するとそこには、デュラハンがゆっくりと動き出そうとしている姿があった。
「おい……! ふざけるなよ……! 命を何だと思ってやがんだ……!」
俺は怒りで身体中の血液が沸騰しているような感覚になる。
更に「きゃぁああ!」という叫び声も聞こえてくる。
そちらを見ると、セラが黒ミイラに強烈な殴打を受けている姿が映った。
「セラ……!」
俺は叫ぶ。
「ぐぉぉぉ……」
俺の真後ろには魔物達が迫ってきている。
「クソッ……! 《腐乱の風(デコンポズ=ウィンド)》……!」
俺が一気に解き放った《デコンポズ=ウィンド》は、魔物達を腐乱させ朽ち果てさせた……。
――考えている暇はない……。
どのみち儀式を中断させるには、女を止めないといけない。
「セラ!」
俺は駆け出す。
セラの元に辿り着くと、セラは黒ミイラに包帯で首を絞められていた。
「おい……包帯野郎……。セラをはなせ……」
俺は黒ミイラを眼力で殺せるほど睨み付ける。
「ぐぉぉぉ……。ご主人の邪魔する奴……殺す……」
黒ミイラは相変わらず、ぎこちない声を出す。
「俺も仲間を守るためだ。容赦はしない……。《呪詛強化》……」
俺は不浄宮の自動吸収をオフにし、《カースストレング》で身体能力を呪いにて強化する。
俺がショートソードを持ち突っ込むと、黒ミイラはセラを盾にするように構えた。
「下衆が……!」
俺が足に力を溜めていると、セラが動いた。
「…………セイント……噛みつき……。ガブッ……!」
セラは黒ミイラの包帯を手で持ち、刹那の隙に黒ミイラの腕に噛みついた。
「ごぉぉ……」
黒ミイラの意識が一瞬、セラに逸れる。
俺はそれを見逃さなかった。
「汚い包帯でセラに触れんな……」
俺の呪いを纏ったショートソードは黒ミイラの包帯を切断した。
「……がはっ……」
セラはむせながらも、その場から離れる。
「ここからは俺が相手だ。包帯野郎……」
俺は身体中から呪いが溢れるほどに、《カースストレング》を強化する。
「ごめんなさい……。セラ……セイントロアで攻撃したけど……黒い包帯の人に弾かれちゃった……」
セラが泣きそうな声で話す。
「謝らなくていい、強い敵なのはわかってた。その上で、任せてしまったのは俺だ。それにセラのおかげで、後ろの魔物達は倒せたからな」
俺はショートソードを構えながら、やや早口でフォローを入れる。
「少し、休んでろセラ。包帯野郎は俺が倒す……」
黒ミイラは強靭な包帯を鞭のようにしならせて攻撃してくる。
俺はそれらを見切り躱す。
「身体能力を呪いで極限まで上げた俺を甘く見るな……」
俺は包帯での攻撃をショートソードで弾き返しながら、距離を詰めていく。
途中で、セラを狙った包帯での攻撃もあったが、全て叩き切った。
「剣が届く所まで来たぞ……」
俺は片手で剣を横から振るう動作をする。
直後、黒ミイラの身体中から、包帯が散弾銃の如く飛び出てくる。
「《腐乱の刃(デコンポズ=エッジ)》……」
俺は剣を握っていない手から、《デコンポズ=エッジ》を暴風の如く発生させる。
飛ばしてきた包帯諸共に、黒ミイラを八つ裂きにする。
「俺の武器は剣だけじゃない……」
俺は更に前に進んでいく。
「面白かった!」
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