第56話 貿易都市ザンドクルへ向け出発
俺達は四人で旅をすることになった。
「そういえば、この後はどこに向かうんだ?」
シェリナが尋ねてくる。
「貿易都市ザンドクルだ。南に歩いて、最短でもあと七日はかかると思う」
俺はシェリナの方に身体を向けて答える。
「やっぱ、旅となると結構時間かけながら移動するんだな。にしても、貿易都市か……。アタシはエラリヘイムをほとんど出たことがないから、楽しみだよ」
シェリナは無邪気に笑う。
「きっと、色んなものもあるし、色んな人もいると思う。俺も楽しみだよ」
俺も笑みを返す。
「ヴェル様! 美味しいものある?」
セラが目を輝かせて聞いてくる。
「ああ、きっと色んな食べ物があると思うぞ」
「セラ……楽しみ! 楽しみ!」
セラはぴょんぴょん飛び跳ねる。
「美味しいもの食べような。……そうだ。シェリナには改めて伝えておくな。俺はヘブンススキルの不浄宮で不浄を吸収、使用することができるんだ。その能力を使って、不浄で困っている人を助けて回りたいと思って旅をしてる。だから今回、貿易都市ザンドクルに寄るのは情報収集のためなんだ」
「なるほどね。貿易都市なら、情報が集まりやすいと思った訳だ。了解した」
シェリナは納得したような顔をしている。
「よし! 心強い仲間も増えたし、どんどん進もう……!」
俺は仲間が増えた心強さを感じながら、足を踏み出した。
◇◇◇
シェリナの援護射撃があることで、魔物を倒す負担がかなり減った。
射手がいることでここまで変わるとは思っていなかったので、正直驚いている。
全員、エラリヘイムでの戦いを経て、レベルが上がっていることもあるだろう。
遭遇する魔物に苦戦することはなく進んでいけた――。
◇◇◇
三日歩いて、辿りついた街にて。
「ついに街だな! ここでは宿に泊まるのか? 私はエラリヘイムでも夜の見回りもしてたから、野宿でもそこまで苦労は感じないけど」
シェリナが純粋な疑問を口にしたようだ。
「街や村に着いたら、基本は宿に泊まるよ。しっかり休んで、動ける身体を維持しないといけないしな」
俺は軽く微笑みながら、言葉を返す。
「なるほどな。……実は、宿に泊まること自体、初めてだから、ワクワクするよ」
シェリナの顔には楽しみだと書いてある。
普段はクールな印象だが、案外子どもっぽいところもあるのかもしれないな。
街の宿屋にて。
俺達はご飯を食べていた。
「シェリナが仲間になってくれたおかげで、魔物との戦闘が相当楽になったよ! 助かる!」
俺は大サソリの寄せ鍋を食べながら話しかける。
なんだコレは……。美味い……!
「そうですね。シェリナさんの援護射撃があるおかげで、魔物に隙を見せることが減って、すごく戦いやすいです!」
ルクスハートがシェリナに笑顔を向ける。
「シェリナお姉ちゃん……すごい! すぐに魔物に矢を当ててる! 魔法も使えるのも……すごい!」
セラが興奮気味に話す。
「おいおい。そんなみんなして、アタシのこと褒めないでくれよ。照れちまうじゃないか。まあ、弓はかなりエラリヘイムで練習してたからな。……ん? なんだこりゃ。この大サソリ美味すぎないか……?」
シェリナは照れた顔をした後、大サソリを食べてほっぺが落ちそうな顔をしている。
「たしかに、美味いよな! この大サソリの寄せ鍋! 出汁がきいてて美味い!」
俺もシェリナに同意する。
「おいし! おいし! もっと食べたいです!」
セラがおかわりを要求する。
「セラちゃんはまだまだ成長期ですからね。もう一つ頼んじゃいましょうか」
ルクスハートが俺の方を見る。
「おう。みんなもまだ食べれそうだよな。二人前追加で頼むか~」
俺は全員の顔を見る。
「さんせーです!」
セラが最初に答える。
「アタシも賛成だ。もう少し食べたいな」
シェリナもまだ食べたいようだ。
その後ルクスハートが、店員に声をかけ、追加オーダーをする。
「そういえば、シェリナの魔法は五属性あると思うけど、戦闘中にも使ってたよな? 火水雷風木の全て戦闘でも使えるレベルなのか?」
俺は戦闘中のシェリナのことを思い出し、尋ねる。
「アタシは魔法適性が結構高いんだ。戦闘でも、中級魔法くらいまでなら全部使える。ただ、一番得意なのは木属性魔法だな。この矢もアタシが自分で作ってる」
シェリナはそう言い、魔導弓の矢を一本見せてくる。
「へ~。自分で矢を作れるなら、ルグドの節約になるな……」
俺は感心したような声を出す。
「ヴェル様は本当に、ルグドに目がないですね……。倹約家とも言えますが……」
ルクスハートはジトっとした目で俺を見てくる。
「ルクスハート……ルグドは大切だぞ……? こうして宿に泊まれるのもルグドのおかげなんだからな」
俺は少しムキになって答える。
「わかってますよ。ヴェル様は先のことまで考えてるってことですね」
ルクスハートはどこかいたずらっぽく微笑む。
「そういうことだ……!」
俺はやや語気を強める。
「ふっ……。相変わらず仲が良さそうだな。全くうらやましいよ……」
シェリナはどこか遠くを見るような目をする。
「シェリナもこれから、仲良くなっていけばいいさ」
俺はシェリナを真っ直ぐ見つめる。
「……まあ、そうだな。これからよろしくな」
シェリナが手を差し出してきたので、俺は握手をする。
そこへおかわりの鍋がやってくる。
「さあ、いっぱい食べてゆっくり休むぞ!」
俺が号令をかけ、四人で大サソリの寄せ鍋を食べていく――。
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