第5話 旅の目的
「私は信じますよ! ヴェル様なら、困った人をたくさん助けられるって!」
ルクスハートは笑顔で俺の手を握る。
温かい。まるで、ルクスハートの心根が反映されているようだ。
「……そうか。そうだよな。勇者が頼りにならないなら、俺が英雄になるほど人を助ければいい……! ルクスハートさん、ありがとう。俺の今後の目的ができた。俺はできるだけ人を助ける。そうすることが人々の笑顔に繋がる」
それに、結果的にあいつらへの意趣返しにもなるしな……。
俺は軽く笑む。
「とてもいいことだと思います! さあ、村へ帰りましょう。みんなきっと待ってくれてます」
ルクスハートは俺の手を引く。
「ああ、帰ろう。それと、寒いだろう? マントを貸すから羽織っておくといい」
俺はマントを脱ぎ、ルクスハートに羽織らせる。
「あ……ありがとうございます!」
ルクスハートは俯きつつ、顔を赤くする。
「あ、すまない。もしかして、不浄が気になったりするか? 自然と不浄を集めてしまうヘブンススキルなんだ……」
俺はシスターであるルクスハートが、一般人よりも不浄に敏感で嫌がるのではないかと思い、急いで声を出す。
「いえ、そんなことないです! 温かくて、優しい匂いがします……」
ルクスハートはマントの端を大事そうに握る。
「そ、そうか……? だといいんだが」
つい先日、聖女リサに嫌がられていたから、聖職者であるシスターに過剰な苦手意識を持ってしまっていたのかもしれないな、と思いなおした。
◇◇◇
村に帰ると村人達が泣いて喜びながら、出迎えてくれた。
ルクスハートがどれほど慕われているかが、一目でわかった。
そこからは、飲めや騒げやの宴が始まった。
今思えば、俺は丸一日ぶりの食事だ。何を食べてもすごく美味しい。
肉を頬張っていると、隣にルクスハートがやってきた。
「ヴェル様、本当にありがとうございました。ヴェル様のおかげで、私はもちろん、この村は救われました。毒沼を消してくださったので、農作物も育ちやすくなると思います。どう感謝を示せばよいか……」
ルクスハートは深々と頭を下げる。
「いいよ、気にしないで。ルクスハートさんのおかげで、今後の目的もできたし、俺もお礼を言わないといけない。ありがとう」
俺はルクスハートの目を真っ直ぐ見て、礼を伝える。
「そ、そんな……。私は勝手に思ったことを伝えただけです……」
ルクスハートは恥ずかしそうに、顔を赤らめる。
「ヴェル様はこれから、困った人を助けるために旅をするのですよね? その……もしよろしければ、私も連れていってはくださいませんか?」
ルクスハートは芯のある瞳で言葉を紡ぐ。
「え? ルクスハートさんを旅に……? それはあまり、オススメできない。俺のヘブンススキルは周りの人を巻き込んでしまうことが多い。それに、この村でのシスターの職務もあるだろう?」
俺は思っていることを正直に伝える。
「シスターはこの村に他にも二人います。なので、大丈夫です。ヴェル様の不浄の力に関しては、シスターとして修行をしているので、そこまで影響はありません。直撃するような、ことをされてしまうと流石に厳しいですが……」
言われてみれば、かなり近くで俺とヒュドラの戦いをルクスハートは見ていた。
それでも、体調不良などになっている様子はない。
シスターとしてのレベルも高いようだ。
「人を傷つけるような能力の使い方はしないよ。でも、旅は過酷なものだ。魔物との戦闘も避けられないだろう。冒険者の俺が言うのもおかしな話だが、勧められるものじゃない」
「私、結構力持ちなんです! だから、きっとお役に立てます!」
ルクスハートはそう言うと、近くにあった岩を持ち上げてみせる。
周りにいた村人が、わーっと盛り上がる。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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