第4話 不浄無双
「小童が……! 八つ裂きにして喰らってやる……!」
ヒュドラは七つの頭から毒のブレスを吐く。
「毒は効かない……。《吸収》……!」
俺の身体中に降り注いだ、毒のブレスはどんどん俺自身に吸収される。
「なっ……。毒が効かないのか……。小童、貴様本当に人間か……⁉」
ヒュドラが驚嘆を漏らす。
「人間だよ……。不浄が相手だったら、負けない……!」
俺は毒沼を駆ける。そして先ほど吸収した毒のブレスを〝呪いへと変換〟する。
「もう一回、喰らえ! カースショット!」
俺は両手で呪いの砲丸を放つ。
しかし、ヒュドラは頭をずらし、躱す。
「その程度の範囲の技、躱せば問題ないわ!」
ヒュドラは高速で尻尾を鞭のように振るい、俺を吹き飛ばす。
「ぐっ……。やっぱり、肉弾戦じゃ勝てないよな……」
俺のステータスは冒険者の中でも平凡だ。むしろ、低い位置にいると言ってもいい。
だが、俺の武器は身体能力じゃない。
特に今のように〝不浄に満ちた〟環境でこそ真価を発揮する……!
「ちょうど、腹減ってたんだよ。いくぞ。《超吸収》……!」
俺は毒沼に手をつける。そして一気に、毒を吸収していく。
毒沼が俺を中心に縮小していく。
「な、なんだ、その技は……。魔法などではない……『呪法』か……⁉」
ヒュドラが大声を上げる。
「棲み分けで言えば、そうなるかもな。……ごちそうさま。毒の不浄が身体から溢れるほど貯めれたぜ……」
俺は毒々しい薄紫の不浄を纏う。
「物理攻撃は効くのだろう! 咬み殺してやる……!」
ヒュドラが一気に距離を詰めてくる。
「遅いよ……。《変換――呪い》。《四方呪滅》……!」
俺は毒を呪いに変換し、ヒュドラを四角形に取り囲むように、呪法を発動する。
ヒュドラは呪いの渦に巻き込まれていく。
「グギャァァアア! この私が、人間如きに…………」
ヒュドラは完全に呪われ、地に伏す。
元々、紫の体色をしていたが、現在は黒一色だ。
「悪いが、このままお前を吸収する。完全な不浄と化した者ならば、存在そのものを吸収して自分の力にできるからな……」
俺はヒュドラに触れゆっくりと吸収していく。
己の血肉とするように……。
◇◇◇
しばらくすると、ルクスハートが飛んできた。
「ヴェル様、すごいです! 私感激しちゃいました!」
ルクスハートは走り込んだ勢いのままに俺に抱きつく。
「ちょ、そんな格好で抱きつかない方がいい……。その……色々危ない……」
俺は顔を赤らめつつ、ルクスハートの肩を持ち、少しばかり離す。
「あ……! 私としたことが……。大変失礼しました……」
ルクスハートも今の状況を理解したようで、頬を桃色に染めて一歩後ずさりする。
どのみち、服装が非常に扇情的なため、煩悩は働いてしまうが……。
「ヴェル様、ありがとうございました。今日死んじゃうかもしれないと考えると、本当は怖かったんです……。ヴェル様は私にとっての勇者様です!」
ルクスハートは太陽のような笑顔を向けてくる。
「そんな……。俺は勇者なんかじゃない。それに勇者は……あいつらは……」
俺はそこで言葉を切る。
「……呼び方なんてどうでもいいです。私にとってあなたは英雄です。あなたなら、救世の英雄になれる……。そんな気がするんです!」
ルクスハートは興奮気味に話す。
「救世の英雄……ね……。そんな大層なもんじゃないよ、俺は……」
そう言いつつも、俺はヒュドラを吸収したことで、着実に強くなっている自分に気づいていた。
今までは勇者パーティーで不浄を吸収し、荷物持ちをすることがほとんどだった。
なぜなら、俺の呪法を使うと、パーティーメンバーにも呪法の効果が出てしまい、結果迷惑をかけることになるからだ。
そう考えると、レベル上げ自体をほとんどしていなかったことに気がつく。
今の俺なら、やれるのか?
クソみたいな勇者の代わりに世界を救うということが……。
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