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第4話 ヒュドラとの戦闘

 毒沼に着くまで、俺はルクスハートの数十メートル後ろから追従した。


 ヒュドラが現れたら、不意打ちをするためだ。


 そして、ルクスハートは毒沼に到着する。


 すると、九つの頭を持つドラゴンのような怪物が現れた。


「前に伝えた通り、穢れなき乙女だな。美味そうだ……。たっぷり可愛がった後に喰らってやろう」


 ヒュドラは目を細めつつ、ルクスハートに近づいていく。


「《呪砲撃カースショット……!》」


 俺は不浄宮ふじょうきゅうの技、カースショットを両手で放つ。


 カースショットはヒュドラの二つの頭に命中する。


 俺のヘブンススキル《不浄宮》は不浄を吸収、そして使用することができる能力だ。


 不浄とは、呪いや毒、穢れ、腐乱、瘴気などだ。


「人間……! 貴様、我を殺しにきたか……。不快な技を使いおって……!」


 ヒュドラが怒りの咆哮を上げる。


「九つも頭があると、厄介だな。不意打ちで二つしか呪えなかった。ここからは、真正面からの勝負だ……!」


 俺はルクスハートの前に出る。


「ルクスハートさんは隠れててください。あなたを守りながら戦うのは難しい」


「わかりました。どうかお気を付けて……」


 ルクスハートは小走りで森の方へ移動する。



小童こわっぱが……! 八つ裂きにして喰らってやる……!」


 ヒュドラは七つの頭から毒のブレスを吐く。


「毒は効かない……。《吸収アブゾーブ》……!」


 俺の身体中に降り注いだ、毒のブレスはどんどん俺自身に吸収される。


「なっ……。毒が効かないのか……。小童、貴様本当に人間か……⁉」


 ヒュドラが驚嘆を漏らす。


「人間だよ……。不浄が相手だったら、負けない……!」


 俺は毒沼を駆ける。そして先ほど吸収した毒のブレスを〝呪いへと変換〟する。


「もう一回、喰らえ! カースショット!」


 俺は両手で呪いの砲丸を放つ。


 しかし、ヒュドラは頭をずらし、かわす。


「その程度の範囲の技、躱せば問題ないわ!」


 ヒュドラは高速で尻尾を鞭のように振るい、俺を吹き飛ばす。


「ぐっ……。やっぱり、肉弾戦じゃ勝てないよな……」


 俺のステータスは冒険者の中でも平凡だ。むしろ、低い位置にいると言ってもいい。


 だが、俺の武器は身体能力じゃない。


 特に今のように〝不浄に満ちた〟環境でこそ真価を発揮する……!


「ちょうど、腹減ってたんだよ。いくぞ。《超吸収ハイパーアブゾーブ》……!」


 俺は毒沼に手をつける。そして一気に、毒を吸収していく。


 毒沼が俺を中心に縮小していく。


「な、なんだ、その技は……。魔法などではない……『呪法じゅほう』か……⁉」


 ヒュドラが大声を上げる。


み分けで言えば、そうなるかもな。……ごちそうさま」


 俺は不敵な笑みを浮かべる。


「物理攻撃は効くのだろう! 咬み殺してやる……!」


 ヒュドラが一気に距離を詰めてくる。


「遅いよ……。《変換――呪い(コンバートカース)》。《四方呪滅カーススクエア》……!」


 俺は毒を呪いに変換し、ヒュドラを四角形に取り囲むように、呪法を発動する。


 ヒュドラは呪いの渦に巻き込まれていく。


「グギャァァアア! この私が、人間如きに…………」


 ヒュドラは完全に呪われ、地に伏す。


 元々、紫の体色をしていたが、現在は黒一色だ。


「悪いが、このままお前を吸収する。完全な不浄と化した者ならば、存在そのものを吸収して自分の力にできるからな……」


 俺はヒュドラに触れゆっくりと吸収していく。


 己の血肉とするように……。


 ◇◇◇


 しばらくすると、ルクスハートが飛んできた。


「ヴェル様、ありがとうございます。本当にありがとうございます……!」


 ルクスハートは走り込んだ勢いのままに俺にぶつかる。


「ちょ、そんな格好で近づき過ぎない方がいい……。その……色々危ない……」


 俺は顔を赤らめつつ、ルクスハートの肩を持ち、少しばかり離す。


「あ……! 私としたことが……。大変失礼しました……」


 ルクスハートも今の状況を理解したようで、頬を桃色に染めて一歩後ずさりする。


 どのみち、服装が非常に扇情的せんじょうてきなため、煩悩は働いてしまうが……。


「ヴェル様、ありがとうございました。今日死んじゃうかもしれないと考えると、怖くて、怖くて……。ヴェル様は私にとっての勇者様です!」


 ルクスハートは太陽のような笑顔を向けてくる。


「そんな……。俺は勇者なんかじゃない。それに勇者は……あいつらは……」


 俺はそこで言葉を切る。


「……呼び方なんてどうでもいいです。私にとってあなたは英雄です。あなたなら、救世の英雄になれる……。そんな気がするんです!」


 ルクスハートは興奮気味に話す。


「救世の英雄……ね……。そんな大層なもんじゃないよ、俺は……」


 そう言いつつも、俺はヒュドラを吸収したことで、着実に強くなっている自分に気づいていた。


 今までは勇者パーティーで不浄を吸収し、荷物持ちをすることがほとんどだった。


 そう考えると、レベル上げ自体をほとんどしていなかったことに気がつく。


 今の俺なら、やれるのか?


 クソみたいな勇者の代わりに世界を救うということが……。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


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ヴェル凄いですね(๑°ㅁ°๑)‼✧ こんな能力があるのにパーティーを追い出されるなんて やっぱり酷いと思います ですが ヒュドラを吸収した事によってその力を得ることが 出来たようですね ここからがヴェ…
単体でヒュドラを倒すとは! こんな優良の人材追放したのは馬鹿すぎる。 いずれ来るだろう、ざまぁ展開が楽しみです。 面白かったので、ブクマさせて頂きました。
Xの読みたいタグよりまいりました 全体的なテンポ感がよくサクサクと読むことが出来ました。 何故2年間も勇者パーティーで活動できたのか 主人公を失ったパーティはどうなってしまうのか そして何故あそこ…
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