第30話 穢された街 セリュカン
翌日の朝。
「よし! 行くか……! 穢れが溜まっている影響で病が蔓延している街だ。十分に気をつけていこう。俺の不浄宮で穢れを自動的に吸収はできる。それでも、ルクスハートとセラに穢れの影響が出る可能性は高い。街に近づいたら、ルクスハートは常に防護結界を張っていてくれ」
「わかりました!」
ルクスハートから返答がある。
「セラはルクスハートから離れないように。俺は多分動き回らないといけないからな」
「セラ……わかった!」
セラが敬礼のポーズをとる。
セリュカンに辿り着く。
明らかに異常な雰囲気だ。
穢れが漂い、空気が悪い。
俺ですら、穢れの濃さを意識してしまう。
「これは思った以上の状況だ……。街に入るが、気を抜くなよ……」
俺は二人の目を見る。
「わかりました」
二人の声もどこか緊張しているように感じる。
街には人が見当たらなかった。
「人がいないな。いや、家にこもっているのか……?」
俺は疑問を口にする。
「その可能性はありますね。病が蔓延しているとなると……」
ルクスハートが悲哀を含んだ声を出す。
「とりあえず、教会に向かうか。この状況で話せそうなのは、教会が最も可能性が高い」
俺はそう言い、教会へと向かった。
教会に着くと、中にはたくさんの人がいた。
「子どもの病を治してください! お願いします! 神父様!」
女性が悲痛な叫びを上げる。
「……申し訳ない。私の力ではこの病を治すことができない……」
神父は深々と頭を下げる。
「なんで! なんでよ! なんのために、あなたがいるのよ! この病は穢れが原因なんでしょ! 神父が治せないなら誰が治すのよ!」
女性が声を荒げる。
「そうだ、そうだ! どうすりゃいいんだ俺達は!」
周りにいた人も口々に言葉を出す。
俺は一気に神父の横まで駆け抜ける。
「みなさん、聞いてください! 俺は冒険者のヴェル。あなた達の病を俺のヘブンススキル不浄宮で治すことができるかもしれません! まずは、そこのあなた」
俺は先ほど叫んでいた女性の子どもへ手を伸ばす。
「息子の病を治せるの⁉」
女性は一縷の望みにすがるように、子どもを俺の前に連れてくる。
子どもは身体中が緑に変色しており、呼吸も浅い……。
「《吸収》……」
俺は右手をかざし詠唱する。
子どもの身体から、緑色の〝穢れ〟が表出し、俺の右手に吸収されていく。
だんだんと、子どもの皮膚は普通の色へと戻っていった。
最終的に、子どもが目を覚まし「お母さん!」と言い抱きつく。
「ありがとう! ありがとうございます! ありがとうございます! あなたは私の英雄です。ありがとうございます!」
女性は何度も何度も頭を下げる。
「いえいえ。俺も治すことができてよかったです」
周りにいた人々がざわつき始める。
この後の展開は大体予想がつく。
「俺も! 俺も治してくれ!」
「私が先よ! 早くして!」
俺の前に人が一気に殺到しそうになる。
バゴンッ!
教会に置いてあった机が破壊される音が響く……。
破壊したのはルクスハートの大斧だ。
聖職者として、その行為は良いのだろうか……。とは思ったが、今の状況を静めるには効果的だと思われる。
「みなさん! 落ち着いてください! ヴェル様はみなさんを治してくださいます! ここで混乱が起こると治療に遅れが生じます! 症状の重い人から順番に並んでください! 私が症状は診ますので!」
ルクスハートが声を張り上げる。
いつも思う。ルクスハートはここぞという時に頼りになるな。
そこからは、秩序を取り戻した人々が順番に並んでいった。
俺はひたすらにアブゾーブを発動し続けた。
限界値なんてきてくれるなよ……。そう願いながら……。
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