第3話 ヒュドラとの戦闘
教会にて。
「俺は冒険者でヴェルという名だ! ルクスハートさんはいますか?」
俺は静かな教会に響き渡るように声を出す。
「……ルクスハートは私ですが……? どうされましたか?」
ルクスハートがゆっくりと前に出てくる。
黒い修道服に身を包んでおり、ボブほどの長さの金髪が映えている。
混じりけのない緑の瞳は、全てを見透かすような、不思議なオーラを放っている。
鈴を転がすような声も可愛らしい。
「今晩あなたが今晩生贄になってしまうと聞いて……。俺でできることがあったら、力になりたい……!」
俺は語気を強める。
「……旅の方。お気持ちは嬉しいです。ですが、よいのです。私が自ら選んだ道ですから。それに、旅の方にご迷惑をかける訳にはいきません」
ルクスハートは悟ったような顔をして、言葉を紡ぐ。
「……俺は勇者パーティーにいた。不浄に対する能力も持っている。あなたの力になりたいんだ……!」
俺は正直、勇者パーティーにいたことを引き合いには出したくなかった。
だが、〝勇者パーティー〟という単語の持つ信頼感が圧倒的だということも身をもって知っている。
肩書きが利用できるなら、利用してやる……!
「勇者パーティー……! もしかして、あなたが勇者様なのですか?」
ルクスハートの瞳に希望が宿る。
「いえ、俺は勇者パーティーに所属していただけです。それも過去の話。二年間勇者パーティーにいた経験を活かしたい。どうか、俺にあなたを救わせてほしい……」
俺は正直なところ、ヒュドラを倒せる確信はなかった。
昨日に勇者から能無しの烙印を押されたばかりだしな。
それでも、この状況を見て見ぬふりなどできない。
「…………わかりました。ですが、ヒュドラは非常に強い魔物です。どうか、お気をつけください。あと、ヒュドラが毒沼に現れるのは夜の二十時となっています。私がその時間に行きますので……」
ルクスハートは覚悟を感じさせる声色だ。
「了解した。では、二十時前に合流して一緒にヒュドラのもとへ行こう。俺は隠れながら、追いかける。可能なら、ヒュドラに不意打ちをしたい」
俺はできる限り勝率を上げる方法を提案する。
「わかりました。では、二十時前に教会の前でお会いしましょう。どうか、神のご加護がありますように……」
ルクスハートは静かに祈る――。
◇◇◇
二十時前。教会の前にて。
「お待たせしました。ヴェル様。行きましょう」
ルクスハートは透けるような薄い布地の白布を纏っていた。
思っていたよりも大きい胸が強調されている。
それに、布の奥も見えてしまいそうだ……。
俺は煩悩の振り払うように、頭を二度振る。
「……行こう」
俺は短く答える。
毒沼に着くまで、俺はルクスハートの数十メートル後ろから追従した。
ヒュドラが現れたら、不意打ちをするためだ。
そして、ルクスハートは毒沼に到着する。
すると、九つの頭を持つドラゴンのような怪物が現れた。
「前に伝えた通り、穢れなき乙女だな。美味そうだ……。たっぷり可愛がった後に喰らってやろう」
ヒュドラは目を細めつつ、ルクスハートに近づいていく。
「《呪砲撃……!》」
俺は不浄宮の技、カースショットを両手で放つ。
カースショットはヒュドラの二つの頭に命中する。
俺のヘブンススキル《不浄宮》は不浄を吸収、そして使用することができる能力だ。
不浄とは、呪いや毒、穢れ、腐敗、瘴気などだ。
吸収の能力は常時発動しており、自身の周辺には常に不浄が集まっている。
「人間……! 貴様、我を殺しにきたか……。不快な技を使いおって……!」
ヒュドラが怒りの咆哮を上げる。
「九つも頭があると、厄介だな。不意打ちで二つしか呪えなかった。ここからは、真正面からの勝負だ……!」
俺はルクスハートの前に出る。
「ルクスハートは隠れててくれ。あなたを守りながら戦うのは難しい」
「わかりました。どうかお気を付けて……」
ルクスハートは小走りで森の方へ移動する。
「面白かった!」
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