第28話 温かい時間
その後、ルクスハートの作ったご飯を、俺達は食べ終わった。
「ご飯も食べて、休憩もできたし、そろそろ向かうか……」
俺は立ち上がる。
「そうですね。セラちゃん、しんどくなったら言うんだよ?」
ルクスハートがセラと手を繋ぎながら、話しかける。
「うん! セラ歩くのも走るのも得意! 大丈夫!」
天使のような笑顔でセラは答える。
◇◇◇
夜になり、野宿をすることになる。
「セラも……お料理手伝う!」
セラが料理を手伝ってくれる。
「セラちゃんは偉いね~。今日はモンバリス王国で食べて美味しかった、アルミラージのシチューだよ! 私流にアレンジしちゃうけど」
ルクスハートが食材を切っていく。
セラは隣でそれを見ていて、途中で声を出す。
「セラも……やってみたい!」
「ナイフで怪我しないように気をつけてね。怖かったら言ってね」
ルクスハートがまるで母親のように、セラのことを見守っている。
微笑ましい光景だ。
俺はその間にテントを張る準備、併せて、周囲に魔物がいないかを確認していた。
「できました! ヴェル様!」
セラが嬉しそうに俺を呼びにきてくれる。
「ありがとう」
目の前にはモンバリス王国で食べた、アルミラージのシチューが並んでいる。
正直、かなり美味しそうだ。
「お店の味を完全再現まではできないですけど、できるだけ近づけてみました。保存用に買ってたパンもあるので、食べましょう! セラちゃん、美味しいと思うから楽しみにしててね!」
ルクスハートが声をかける。
セラはというと、自分の分のシチューの匂いを至近距離で嗅いでいる。
俺は鼻がついてしまうのではないかと心配になった……。
「早速食べちゃいましょう! いただきます!」
ルクスハートの号令で皆がシチューに手をつける。
「こ……これ……すごく美味しい……」
セラがまるで天国にいるかのような、とろんとした顔をする。
そして、すごい勢いでシチューとパンを食べていく。
「ふふ。喜んでもらえてよかった……。おかわりもあるから、いっぱい食べてね」
ルクスハートが微笑む。
「うん!」
セラが無垢に返事をする。
「ヴェル様のお口には合いましたか……?」
ルクスハートがやや不安げに尋ねてくる。
「美味しいよ! ルクスハートは料理の才能もあるんだな!」
俺は素直に思ったことを伝える。
「……もう! 本当にお上手ですね……」
ルクスハートは顔を赤らめ、嬉しそうにしている。
「ルクスお姉ちゃん……料理お上手……!」
セラが目を輝かせながら言葉にする。
「あら、セラちゃん、褒めてくれるの? ありがとう~!」
ルクスハートはセラに抱きつく。
セラもとても嬉しそうにそれを受け入れている。
可愛らしい光景だ。
しばらくすると、不意にセラが俺の方にやってくる。
「ヴェル様も……!」
「ん? 俺も……?」
「ギューってしてほしい……です!」
セラが手を伸ばしてくる。
「……仕方のない子だな……」
俺はルクスハートがしていたように、セラを抱きしめる。
セラも俺のことを抱きしめてくる。
「えへへ。セラ嬉しい。父様と母様を思い出す」
セラはニコっと笑う。
「……そうか。俺達は両親の代わりにはなれない。でも、セラが少しでも喜んでくれるなら、俺達を両親のように思ってくれていい……」
俺はセラの頭をなでながら伝える。
「……ヴェル様……! 嬉しい!」
セラは俺に再度抱きついてくる。
「ヴェル様、さっきのお言葉ですが、まさか私とヴェル様が……そのぉ、結ばれるという解釈でよいのですか……?」
ルクスハートが顔を真っ赤にして、指先をいじりながら尋ねてくる。
「ん? ルクスハートと結ばれるとかそういう意味じゃないぞ……? 勝手に俺が決められることじゃないしな……」
俺は真面目なトーンで返答する。
「あ……なんだ。違うんですね……」
ルクスハートはうなだれる。
「すまない。不快な思いをさせてしまったか……?」
「いえ……いや、ある意味、期待を裏切られたといえば、不快ともいえますね……」
ルクスハートはどことなく、闇を纏っているような雰囲気だ。
正直、ちょっと怖い……。
「ああ……なんか、すまん……」
俺は思わず謝る。
「いえいえ、お気になさらないでください。勝手に私が盛り上がっていただけですので……」
ルクスハート……目が笑ってないよ……。
「ルクスお姉ちゃん、ヴェル様。喧嘩は……めっ!」
セラが俺とルクスハートの間に立ち、注意をしてくる。
「ああ、そうだな。喧嘩はよくない。な? ルクスハート……?」
俺はルクスハートの目を見据える。
「そうですね。ごめんね。セラちゃん。…………でも、いつかは本当に……」
ルクスハートは最後何かをぼそっと呟いた。
よく聞き取れなかったが……。
そんなこんなで、騒いでいるうちに疲れが出てきて、俺達は一緒にテントで眠った――。
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