第20話 王との謁見
翌日。
「おはようございます、ヴェル様。さっき店主さんから聞いたのですが、モンバリス城に朝のうちに来てほしいそうです」
ルクスハートが笑顔を向けてくる。
「わかった。すまない。ぐっすり眠ってしまっていた」
俺は何とかあくびをかみ殺す。
「いえいえ、私も少し前に起きたところですから。食事をとったら、モンバリス城に行きましょう」
◇◇◇
モンバリス城にて。
「救国の英雄ヴェル、ルクスハートよ。そなたらには感謝を伝えねばならぬ。この恩、王国の名において忘れぬ。よくぞ尽くしてくれた」
王は威厳のある声色で感謝を述べる。
「もったいなきお言葉。私もモンバリス王国に尽くせたこと、光栄に思います」
俺は普段使わないような言葉を使い、緊張感が増してくる。
「うむ……。そなたらの偉業をこの先、生まれ出る者にも伝えるため、銅像を建てよう」
「はい! ありがたき幸せ……」
俺は一瞬、また銅像か……と思った。だが、偉業として後世にも伝えてくれるとなると正直嬉しさが勝つ。
「……さて、サリラよ。褒美を……」
王はサリラに褒美を渡すように命じたようだ。
サリラから、見ただけでわかるほどパンパンに詰まった袋を渡される。
重い……。どれだけのルグドが入っているのだろう……?
「サリラより、冒険者だと聞いている。そなたさえよければ、王国騎士団に入らないか? そなたの才であれば、王としても心より歓迎するぞ」
「大変ありがたいお言葉です。……ですが、私には人生を懸けて行いたいことがあるのです」
「そうか……。何をしたいというのだ……?」
「私のヘブンススキルを使い、不浄で困っている人を助けて回りたいのです」
「何と……! 他者のためにその人生を使いたいということか?」
「そうです。……いえ、正確には違うかもしれません。私は人々が笑顔でいる姿を見るのが好きなのです。なので、ある意味、自分のためとも言えます」
「何と……何という、清き心……。余は感動したぞ! もし何か困り事や、頼み事があればいつでも言うがよい。モンバリス王として、最大限の助力をすると誓おう!」
王は感動しているのか、打ち震えている。
「ありがたきお言葉……」
俺とルクスハートはひざまずく。
◇◇◇
「いや~、緊張した~」
俺はモンバリス城から出て、やっと生きた心地になる。
「ヴェル様、そんな風には見えませんでしたけどね」
ルクスハートは隣を歩きながら、笑顔を見せる。
すると、後ろから声が聞こえてくる。
「ヴェル殿! ルクスハート様!」
この声はサリラだ。
「この度は本当に世話になった。直接、改めて礼を言いたくてな」
「わざわざ、ありがとう。こちらこそ、報酬たっぷりにしてもらって助かったよ」
俺はニコニコと笑う。
「もう! はしたないですよ、ヴェル様!」
ルクスハートが俺を注意する。
「それと、本当にもう行ってしまうのか……?」
サリラは名残惜しそうに言葉を紡ぐ。
「ああ、この辺りに不浄での困り事はなさそうだしな。俺の作った毒沼も、ちゃんと吸収しておいたし。……あ、もし生態系に影響が出ていたら、すまない」
「もし、そうなっていたら、時間をかけてなおしていくよ。……ヴェル殿に伝えておきたいことが一つある」
サリラは頬を赤くしつつ言葉にする。
「ん? なんだ?」
「その……一緒に戦場を駆け回ったのがとても刺激的だった。数々の戦場を生き抜いてきたが、今回のような気持ちになったのは初めてだ。……だから、その……また、モンバリスに寄ることがあったら、私のところにも来てほしい……」
サリラは度々視線を下げながら話す。
「わかった! もちろん行くよ!」
「そ、そうか! それはありがたい!」
サリラは少女のような無垢な笑顔を向けてくる。
そして言葉を続ける。
「あと、今後行く当てがないなら、西の街『セリュカン』に向かうといい。穢れが溜まっている影響で、病気が蔓延しているそうだ。ヴェル殿の助けを待っている人が多くいると思う……!」
「そうなのか。ありがとう! 実は、行先が決まってなかったんだ。……じゃあ、これでお別れだな」
俺は手を振る。
「ああ。ヴェル殿、ルクスハート様、達者でな」
サリラは大きく手を振る。
「サリラさん、ありがとうございました!」
ルクスハートが丁寧にお辞儀をして、歩き出す――。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




