第2話 最初の一歩
宿を出ると既に夜になっており、肌寒さを感じた。
「寒いな……。かといって、ルグドもないしな……。はぁ、今日は野宿だな」
俺は一人呟きながら、森の方に向かう。
せめて、テントでもあれば気持ちも違ったのだろうが、今は軽装の服にマントしかない。
マントまで奪われていたら、流石に風邪でもひいただろうか。
まあ、不浄宮の能力で、風邪の原因になるウイルスや菌は吸収してしまうので、風邪をひくことはないが……。
そんなことを自嘲気味に思いながら、木にもたれかかる。
「クソッ……。なんで俺がこんな目に遭ってるんだ。ふざけやがって……」
一人で文句を口にしながら、眠りにつく。
といっても、魔物が襲ってくる可能性もあるため、安眠には程遠かったが……。
◇◇◇
翌日。
「……あんま寝れなかったな……。まあ、木にもたれながら、周囲警戒して眠れっていう方が無理あるか……」
俺はガチガチに固まった筋肉を伸ばしながら、立ち上がる。
「さて、あいつらと鉢合わせするのは絶対嫌だし、とっとと出発するか。行先は……そうだな……」
顎に手を添えて考える。
「街に着く前に通りかかった村に行くか。あの村のすぐ近くには毒沼があった……。村人が困っている様子も遠目から見えたしな。オーレンは街を目指すから、村は無視するって言ってやがったな……。クソ勇者が……」
あの時のオーレンの顔を思い出し、苛立ちを吐き捨てる。
ぐぅ~とお腹が鳴ったが、手持ちのルグドもないため、とりあえず村を目指すことにした。
最悪、不浄をエネルギーとして使うこともできる。
……まあどのみち、腹は減るけどな……。
◇◇◇
二時間ほど歩き、村に到着した。
村からは異常な静まりを感じた。
なんだ? 人がいるのに、ほとんどの人が話していない……?
「おーい。冒険者なのだが、何かあったのか?」
俺は近くにいた老人に声をかける。
「今晩なのじゃよ……」
老人は消え入りそうな声で答える。
「今晩……? 何かあるのか?」
俺は疑問符を浮かべながら、問いかける。
「……毒の化身、ヒュドラの生贄を差し出すのが今晩なのじゃ……。あぁ……ルクスハート……。なぜ、こんな目に遭わないといけないのじゃ……」
老人は悲痛な面持ちで声を出す。
「ヒュドラ……毒沼の主か……。ルクスハートっていうのは?」
俺は先ほど名前の出た者について尋ねる。
「ルクスハートはこの村のシスターじゃよ。まだ、十八歳の若い娘じゃ……」
老人の瞳が潤んでいるように見える。
「十八……俺と同い年じゃないか。そんな娘が生贄に……。その娘はどこにいる? 教会か?」
俺はこの村そのもの、そして娘が自分と同じように、理不尽な目に遭っているのが、許せなかった。
俺がなんとかできるなら、力になりたい……!
「……教会におるよ……。じゃが、会ってどうする? 悪いことは言わん。この件は聞かなかったことにすればいい。ヒュドラは強力な魔物じゃ。以前にも傭兵団に討伐を依頼したが、返り討ちにされた。……こんな時、救世の勇者様がおればのぉ……」
老人はしゃがれた声で望みを口にする。
その言葉には諦念が大いに含まれていた……。
「……勇者はいないけど、俺がいる……。おじいちゃん、絶対とは約束できないけど任せろ! 能無しがなんだっていうんだ。俺だって守りたいものを、守るくらいの力があること証明してやるよ……!」
俺はそのまま、教会に向かって走り出す。
「面白かった!」
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