第19話 ご褒美……
俺は風呂に入って、ベッドでゆっくりしていた。
すると、ルクスハートがお風呂から出てきた。
ルクスハートはやや薄手のナイトウェアを着ている。
そしてなぜか、俺のベッドに腰かける。
「ルクスハート……? なぜ俺のベッドに座るんだ?」
俺は単純に疑問を投げかける。
「……回復しきってないからです……」
ルクスハートは顔を紅潮させながら答える。
「ああ……疲れただろうしな……。俺が回復魔法を使えれば、回復してやれたんだが、申し訳ないな……」
「回復魔法は自分で使えるので大丈夫です……。そうじゃなくて、その……頑張ったご褒美がほしい……です……」
ルクスハートはやや言いづらそうに口を開く。
「ご褒美……? ああ。何かほしいものがあるなら、明日にでも買おう!」
俺は笑顔を向ける。
「ち、違いますよ! ヴェル様に褒めてほしいんです!」
ルクスハートは声のボリュームを二倍ほどにする。
「へ……? 俺に褒めてほしい……?」
俺はルクスハートの言っている意味がわからず、言葉を繰り返すことしかできなかった。
「ヴェル様はまだ、私のこと褒めてくれてません! それに回復するにはそれだけじゃ足りません!」
ルクスハートは恥ずかしそうなような、怒ったような口調で話す。
「ええ……。じゃあ、どうすれば……?」
俺は答えがわからず、疑問をこぼす。
「褒めながら、なでなでしてください」
「え?」
「褒めながら、なでなでしてください」
「あ、うん。さっき聞いた……」
「じゃあ、褒めながら、なでなでしてください!」
ルクスハートの声がだんだん大きくなっていく。
「わ、わかった。……ルクスハート、今日は本当に助かった。ルクスハートがいなかったら、もっと多くの犠牲者が出ていたと思う。それに、騎士団の士気も上げてくれたそうじゃないか。そんなこと、ルクスハートにしかできないよ……」
俺は気恥ずかしさを感じながら、思いつく褒め言葉を並べる。
そして、ゆっくりと頭をなでる。
「……気持ちいいです……。回復していきます……」
ルクスハートは本当に気持ちよさそうにしている。
目をつむり、もたれかかってくる。
俺は数分間ルクスハートをなで続けた。
「ありがとうございます。あと、わがまま言っちゃってすみません……。初めて、戦場に出たので恐怖が残っていて……。それに、今こうしないと後悔しそうな気がしたので……」
ルクスハートは桃色に染めた頬で、にこりと笑う。
「そうか……。そうだよな……。今朝、ルクスハートの村を出て、すぐに戦場に立たせてしまったんだもんな……。ごめん、ごめんなルクスハート……。俺は悪い意味で戦いに慣れてしまっているのかもしれない……」
俺は心の底から反省した。人助けをしたいという気持ちがあったのは事実だ。
だが、そこにルクスハートは巻き込まれているんだ。
それなのに、目の前で起こった戦いにばかり目がいってしまい、ルクスハートの心を考えられていなかった。
こんなのみんなを助けて回る以前の問題だ……。
「わかってくれたなら、いいんです……。それに、私はヴェル様がお優しいことを知っています」
ルクスハートはそう言い、そっと俺を抱きしめる。
「いや、俺は自分のしたいことを優先してしまった。ルクスハートの心を蔑ろにしてしまった……」
「そんなことないです。ヴェル様は目の前の困った人を助けたかった。それだけです」
ルクスハートが少し強めに俺を抱きしめる。
「……そんな風に言ってくれてありがとうな、ルクスハート……。俺はまだ会って、二日しか経ってない子に気を遣わせてしまってる……」
「いいえ。むしろ逆です。二日の間に、ヴェル様の素敵なところがたくさんわかっただけです。さっきの回答も私のことを思っての言葉だってわかります……」
「……ありがとう、ルクスハート。君と会えたおかげで、失っていた心を取り戻せそうだ……」
「何を言ってるんですか。ヴェル様は既に、その大切な心を持ってますよ……。だから、私は一緒に困った人を助ける旅に出たいと思ったのですから……」
「そうだったのか……。ありがとう。これからは、ルクスハートのことも考えるよ。俺が守っていく……」
「ふふ、嬉しいです。私も同じ思いです。私もヴェル様のことをお守りしますね……」――。
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