第15話 呪詛の魔人軍 討伐クエスト――疾駆
そこからは、サリラの馬に乗りながら、最前線の呪われた兵士の解呪をして回る。
「《吸収》……!」
俺が手を兵士に向けて、詠唱すると呪いが吸い出され、兵士は正気を取り戻していった。
「本当に、一瞬で解呪できるんだな……! 吸収した呪いは大丈夫なのか……?」
サリラが心配そうに尋ねる。
「問題ない。俺のヘブンススキル《不浄宮》は呪いなどの不浄を吸収して貯めて、任意のタイミングで使用できるスキルだ。貯められる上限はわからないが、勇者パーティーにいる時に、ずっと吸収していたが、上限までいったことはない」
「つまり、ほぼ無制限に不浄を吸収できるということか……。凄まじいヘブンススキルだな……!」
サリラは驚嘆しつつも、声を大にする。
「そういうことだ。だから、心配は無用。どんどん解呪して、形勢を変えるぞ!」
俺は力強く叫ぶ。
「ああ! 振り落とされるなよ!」
「それは、サリラさんの腕の問題だろう?」
◇◇◇
俺とサリラは無我夢中で戦場を駆け巡った。
「これで大体の兵士の呪いは解けたはずだ……! 端から端まで駆けてきたからな……!」
サリラは力を込めた声を出す。
「よし……! だいぶ、戦況も変わったように感じるな……。でも、まだ勝てるとは言えないか……」
俺は汗を拭いながら声にする。
「……やはり大将首か……」
サリラが静かな闘志を燃やしながら、言葉を紡ぐ。
「ああ……。敵が呪詛の魔人なのが、厄介だ。戦場を見て回って感じた予想に過ぎないが、おそらく、大将が呪いを使って強化している個体が複数いるのだと思う。王国騎士団も決して弱い訳ではない。それでも、ここまでおされているのは、その強力な個体のせいだろう……」
俺は顎に手を添える。
「私も戦場を見ていて思ったことがある。どうも、敵陣の中心から禍々しい気配を感じる。大将はそこにいるのではないか……?」
「俺もその可能性が高いと思う」
「だが、敵陣の中心か……」
サリラが失望感のある表情をする。
「敵が密集しているところにこそ、有効な技がある。まあ最近、会得したばかりだがな……」
俺は目つきを鋭くする。
「その技は敵陣の中心まで連れていければ、使用できるのか……?」
サリラが希望の滲む視線を送ってくる。
「できる……。ただし、敵も味方も巻き込む技なんだ」
「なるほど……。少し、ヴェル殿には無理を言うが、構わないか……?」
「構わない。というより、おそらく同じことを言おうとしてると思う」
「は! 何だ両想いってことか? じゃあ、言わせてもらう。敵陣の中心にヴェル殿を私が連れていく。その後、すぐ私は仲間に声をかけながら、中心から遠ざかるようにする。ある程度時間が経ったら、ヴェル殿の技を使ってほしい」
サリラは軽く笑みを浮かべた後、真剣な表情で言葉にする。
「まさに俺が言おうと思っていたことだ。無事両想いだったってことだな」
俺も軽く笑う。
「危険なやり方だが、今以上に敵を倒せる機会はないと思う。すまないが、よろしく頼む」
「大丈夫。みんなを守るためだ……!」
俺はこの言葉を言いながら思った。
こんな風に思ったことなど、勇者パーティー時代はあまりなかった、と。
人を助けたい、守りたい、と思うのはここまで自然と出てくる気持ちなのだな――。
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