(結)
(フランチェスカ) みなさん、貴重なお話をしてくださいまして、本当にありがとうございました。これでもう、私は世間の常識に惑わされずに正しい結婚をすることができますわ。
(マリア) それで結局、あんたはどうするんだい?縁談についてはどういう結論を出すんだい?
(フランチェスカ) 今の私に迷いはありませんわ。当然、縁談を破棄します。みなさんの教えに従って、欠点がなくとも、愛すべき価値のないあのような男とは結婚しないことにしましたわ。
(ジュリア) でも、あんたのお父さんは認めないと思うわよ?
(フランチェスカ) 私は戦います。なんといっても、愛の道は厳しく、険しいものですからね。戦わずして愛が得られるとは思っていません。
(エレナ) その調子です、フランチェスカ。
(フランチェスカ) ああ、欠点のある駄目な男とは、なんて愛おしい存在なのでしょうか?欠点がある故に彼らは愛おしいのであり、私たちはほんとうの愛を得ることができるのです。仕事がなくても、顔が醜くても、住む家すらなくても、彼らは我々女性にとって尊ぶべき存在であり、愛を恵んでくれる最高の夫なのですわ。この世の中に、もっと不出来な男が増えることを望みます。そうすれば、人類はもっと愛を知ることになるでしょう。
(エレナ) ええ、フランチェスカ。あなたの言う通りです。
(フランチェスカ) そして、優れた男性たちに呪いあれですわ。彼らはもっともらしいお飾りで女たちを誘惑し、愛から切り離して、冷たい鳥籠の中に女を幽閉します。あのような男どもの一体何がいいのでしょうか?元から女を必要とせず、ただの都合のいい道具とみなし、散々弄んだ挙句に見捨てるのです。あんな男など、さっさとローマのコロッセオに送り込んで、ライオンと戦わせて衆愚たちの見世物にしてしまえばいいのですわ。
(ジュリア) それもそうね。でも、今の時代にローマもコロッセオも存在しないけどね。
(一同は大盛り上がりして、手を取り合って喜ばしそうに踊る。その中心にはフランチェスカがいて、マリア、ジュリア、そしてエレナが彼女を囲う)
(マリア) でも、フランチェスカ、あんたはこれからどうするんだい?また一から相手を探すってのも大変そうだけど……。
(フランチェスカ) その点は心配ありませんわ。実は、好きな人が他にもういるのです。ですから、ご心配は無用ですわ。
(マリア) それは初耳だね。どんな人なんだい?
(フランチェスカ) 私の家の近所に独り身で住んでいらっしゃる、とある老人ですわ。私とは祖父と孫と言っていいほど年齢がかけ離れておりますが、深く愛しているのです。常識的に考えればありえない恋だと思い、誰にも言わずに、胸の奥にしまっておいたのですが、みなさまのお話を聞いて、私は吹っ切れました。男は若くなくてもいいのです。私の愛する方もまた、高齢という他のみなさまの旦那様方と同じような欠点を持っており、だからこそ愛することができるのですわ。
(マリア) そりゃそうかもしれないけど、本当に大丈夫かい?だって、老人なんだろう?子どもだって作れるかどうかわからないし……。
(フランチェスカ) 確かに、あのお方はもう髭も髪の毛も真っ白になった枯れ果てた男ですけど、もしかしたら若々しい私の姿を見て、往年の盛りを取り戻すかもしれないですわ。それに、仮にダメだったとしても、ちゃんと覚悟はできております。子供ができなくたって幸せです。だって、あのお方のことを心から愛しているんですもの。
(エレナ) まあ、フランチェスカ!往年の盛りだなんて、清らかな乙女にはふさわしからぬお言葉ですよ!
(フランチェスカ) ふふ!エレナさん!私の身体はまだ処女ですけど、魂の方はもう既に大人になったのですわ!だって、ほんとうの愛を知ってしまったんですもの!
(フランチェスカは三人の人妻と別れ、軽やかな足取りで去っていく。マリアはその様子を唖然として眺めている)
(マリア) ねえ、あの子……大丈夫かな?
(ジュリア) さあね。でも、きっと大丈夫よ。なんといっても、愛の力は全てに打ち勝つのだから。
(ジュリアは皮肉っぽく言い放ち、肩をすくめる)
終了――。