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第4話 王都への帰還、そして冒険者としての誓い

地龍との激戦から三日後。将軍の指揮のもと、戦場で生き残った者たちは荷車に地龍の肉と装備を積み、山道を下り始めた。兵の数は当初の三千から五百以下に減っていたが、その歩みには誇りが宿っていた。


リリィもまた、砦で休息を取ったのち、将軍の馬車の後を歩き、静かに王都を目指していた。王都は数日の行程を経てようやくその姿を現した。城壁は白く輝き、空には王国旗がなびいていた。街の入り口には民が集まり、凱旋した兵たちを拍手で迎えた。


将軍は騎馬で先頭に立ち、街道を進みながら言った。


将軍

「これが王都、レアンドラの誇りだ。君も誇ってよいぞ、リリィ」


リリィは微笑み、しかし少しだけ目を伏せた。

「私はまだ、誇れるような者ではありません。けれど、少しでも誰かを守れたのなら、それで十分です」


その言葉に将軍はしばし無言で、やがて深く頷いた。 


・・・・・ 


その日の夕刻、王宮の玉座の間にて、将軍とリリィは王との謁見を許された。

天蓋付きの黄金の玉座に座すのは、白銀の髭をたくわえた老王・ロルバルト三世。

その両脇には重臣たちが列をなし、宮廷魔導師や近衛兵たちが静かに目を光らせていた。


将軍は片膝をついて頭を垂れ、戦果を報告した。


将軍

「魔物のダンジョンは封じられ、地龍も討伐。民の被害は最小限に抑えられました。これもひとえに、隣に立ったこの少女の力によるものです」


リリィも頭を下げ、静かに立っていた。王は椅子に座ったまま、リリィに目を向けた。


「そなたが、リリィというのか。まだ年若いように見えるが、地龍に結界を張ったというのは、真実か?」


リリィ

「はい。私にできる限りの術で、動きを封じました」


王は満足そうに頷き、手を叩いた。


「素晴らしい。そなたのような者こそ、我が軍に必要な逸材。どうだ、士官として我が王国に仕えぬか?」


その提案に、玉座の間にざわめきが走った。若く、才ある者が王直属の魔導師団に加わるのは名誉とされていた。だが、リリィはすぐに頭を下げ、静かに答えた。


リリィ

「ありがたいお言葉ですが、私はこれからも冒険者として、人々の声に耳を傾け、必要なところに向かいたいのです。定まった場に留まることは、私には向いておりません」


王は少しだけ目を細めたが、やがて大きく笑い、玉座から立ち上がった。


「ならばよい。そなたの意志を尊重しよう。褒美を授ける。黄金百枚、上級魔道具一つ、そして冒険者ギルドでの推薦証だ」


近衛兵が金の入った袋と、マジックバッグ、そして王家の紋章が刻まれた証書を運んできた。


リリィは一礼し、受け取った。

「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」


その夜、リリィは将軍に別れを告げ、王都を後にした。輝く街の灯を背に、彼女は静かに冒険者ギルドへと戻っていった。

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