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第4話:たらい回し

 シロに代わって「おねーちゃん」が色々手続きをして彼女が生活できるようにしようと考えた。シロはまだ小学生。役所に行くこともままならないし、手続きもできない。親戚もいないので、本当に一人になってしまっていた。「おねーちゃん」がなんとかしないといけないと奮起した。


 受付)


 まずは、役所の受付に来た。どこの課に話したら助けてもらえるのかも分からない。そんなときは受付の人に訊けばいい。そんな考えだった。


「生活保護は保護課ですね。別棟の2階になります」

「あの……実は女の子なんですけど……」

「内容は保護課が伺いますね」

「あ、はい……」


 受付は受付けが仕事だから、相談は専用の窓口に行かないと……と、素直に向かった。


 保護課)


 一通り話をした後、シロの家族構成の話になった。彼女がシロの親戚関係をそんなに詳しく知っている訳がなかった。そこで担当者から訊かれた。


「家族構成が……戸籍謄本などお持ちですか?」

「いえ……どこでもらえますか?」

「戸籍課となります」


 彼女は同じ建物内の戸籍課に移動した。並んでいて窓口に呼ばれるのに30分待った。そこは書類を渡す窓口で相談する場所ではなく、窓口の人とはほとんど話せなかった。


 戸籍課)


 再び来た戸籍課だったが、さっき対応してくれた人は、他の人を接客中でまた新しい人に位置から話すことになった。


「秋山白香さんの戸籍ですね? 失礼ですが、ご家族ですか?」

「あ、いえ。私は……」

「その場合、委任状が必要になります」

「委任状……」

「なにかお困りですか? 相談なら市民相談課がありますよ? いえ……私は……」


 もう新しい課に行ってもまた一から話さないといけないし、さらに新しい課を案内されるだけ。ここは保護課に戻って……と考えた。


 保護課)


 更に新しい担当者になり、また一から話すことになった。


「秋山白香さんですか……お父さんがいらっしゃいますよね? 保護者の方が養育するようになってますね」

「そのお父さんが亡くなったんです!」

「しかし、書類上は生きていらっしゃいますし……。死亡届なら戸籍課で手続きをお願いします」


 たしかに、お父さんが亡くなったことを役所はまだ知らない。それを手続きしないと話は始まらない。戸籍課に行くことになった。


 戸籍課)


 戸籍課は人が多い。窓口で話をするまでに1時間待った。


「死亡届には死亡診断書が必要です。失礼ですが、ご家族ですか?」

「いえ、私は……」

「ご家族でない場合は、後見人、保佐人、補助人などの資格を証明する登記簿事項証明書が必要になります」

「そういうのないんですけど……。どこで取れますか?」

「後見人などは家裁……家庭裁判所の管轄になりまして……」


 家庭裁判所は別の場所にあった。もはや、役所の外の建物。これが合ってるのかすら分からない。


 家庭裁判所)


 バスで移動して、30分かけて来たけど敷居は高い。


「うっ……どこに行けばいいのか分からない……」



 こうして「おねーちゃん」の1日は終わった。


「……結局、朝から1日かけて役所なんかを回って見たけど、なんにもできなかった……」


 社会の洗礼を受けて挫折するのだった。

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― 新着の感想 ―
弁護士とかがアクセスすれば、一発で対応してくれそうですけれどね。お役所なんて。 餅は餅屋だけれど、頼む伝手を見つけられるかどうか。
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