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第41話:出版の懸念点

「『文豪』の2作目なんだが……」

「自社で出すやつですよね?」


 その執筆を和田が頼まれていた。


 ここは央端社。東北のとある小さな出版社。「文豪」の小説を出版することを決めた会社でもある。そこで編集長小室と編集員和田、そして数人が狭い部屋で仕事をしていた。


「やはり、一度『文豪』に話を通しておけないかな?」

「許可的な話ですか……」


 編集長小室の急な発言にも新人編集員和田は確実に反応する。


「ああ、後でもめることを考えたら今のうちに不安要素は潰しておきたい」


 当初の考えからは少し外れるが、日本で真っ当にビジネスをしていく上では必要なことであり、避けられないことだった。


「分かりました。メールを送ってみます。もしかしたら、またメアドが死んでるかもしれないので、そのときはWEB小説のコメントに書き込んでみます」


 編集長小室は「頼む」とばかりに右手を軽く上げて和田に依頼した。


 和田は少し心配していた。せっかく「文豪」が央端社での小説の出版を了承してくれたというのに、気を悪くして他で出版するなどと言われたら目も当てられない。マイナス条件はできるだけ出したくないと考えていた。


 しかし、彼もサラリーマン。ボスの言うことは絶対。なんとか実現するのが部下というもの。小室の司令を無下にすることはできない。話すだけ話して難色を示すようならばすぐに引けばいいのだ。


『出版上どうしてもお会いしておきたいです。なんとか紙の契約書の締結をさせていただけたらと考えています』


 そのような内容のメールを送ってみた。少し意外だったのはメールアドレスがまだ生きていたこと。和田はてっきりメアドは使えなくなっていると考えていた。それどころか、翌日には「文豪」から返事が返ってきていた。しかも、全く予想していない内容だった。


『では、この住所に来てほしい。住所は……』


 その住所は福岡市内の住宅街だった。Googleのストリートビューで確認してもレンタル倉庫が表示されるだけ。仙台から福岡まで行くというのにこんな不確かな目的地と言うのは心配が残る。しかし、言われたからにはいかない訳にはいかないのだ。こんな普通に社畜精神によって和田は知らない土地の知らない場所、しかも現状がどうなっているかも分からない場所に行くことになるのだった。


「レンタルボックスは取り壊されて、マンションになっているのかもしれない!」


 和田は出張届けの用紙に記載していくのだった。


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