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第39話:フリースクールHOPE

 フリースクールHOPE)


 刑事2人はフリースクールHOPEに着いた。通常のフリースクールは国などの支援に基づいて活動しているものが多いが、ここはDVからの避難所、学校、子ども食堂、生活の場、仲間を見つける場、といくつも兼ねていた。


 行政のやり方では個別に分かれていて、運営する人間の都合がいいようになっている。ここは真逆で、子どもたちの都合がいいように準備されていた。例えば、勉強していて帰りたくない子どもがいても通常のフリースクールには泊まれない。家に帰りたくない子、帰れない子はたくさんいるのだ。


「メアリたんはよかったんすか?」


 今回は花園芽亜里の病院には寄らず、単独でフリースクールに来たのだ。居酒屋だったテナントの入口はシャッターが下がっていて閉まっていた。元店舗と言うこともあって、呼び鈴もない。前回は花園芽亜里が一緒で予め開けられていたのだろう。


「私らだけじゃ開けてもらえないんじゃないすか?」

「まかせとけ」


 そう言うと、ベテラン刑事飯島はシャッターをバンバン叩き始めた。


「すいませんーん、この間来た飯島だー! 忘れもんしたみたいでー! 誰かいないかー!?」


 ガシャンガシャンとシャッターを叩き続けていると一人の男が後ろから声をかけてきた。


「うちになにか用ですか?」


 一目で異常だと分かるその人物はマスクをして、暗めのサングラス、そして日除けでよく使われるバケットハットを被っていた。それでいてスーツ姿なのだから、ちぐはぐな感じが異常さを高めていた。


「すいません、先日こちらにお邪魔したんですが、どうも携帯を忘れたみたいで……」

「ここに? ……ああ、刑事さんでしたか」


 一度来たことがあると言っただけでこちらが刑事であることを察したのだ。ここのフリースクールの関係者に違いなかった。ただ、マスク越しの声なので、くぐもった声で少し聞き取りにくかった。


「あなたは……?」


 飯島はわざと鋭い目で質問して、警戒心を伝えた。


「おっと……、私はここのフリースクールの校長でホープといいます。すいません、施設の性格上いつも表のシャッターはしておくように言ってるんです。よかったら中にどうぞ。裏からになります」


 その校長ホープを名乗る男は左手をすいっと出して建物と建物の隙間を指示した。この時、この男が手に白い手袋をしていたのを飯島は見逃さなかった。


「すごい! せまい!」


 海苔巻きあやめは建物と建物の60センチ前後しかない隙間に興味を示した。


「せっまっ! この隙間ひと一人やっとですよ! 離合もできない! 先輩!」

「こら、騒ぐな!」


 子供のようにはしゃぐ海苔巻あやめを制止する。


「すいません……子どもで……」


 謎の緊張感は一気に削げて飯島は校長ホープに軽く頭を下げ謝罪した。


「いえいえ、子どもはうちにいっぱいいますので慣れっこです。ぜひ、こちらに」


 一見不審者の校長に導かれて狭い通路を通り抜けた。裏口に回ると畑とビニールハウス、花壇があった。


「すごいっすねー!」

「ありがとうございます。子どもたちが育ててるんですよ。農家になりたい子もいまして」


 畑とビニールハウスにはナス、トマト、きゅうり、オクラなど季節の野菜が、その脇の花壇にはひまわり、あじさい、ラン、ユリなど、そこには子どもの仕事とは思えないような畑と花壇が広がっていた。


「一部自給自足してまして。子どもたちは生きる力を身に着けてるんです」

「はへー、すごいっすね! オクラがなってるの初めて見たっす!」


 海苔巻あやめが大はしゃぎだった。


「ったく……子どもかよ」

「ささ、こちらへ。こちらのドアから入ってください」


 2人は校長ホープに案内されフリースクールに入ったのだった。

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