第3話:シロとおねーちゃん
「シロ! 大丈夫……ってことはないと思うけど、ちゃんとご飯食べてる!? アオは!?」
「あ! おねーちゃん!」
シロの家に「おねーちゃん」が来た。彼女の父親のことを知って心配してのことだった。
「おねーちゃん! どうしよう!?」
アオもシロと一緒にいた。
「えーと……そうだ、お金は!? 貯金は?」
「シロが家の通帳を持っとう」
平常心を保っていられないシロに代わってアオがしっかりと答えた。秋山家では小学生のシロが財布を預かっていた。学校の帰り道などに買い物に行くためだ。性格的にしっかり者なので、父親もシロに任せていたのだ。
「こんだけあれば当面は食べるのには困らんと思うけど……」
「私、お料理節約する!」
シロは小学生ながら料理をしていた。それもネットのレシピを見て作るだけではなく、亡き母のレシピで作ったり、自分でアレンジしたりできるほどの腕前だった。
片親でその親が他界した場合、子供はどうやって生きていけばいいのだろう。ドラマなどでは親戚に引き取られるのが常だが、現実的にはよその子供を食べさせていける程の余裕がある家は少ない。そこで、行政に助けを期待したいところだが、お役所仕事の県や市ではすぐに動けてはいなかった。そもそも、亡くなった人を積極的に知る術はなく、死亡届を提出してもらいそれによって受動的に処理するのがやっと。その人の家族について心配したりするのは役所の仕事ではないのだ。
小学生のシロの場合、不登校で小学校の教師も今回の件について知ることもできていなかった。親戚はおらず、シロの今後の面倒を見る人間はいなかった。厳しいけれど、それが現実だった。