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第29話:花園芽亜里のこと

 花園芽亜里はあまり高校には行かず、フリースクールに通っていた。登校拒否の切っ掛けは本当に些細なことだった。クラスメイトの中心的な存在の一人だった女の子がサッカー部のある部員A吉くんのことが好きになった。人生はいつも調子よくは進まない。A吉くんは花園芽亜里のことが好きだった。


 そもそも花園芽亜里は容姿が優れているだけでなく、成績もよく、周囲への気遣いも欠かさなく、人当たりが良かった。その上、特定のグループに肩入れしない公平性もあった。だが、その時はこれが悪い方に働いた。


 A吉くんのことが好きな女の子は花園芽亜里のネガティブキャンペーンを始めた。相手はクラス内に仲良しグループがたくさんいたのに対して、花園芽亜里はひとりだった。


 隠れてA吉くんを誘惑していたとか、待ち伏せしていたとか、ありもしない事実をふれまわったのだ。いつの間にか、教室の中に彼女の居場所がなくなっていた。彼女は学校にいけなくなってしまったのだ。


 彼女の居場所は家の中にもなかった。彼女が10歳のときに母親と買い物に出て、そのときに彼女は車にひかれそうになる。それを身を挺して救ったのが彼女の母親だった。彼女の母親は彼女の目の前で車にひかれ他界した。そこから父親の彼女へのDVが始まった。父親は娘の花園芽亜里を責めることで自分の心が壊れるのを防いでいた。


 人は弱い部分があると、他人にも優しくなれる。花園芽亜里がやり過ぎなほど周囲の人間に親切で優しいのはそんな背景もあった。


 学校にも家庭にも居場所が無くなった彼女には引きこもりすらも許されない環境だった。お金もない。行き場もない。今いる場所にも留まることすら許されない、それが彼女の置かれた環境だった。


 彼女はフリースクールと出会う。通常のフリースクールは、NPOなど国の支援の下、学校に馴染めなかった子どもたちにも教育が受けられる機会を失わせないための場である。


 しかし、花園芽亜里が出会ったフリースクールは民間が運営する弱小フリースクール。行き場もない、お金もない、今日食べるものすらない、限界まで追い詰められた子どものためのフリースクールだった。フリースクールと児童養護施設を兼ねたような場所。


 彼女は毎日、朝から晩までフリースクールに通った。夜は家に帰らないと父親から捜索願いを出されてしまう。そうなるとフリースクールに迷惑をかけるから帰宅する必要がある。彼女の家には門限があり、それを守る必要があるのだ。そして、帰宅したら父親のDVが始まる。なんの切欠で、どのタイミングでスタートするか分からない。DVを受けている子どもは親の顔色を伺うようになり、自分がなにか失敗をしないかビクビクしながら過ごすようになる。


 フリースクールは貧しかった。親に見放された者、DVからの避難の者、親は夜逃げをして子どもだけ取り残された者、状況がひどすぎて行政の目も手も届かない子どもたちばかりだった。子どもたちだけで20人近く保護していた。下は幼稚園の年齢の子から、上は高校生の年まで。社会に出た者は経済的に支援する方に回るものもいた。


 それでも、子どもたちはご飯を食べる必要がある。寝る場所も必要なのだ。そして、精神的に逃げ込める場所も必須だった。


 フリースクールは使われなくなって廃墟となった病院内で運営された。社会的に許された場所で運営できるほど彼女たちのフリースクールは非常に不安定な存在だった。


 花園芽亜里はそのフリースクール内で子どもたちの世話をして、食事を作る役目を負っていた。子どもたちは次第に彼女のことを「おねーちゃん」と呼ぶようになる。


ランキングが上がったので感謝の意味で、本日3話公開です。

6時、7時、12時を予定しています。

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― 新着の感想 ―
「社会的に許された場所で運営できるほど彼女たちのフリースクールは非常に不安定な存在だった。」 はどこかで論理反転が必要かと。たとえば「運営はできないほどに」とか。
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