表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/77

第27話:小川事件の顛末

 警察)


「飯島さん、ネットがお祭りになってるの知ってるすか?」

「祭り? シーズン的にはまだ少し早くないか?」

「それは夏祭りとかを言ってますよね。全然違うっす!」


 ベテラン刑事飯島と新人刑事海苔巻あやめは昼ご飯を食べながら話をしていた。


「もう6月だ、そろそろ7月だろ。祭りが始まる頃だ」

「その祭りではなくて、ネットが炎上してるんです」


「なんだ、キャンプファイヤーか」

「わざと言ってるんすか?」


 海苔巻あやめはここ1か月間のことを思い出していた。


 小川の事件の後、ネットは炎上していた。先日の「文豪」の予告殺人で小学校教師の小川が次のターゲットとされた。しかし、ふたを開けてみると小川は殺されなかった。その代わりに、小川自身の罪が暴かれ社会的に抹殺された。


 これを「殺人」と言っていいのか、その辺りが論争の争点となっていた。


 当初、「文豪」は予告殺人者なのだから、確実に殺すべきだという過激な発言の派閥と、殺人はよくないという当たり前すぎることを主張する派閥がある中、社会的抹殺は殺人と言えるのかというその中間の論争をしたい派がいた。


 小川のしていたことがまずかった。彼は子どもたちの全裸の写真を集めていた。自宅から押収されたパソコンからは男女問わず300人分以上の子どもたちの裸の写真が発見された。さらに、そのいくつかの写真には殴られた痣が見られた。


 その後警察の捜査が進んだ。小川の妻と子供にも事情聴取を行ったところ、2人からも痣が発見された。顔や腕には痣が残らないように殴られていたのだ。殴られていたのは主にお腹と背中。服を着ればその痣が隠れる部分だ。その痣は昨日今日の物ではなく日常的継続的な物に見えた。


 DV……家庭内暴力の兆候が見られたのだ。


 子どもは学校で痣のことを聞かれるようになり、しばらく登校していなかった。妻も夫のDVを止めることはできずエスカレートするばかり。そんな中、小川が自宅にどんな子供を連れて来ても妻も子どもも何も言えなかった。平然と自宅で撮影は行われた。家には撮影のための部屋まであり、異常さは近年まれに見るものだった。


 連日ニュースやワイドショーが小川の事件を報道した。新しい事実が分かるたびに、各番組の視聴率は右肩上がりに上がった。当然、各局、各番組が小川の事件を取り扱った。


 DVは生活安全課、子どもたちの拉致監禁は刑事課、小川の子ども保護は児童相談所と様々な人間が関わり小川の日常は変わった。通常、DVで逮捕されても不起訴になるなど数日で帰宅することが多い。DVは繰り返されるし、以前よりもひどくなることが多い。警察に家庭内のことを言っても解決はされないのだ。


 DVを児童相談所が認定して非難することでようやく加害者である父親から離される。しかし、それまでには長い道のりがあるのが通常だ。全国のDVの子どもを児童相談所が引き取ることなんてできない。善意の親戚が引き取ることができれば良いのだが、ドラマやマンガの様に真人間でお金持ちのおじいちゃんやおばあちゃんが親戚に都合よくいることなどなく、児童養護施設などで引き取られることになる。妻は経済的に一人で生活することは難しい上に、長年のDVにより鬱病を抱えていたり社会復帰が難しい環境からのスタートとなる。


 ある程度年齢がいった女性の働く場は、いわゆるパートしかなく収入が少ない。これにより、子どもを抱えての生活は困難と判断されることが多く、一気に家庭崩壊まで行くことがある。


 小学校教師という比較的子ども好きと周囲から思われがちな小川は家庭では妻と子どもを日常的に虐待しており、二人は痣だらけ。服を着ると見えないところを狙って殴る狡猾さがあった。


 日常的にどこかから子どもたちを攫って来ては裸にして撮影していた。撮影部屋には拘束具やベッドが置かれていたことから、性的な虐待もあったと思われ押収した画像や動画などを分析することとなった。


 改めて周囲の誘拐、行方不明などの届けを調べると、12歳未満の子どもが一時的に行方不明になる事件があり、数日後には帰宅している例が複数あった。きまってその後は子どもの性格が変わったかのように無口になり、行方不明中のことも分からない、忘れたと言うばかりだったという。小川との関連が調べられることとなった。もし関係しているとしたら小川がなんらかの精神的な口封じをしていると思われる。


「ひどい事件したね」


 一連のことが終わり、一区切りした時、定食の最後の千切りキャベツを口に入れて海苔巻あやめがポツリと言った。


「小川は逮捕された。虐待と誘拐、拉致、監禁、性的暴行までいくと、小川は親だから役満だな」


 飯島がイケボで言うと、しょうもないおやじギャグもそれなりに事件の終焉の言葉に思えた。ただ、忘れてはいけない。小川は状況から見ても「文豪」ではない。今回の事件を「文豪」が誘発したのだとしたら、彼は何がしたかったのか。


 それは「文豪」しか分からない。後に書かれる「文豪」の小説を読むしかその意図を知る術はないように感じられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
dv以前に、自動ポルノの製造などの嫌疑がかかったら、証拠隠滅の恐れも高いのでずっと勾留、刑期が終わるまで出ては来れないだろうと思う。 その意味で、発覚した段階でdvの問題は解決したと言えるとも思える。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ