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第15話:ドローンボム

「やっぱり、バッテリーが新しくなったな。新商品の方は確実に飛行時間が伸びた」


 彼は宇崎義郎、38歳。彼は仕事が休みの日曜日に室見川で船のラジコンを走らせて楽しんでいた。室見川とは主に福岡市内を流れる川で下流の広いところだと川幅は300メートル近い場所もある。


 農耕地が広がる中流部は季節によってはホタルも多く見られ「ホタルの里」として知られている。1989年4月には、室見川中上流一帯のホタルが、環境庁の「ふるさといきものの里100選」に選定された。


 広い川で土手にはジョギングコースがあったった。釣りをする者、ジョギングを楽しむ者、散歩、水遊び、福岡市民が各々楽しむ者の場所だった。


 その川の下流で波の少ない場所に宇崎の遊び場所はあった。週末はいつもここでお気に入りのラジコンで遊んでいた。ラジコンはamazonで1万円ちょいで買ったもの。比較的安価ながらジェット式で時速30キロ近く出る迫力のあるもの。釣り人に迷惑をかけないように他の人があまり来ない場所でラジコン船を楽しんでいた。


「こんなに楽しいなら朝はもっと早く出ればよかったぜ。朝食を作るのが遅くなった直子のやつ帰ったらお仕置きだな。裕二も一緒だな」


 宇崎はニヤニヤしながら帰宅したときのことを想像した。


 彼は「教育」していた。妻の直子は行動が遅いし気が利かない。子供の裕二も妻に似て行動が遅いのだ。事あるごとにどこがダメだったか指摘して、早い判断ができるようにならないと今の世の中生きていけないと考えていた。


 日々、直子の至らなかった点を指摘して、子供にも教える。宇崎に言わせれば人間は一度聞いただけでは覚えないし行動にも移せない。だから、指摘するたびに宇崎は妻直子と子供の裕二に罰を与えた。


 最初は手の甲を指二本で軽く叩くしっぺだった。それが段々強くなり、今では額に思いっきりしっぺで叩いていた。妻も子も額にアザができ、それを隠すように前髪を伸ばすようになった。


 当然明るい家庭になどなるはずもなく、暗くいつもピリピリした家庭になってしまった。それを宇崎は妻と子が悪いと考えていて、自分が導いてやらないとこの家はダメになってしまうと最近はエスカレートしていた。


 妻も子も最近では背中や二の腕など見えないところはアザだらけで夏でも長袖を着用していた。


(ンーーーーーーーーーー)

(ンーーーーーーーーーー)

(ンーーーーーーーーーー)

(ンーーーーーーーーーー)

(ンーーーーーーーーーー)


 宇崎が川辺で遊んでいるとどこからか振動音の様な音が複数聞こえてきた。


 彼は休みの日はいつも一人だった。一緒に遊んでくれる人間なんていなかったから。それが良くなかった。


 音の発生源が宇崎の視界に入った時にはもう遅かった。それは手のひらサイズのドローンの群れだった。10機から15機は飛んでいた。


「なっ、なんだこれっ!」


 追いかけてくるドローンに本能的に逃げる宇崎。手が届きそうなほどに近づくので手で払う。


 手にかするものもあるが叩き落とすことはできず、ドローンは宇崎に集まってきた。


「うわっ! ぶ、ぶつかるっ!」


(パンッ!)

(パンッ!)

(パンッ!)

(パンッ!)

(パンッ!)


 一つ一つは花火程度の音だった。他の人から離れていたし、背の高い草原に倒れ込んだので発見されにくいのもあった。


 宇崎の異常に気づいたのは翌朝でジョギングをしている20代の女性で、警察に連絡して初めて事件が発覚した。


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― 新着の感想 ―
イスラムの石打ち刑で、大きな石を投げるのは残酷だから小さな石にする、ってのがあって、結果的になかなか死なず、苦痛を長引かせることになった、なんてのがあったけれど。 小さな爆弾いっぱいで爆死ってのも、な…
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