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第63話「戦うメイド」

───ビスト王国宿屋の一室にて


 僕らは部屋の中心に円になって座っている。


「コムギ、今僕たちは未踏のダンジョンの攻略兼マップ作成をしているんだけど、今日はその続きをしようと思うんだ」


「今私たちはここまで攻略しています」


 ヒナちゃんがコムギに現時点でのダンジョンマップを渡した。コムギはそのマップを眺めている。


「僕らじゃなかなかマッピングしながら攻略するのが難しくね。コムギにも手伝って欲しいんだ」


 コムギは両手でマップを広げたまま、


「もちろんですわん!」


 元気に返事をしてくれた。


「…それと、マッピングはコムギがしていいですか?」


「ん?できるならありがたいけど、ヒナちゃんはそれでいい?」


「わ、私はマッピングに夢中になりすぎてしまうのでコムギさんがしてくれるなら助かります」


「よし、じゃあマッピングはコムギに任せるね」


「はい!ありがとうございますわん!」


「コムギ、お前は能力を持っているのか?」


 不意にリリスがそんなことをコムギに訊いた。


「え、はい。持ってますわん」


「ほう。なんの能力だ?」


 リリスは少し期待が垣間見える表情で言った。


「えーっとコムギにも詳しくは分からないんですけど、攻撃を防いだり、手からビームが出ますわん」


「え!ビーム!?かっこいい!!」


 さっきまで退屈そうにしてたアマテラスが乗り気になった。


「ふむ、なかなか面白そうではないか、早く攻略に行かないか?」


 アマテラスもリリスもわくわくしている。まあ、未踏のダンジョンで分からないことだらけだから行くしかないよね。


「じゃあさっそく─」


「転移魔法発動」


「あ」


 僕が言葉を言い切る前にリリスは僕らをダンジョンに転移させた。


「5階層に転移した。ここから攻略するぞ」


 本当にリリスの魔法は便利だ。


「まさか初めてのダンジョン攻略が5階層からなんて思いませんでしたわん」


「僕らはいつもこういう感じだからすぐ慣れるよ」


「敵です」


 ヒナちゃんが通路の奥の方を見て言った。僕らも戦闘態勢に入る。


「コムギは防御ができるんだよね、僕の隣にいて」


「はい!」


「最初は何も分からないと思うからそこに居てくれるだけでいいから。とりあえず見てて」


「わ、分かりました!わん」


 奥から巨大なアリの魔物の群れがこちらに押し寄せてくる。このダンジョン一体一体は弱いけど数が多いんだよね。


「魔力砲」


───ズオォォォォ


 僕は片手を前に出し、魔力を放った。目の前のアリの軍団が跡形もなく消えた。まあドロップしたアイテムはたくさん落ちてるけど。


「あの、コムギ前衛じゃなくてもよくないですか?」


「いや、ボス戦だとさすがにこう簡単には上手くいかないよ」


「そ、そうなんですね」


 コムギが驚きを隠せないまま言った。


「こいつはいつもこんな感じだ」


「す、速やかに終わるぶんにはいいと思いますよ」


 リリスも後ろから呆れた声で言った。ヒナちゃんはフォローしてくれてるみたいだ。


「僕はビーム見たかったのに!!」


 アマテラスは不満げだ。


「ご、ごめん。次からはコムギにも戦闘に参加して慣れてもらうようにするね」


「はい!任せてくださいわん!」


「じゃあとりあえず虱潰しにこの階層を攻略していこうか」


 未開のダンジョン攻略ってこういう感じで合ってるよね、たぶん。


「いえ、その必要はありませんわん!」


 コムギが腰に手を当て堂々と言った。どういうことだ。


「と言うと?」


「ほう。なるほどな」


 リリスは予想がついているのだろう、笑っている。


「ちょっと待ってくださいね」


 そう言ってコムギは腕を前に伸ばし、目を瞑った。集中している。能力を発動しているのかな。


「んー?何してるのー?」


「アマテラスさん、しーー」


「??ご、ごめん」


 首を傾げてコムギに話しかけようとするアマテラスにヒナちゃんが注意する。そして、コムギは目を開け、


「なるほど分かりましたわん!少し待ってくださいね」


 そう言って地図を広げ、高速で何かを書き込み始めた。…しばらくして、


「ふう、この階層のマッピングが終わりました」


 コムギは一息ついて額を拭うような仕草をした。


「え?」


 思わず声が出た。僕はコムギの持っている地図を覗き込む。アマテラスやヒナちゃんもコムギに近寄り、同じように地図を見る。


「すごい!!トラップや隠し部屋の位置まで書いてある!!」


「ほ、本当に凄いです。一体どうやって…」


 アマテラスとヒナちゃんが感激している。もちろん僕も感激している。これはすごい。次の階層に繋がる階段の位置も記してある。これなら一気に効率が良くなる。


「コムギ、どうやったの?」


「能力を使いましたわん。透明なビームを飛ばしてそれが返ってくる時間や距離で構造が分かるんです」


「天才だ」


 それしか言えない。位置を把握する能力ではなく、能力を利用して、あとは自力で何とかしたのか。


「ふむ、やはり波だな」


 リリスが不意にそう呟いた。その表情は確信を得たのか、口角が上がっている。


「先程のは波の反響で距離、方向を把握したんだろう」


「す、すごい能力ですね!」


 ヒナちゃんが両手をギュッと握り、賞賛の言葉を発する。


「これからもっと色々見られるだろうな」


 リリスは何かを分かっているかのように話している。


「そんなにたくさん褒められると照れますわん」


 コムギが地図を収めて空いた手を後頭部に当て鼻の下を伸ばしている。


「僕早くビーム見たい!!」


 アマテラスは待ちきれない子供のようなことを言い出した。だけどその目は期待が映り、キラキラとしている。


「じゃあさっそく次の階層に行ってビーム見せてもらおうね」


 僕はそう言って皆と一緒に次の階層へ向かった。




───6階層


 6階層に降りて少し歩いたとこですぐに魔物と遭遇した。竜種?魔物というより怪獣のような見た目だ。鱗は無く、二足歩行。前足は短く、背中から尾にかけてトゲトゲとした鶏冠のようなものがある。高さは3mほど竜種としては小さいがダンジョンモンスターの中ではそこそこの大きさだ。僕らは戦闘態勢に入り、警戒する。


「ねーねー!!ビーム!!早く見たい!!」


 アマテラスが後ろからすごくワクワクしている空気をぶつけてくる。しょうがない。僕は隣にいるコムギに話しかける。


「コムギ、ビームを頼んでいい?その間の防御は任せて」 


「はい!少し溜めが必要なのでよろしくお願いしますわん!」


 そう言ってコムギは両足を前後に広げ、両肘を後ろに引き、両手で何かを包むようなポーズを取った。


「はぁぁぁぁぁ」


 コムギがそう言うと両手の中に水色の凄まじいエネルギーが溜まっていく。さっきのマッピングの時とは違い、今度はエネルギーのようなものが見える。使い分けができるのか?


「ガアァァァァァァ!!!」


 その溜まってゆくエネルギーを見て、怪獣が威嚇なのか、雄叫びをあげた。そしてこちらに突進してくる。僕は刀を抜き、前に飛び出し応戦する。


──ギンギンギン!!


 怪獣の短腕の爪の攻撃を刀で受け流す。まぁすぐに頭頂部から真っ二つにはできるけどアマテラスがビームを見たがってるから防御に徹しよう。ヒナちゃんもリリスも分かっているのか、援護はしないでくれている。2人ともこの程度の魔物なら一撃で屠れるからね。

 しばらく怪獣の引っ掻き攻撃や尻尾の振り払いに対応していると、


「準備出来ました!!避けてくださいわん!!」


「了解!!」


 そう言って僕は斜め後方に跳んだ。コムギの視界の真っ直ぐ先に怪獣はいる。そして─


()っ!」


 コムギが両手を前に突き出し、凄まじいエネルギーが放たれ一直線に怪獣へ向かう。怪獣もブレスを放とうと息を吸うが時すでに遅し。そのエネルギーが怪獣に直撃し、包み込む。そのエネルギーが放ち終わった後には怪獣は跡形もなく消えていた。


「か、か…かっこいい!!!!!」


 アマテラスが今日一目をキラキラさせて大きな声を出した。確かに何か心をくすぐられるものがあった。


「溜めが必要とは言え、凄まじい威力だな。竜種を姿も残さず消し去るなどできる者はそうそういないぞ」


「コムギさん、かっこよかったです」


 リリスもヒナちゃんも認めている。僕とアマテラスはコムギに近づき、


「うん、ほんとにかっこよかったよ。あの技なんて言うの?」


「え、えーっと…名前は付けてないですわん」


「えー!!もったいないよ!!技名つけようよ!」


 僕もアマテラスと同意見だ。あんなかっこいい技に名前が無いなんてもったいなすぎる。 


「ふん」


「まあまあ」


 離れたところでその光景を見ていたリリスは呆れ、ヒナはなだめていた。


「え、えーっとじゃあ、レイシ様の技が魔力砲だったから…」


 コムギはぶつぶつと小声で何かを言っている。僕とアマテラスはワクワクしながら技名を言うのを待っていた。


「波動砲ですわん!」


 だいぶそのままだった。いや、


「シンプルイズベストってやつだね」


「かっこいい!!」


 まあアマテラスはどんな技名でもこの反応だろうな。


「じゃあコムギはマッピングするので周囲の警戒をお願いしてもいいですか?」


「ありがとう、助かるよ。警戒は任せて」


「うん!僕も頑張る!!」


「わ、私も」


「防御魔法」


 リリスがコムギの周りに防御魔法を発動した。防御魔法張って大丈夫なのかな。波が出る分ならいいけど反響があるわけだから返ってくる波は防がれるんじゃないかな。そんなことを考えていると、


「防御魔法に入っていても音は聞こえるだろう?だから大丈夫だぞ」


 リリスが説明してくれた。


「確かに、なるほどね。さすがリリス」


「ちなみに先程の波動砲は防ぐことができるぞ」


「元は同じ能力なのになんで?」


「イメージだ」


 あとはわかるだろう?という表情でリリスが見てくる。やっぱり、魔法も能力もイメージに帰着するのか。


 コムギのおかげで一気にダンジョン攻略の効率が上がり、僕らはどんどん攻略していった。そして─




───20階層


 明らかに今までとは違う存在感を放つ大きな扉が僕らの目の前にある。ボス部屋だ。このダンジョンの攻略もこれで最後か。難易度的にはBランクダンジョンになりそうだな。


──ゴゴゴゴゴ


 僕らの目の前にある扉が開く、部屋の内部が徐々に見えていく。広い部屋の中央には巨大なライオンがいた。あれがボスか。


 僕らは部屋に入った。後方で大きな扉が閉まる音がした。


「うぅ」


 コムギが少し怯えているようだ。気持ちは分かる。初めてのダンジョン攻略で初めてのダンジョンボス。緊張や恐怖があるのが当然だ。


「大丈夫」


 僕は隣のコムギの薄い肩に手を乗せた。コムギがこちらを見上げた。


「コムギは防御だけでいいからね。攻撃は僕と後衛のリリスとヒナちゃんに任せて」


「…皆頑張るんだ…ならコムギも…!!はい!!任せてくださいわん!」


 コムギも覚悟が決まったようだ。僕は腰の刀を抜き構えた。すると部屋の中央で座っていた巨大なライオンが起き上がった。高さだけで5m以上はありそうだ。威圧感もある。


「グガァァオォォォ!!」


 ライオンが威嚇する。凄まじい迫力だ。


「バフかけるよ!!」


 後方からアマテラスの声がして、僕とコムギにバフがかかる。全能力値強化だ。


「来ます!!」


 今度はヒナちゃんが後ろから声を出した。


「ガァァ!!」


 まじか。ライオンの口からこれこそビームと言わんばかりのエネルギーが放たれた。そんな攻撃できるのか。


「コムギ!!」


「はい!!」


 コムギが前に出て両腕を前に突き出した。


──グオォォォォン


 コムギの目の前に透明なバリアのようなものが現れ、ライオンの咆哮によるエネルギー放出を防ぐ。すごい。本当にすごい能力だ。


「レイシ様、大丈夫ですか?」


 コムギが振り返り僕を心配する。


「うん、コムギのおかげで大丈夫だよ」


「それなら良かったですわん」


 コムギが笑顔でそう言った。僕も口角を上げ、


「ここからは僕らのターンだね」


「はい!」


 コムギの返事を聞き、僕は地面を蹴り、ライオンの元へと跳んだ。ライオンが方前足を上げ、振り下ろす。


───ドンッ


 ライオンの腕が弾かれる。ヒナちゃんの援護だ。その隙に僕はライオンの頬を斬った。そして、空中に足場を創造し、何度も飛びかかりライオンを斬りつける。


「グギュあああぁぁ!!」


 ライオンが叫ぶ。ライオンの瞳がこちらに向く。なんだ、この違和感。僕は咄嗟に下がろうと地面に着地し、膝を曲げたが─

 爪が伸びている。ライオンの爪が伸びている。形態変化しようとしている!!僕は後ろへ跳ぶのを辞め、片手を地につけ、


氷凍世界(アイスフィールド)」  


──パリーーーン


 ライオンの足が凍る。だが─


──ボゴボゴボゴ


 ライオンの体がぶくぶくと肥大したり、萎縮したりしている。そして足元の氷はすぐに剥がされてしまう。思ったり強いダンジョンボスだ。ライオンの背中から何かが伸びている。まさか羽が形成されているのか…?飛ばれると厄介だ。僕は足を踏ん張り、跳ぼうとするが、


「ご苦労だ。いい準備稼ぎだったぞ。転移魔法」


 後方からリリスの声が聞こえた直後、


──シュンッ


 コムギがライオンの顔の目の前に現れ、


()ーー!!」


 凄まじいエネルギーが放たれ周囲が明るくなる。そして、ライオンの顔面には大きな空洞ができ、その巨体は横へ倒れた。一撃必殺。まさにその言葉がふさわしい。


「わ、わぁー!!落ちる!!落ちるわん!!」


「よっと」


 僕は空中に飛び、コムギを抱えて地面に着地した。


「あ、レ、レイシ様、ありがとうございます…わん」


 腕の中でコムギが顔を赤くしている。


「大丈夫?怪我してない?」


「は、はい。レイシ様のおかげで」


「そっか、なら良かった」


 そうして、コムギを降ろした。途中で、「あ、もう少し」 と聞こえたような気がしたけど気のせいだろう。


「かっこよすぎるよーーー!!」


 アマテラスがコムギに近寄ってきて鼻息を荒くして目を輝かせている。


「こ、今回のダンジョンボス威圧感がありましたね」


 ヒナちゃんが僕の傍によってそう言った。


「そうだね。でもヒナちゃんが援護してくれたおかげで安心して戦えたよ」


「そ、それなら良かったです…ん」


 ヒナちゃんがそう言ったあと、顎を引いて頭の頂点をこちらに向けた。


「ん?なにかな?」


「ん!」


 ヒナちゃんが頭を突き出してくる。…ああ、そういう事か。


「ありがとね、ヒナちゃん」


 僕はヒナちゃんの頭を撫でた。


「えへへ」


 満足してくれたっぽい。良かった。そして、ヒナちゃんはアマテラスとコムギのとこへトコトコ歩いていった。


「素晴らしい能力だったな」


「リリスがそこまで褒めるなんて珍しい気がする。それにあの連携助かったよ。ありがとう」


「珍しい能力だからな。ふむ、あの連携か。正直形態変化も見てみたかったが、今日はもうお腹が空いているからな。早く終わらせたかったんだ」


「ふっ、そんな理由であんな華麗な連携見せてくれたんだ」


「何笑っている。……あの能力のことだが」


「攻撃も防御もできてすごいよね」


「ああ、原理も面白いな。特に防御時だな。あれは攻撃を波に変化させ、瞬時に逆位相の波をぶつけて相殺していた。非常に興味深い能力だ」


「へぇーそんな複雑なことしてたんだ。すごいね」


「相当な技量だな。それを恐らく無意識、才能でやっているのだから、大したものだ」


「リリスがそこまで言うなんてほんとにすごいんだね」


「…私はお腹が空いたぞ。帰るなら早く帰ろう。依頼も達成出来ただろう」


「ありがたいことにそうだね、じゃあそろそろ帰ろっか」


 その後ギルドに依頼の報告をし、報酬を貰った。その報酬で焼肉食べ放題に行って楽しく過ごした。リリスはおなかいっぱいに食べれて幸せそうに寝たので僕が背負って帰ることになった。いつかアリスともこんな日々を過ごしてみたいな。


 


 

 お久しぶりです。星のおかゆです。しばらく投稿できずにすみませんでした。自分事ですが、最近音ゲーを始めてハマってしまい、周年イベントがあったんです。まだ始めて1ヶ月も経ってない初心者ですが、イベランと呼ばれるものをして無事100以内に入ることが出来ました。多くの方の支援や応援があり、僕にとっては失われた青春を謳歌する機会でした。明日貰える称号が楽しみです。最高です。


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