第61話「ファミレス」
───ビスト王国料理店にて
ファッションショーが終わる頃には夕方になってたから夕飯を食べることにした。(ファミレスで)コムギが加わってから初めての食事だ。
「あの、私はお金ないので遠慮しますわん」
メイド服の犬耳の少女が席に座らず立ったままそう言った。
「コムギはもう僕らのパーティーメンバーなんだから遠慮しなくていいよ。それに料理代はお小遣いからじゃなくて食費用のお金から出るから大丈夫だよ。それに座ってよ」
「そうだよ!コムギは僕らの仲間なんだから!」
「そうです」
「うむ」
みんなも賛同してくれる。
「そ、それなら食べさせてもらいますわん。けど座るのはメイドとしてどうかなって」
「僕の知り合いのメイドさんは食事のときは普通に座って食べてたよ。それにずっと立たれてると僕が悪いことしてる気分になるからさ」
「は!レイシ様が嫌な気持ちになるのはコムギの本望ではありませんわん!座らせていただきますわん」
良かった。僕は一息ついて安堵する。そして机の端にメニュー立てからメニューファイルを取り机に広げた。ちなみに席は僕とリリス、机を挟んでアマテラスとヒナちゃんとコムギの組み合わせで座っている。
「じゃあみんな何にする?」
「僕はお子様ハンバーグプレート!!」
アマテラスが元気よくメニューに指をさして言った。この人お子様って年齢じゃないよね。それにお昼パンケーキ沢山食べてたから量的に足りるのかな。…まぁこの子が食べたいものならいっか!
「美味しそうだね、ヒナちゃんは何にする?」
「え、えーっと…ちょっと待ってくださいね」
ヒナちゃんがページを捲って目をキョロキョロさせながらメニューを見ている。僕は横のリリスの顔を見る。リリスもこちらに気づき僕の方を見た。
「リリスは…ピザって顔してる。どう?」
「ほう、なかなかやるではないか。ならどの味だと考える?」
「そうだね…昼はサンドイッチだったから…」
ということは今僕がピザを食べるとして何味を食べたいかも参考になるな。ガッツリ系のピザかな。それとリリスは好奇心も強いから、食べたことない味だろうな。うん、これだ。
「この美味しさ五大魔導兵器級!五大乾酪比薩かな」
「正解だ、褒めてやろう。素晴らしい。ならば貴様のメニューも当ててやろう」
「うん。当てれるかな」
「ふむ、その表情はハンバーグだな」
「正解。いいね。ならどのハンバーグかな?」
「ふっふっふ」
リリスは自信ありげだ。当てれるかな?
「私これにしようと思います」
向かいの席でヒナちゃんがメニューを選んだようだ声がした。リリスと見合ってて何選んだかは分からないけど。
「ペッパーハンバーグのサイコロステーキセットだな」
「な!?…正解だよリリス。すごいね」
まさか当てられるなんて。
「貴様の好みなど知っている」
と言いながら嬉しそうな顔をしている。
「え…一緒です。…レイシさんと一緒です…!!」
「ヒナちゃんも一緒なんだ。やっぱこれ美味しそうだよね」
ヒナちゃんは嬉しそうだ。一緒なだけで喜ぶなんて子供っぽいとこもあって可愛いな。
「コムギは何にするの?」
「実はコムギも悩んでまして…今までは出されたものを食べてきたので自分で決めるなんて…」
確かメイド服を選ぶまでも時間かかってたな。
「なんでもいいんだよ。自由に選んでよ」
「え、えーっと、じゃあ、これが食べたいですわん」
「唐揚げ定食だね」
その後注文してしばらく経ちメニューが運ばれてきた。
「「いただきます!!」」
みんなで手を合わせて食べ始める。
「お子様用なのに本格的な味がする!!」
「ファミレスのサイコロステーキなのに硬くありません…!!」
みんなファミレスをなんだと思ってたんだ。
「ふふ、おい、チーズ伸びすぎだろう」
リリスが1切れのピザを手をめいっぱい伸ばしてもチーズが切れずにいる。楽しそうでなによりだ。
「コムギ、こんなに贅沢していいんでしょうか…!!」
コムギが美味しそうに唐揚げを食べている。普通の唐揚げ定食なのにこんなに美味しそうに食べるなんて。
「美味しい?」
「はい…とても美味しいわん!!」
すごく幸せそうな顔で笑っている。たぶん、奴隷扱いされてるときは地に這いつくばって食べさせてたんだろうな。牢屋の端にペット用のボウルが落ちてたから、そういうことなんだろう。
「これからは毎日普通の食事が食べれるからね」
そんな感じで各々食事を食べていたのだけれど…いち早くアマテラスが食べ終わって、ボタンを押し、店員さんが来た。
「ジャンボチョコレートパフェください!!」
「アマテラス!?…そういう事か。だからお子様プレートだったのか」
「へへー、頭いいでしょー!!」
───宿屋の一室にて
「もうねむーい!!」
アマテラスがベッドに飛び込んで大の字で寝転んだ。
「アマテラスさん、まだお風呂も入ってないんですから寝ないでくださいよ」
ヒナちゃんがお母さんみたいになってる。うちの母親がすみません。
「ふむ、ここの宿屋は大浴場があるようだぞ」
リリスがドアの横のマップを見ながら言った。
「大浴場!?行こいこ─」
──ゴチン!!
「「痛っ!!」」
アマテラスが勢いよく起き上がって隣に正座してたヒナちゃんとおでこをぶつけたようだ。
「大丈夫?」
「大丈夫か?」
「大丈夫ですかわん?」
僕とリリスとコムギが心配する。
「うぅ…」
ヒナちゃんが額を抑えながら涙目になっている。
「ご、ごめんよぉ。。。」
アマテラスがヒナちゃんを胸に抱いて撫でている。今度はアマテラスがお母さんみたいになってる。
「とりあえず大浴場に行くぞ。準備だ準備」
リリスが少女たちを先導する。コムギは僕の隣に立って動く気配がない。
「コムギは準備しないの?」
「コムギはもう準備出来てますわん。あとレイシ様のお背中を流しますので」
「「え?」」
コムギ以外の全員が驚く。
「いや、備え付けの浴室は狭いし、シャワーだから大丈夫だよ?」
「せ、狭くても大丈夫ですわん…それなら体をくっつけて洗います…わん」
「だ、大丈夫じゃないから!」
「おい、コムギも行くぞ」
「あ、レイシさまーー!!」
コムギがリリスに引っ張られて連れてかれた。ヒナちゃんとアマテラスも急いで準備をしたものを持って部屋を出ていった。
「ふぅ。まったくみんな元気なんだから」
誰もいない部屋で呟いてみる。理由はなんかそれっぽくてかっこいいから。あ、そうだ。
僕は部屋の机の引き出しに入ってたインスタントコーヒーを取り出し、しれっと沸かしてたお湯と一緒にカップに入れて混ぜる。そして、椅子に座る。あ、忘れてた。僕は立ち上がり、カーテンと窓も開ける。そして、窓側に椅子を運んで座る。月明かりが僕の左半身を照らす。そして脚を組み、夜風に当たりながらコーヒーを飲む。これめっちゃかっこいいな。
「苦っ」
まだブラックでは飲めなかった。
「「あ」」
忘れ物を取りに来たのか、静かに部屋に入ってきてたヒナちゃんと目が合った。
「レ、レイシさん…」
僕は冷や汗をかきながら震えた声で、
「ど、どどどうしたの?ヒナちゃん」
「…すごく」
「すごく?」
「すごくかっこいいです!!」
「へ?」
「普段は優しいレイシさんが一人でいるときはこんなに凛々しくて大人っぽくて、あ!普段もすごく大人っぽいんですけど、今はなんだか色気があって、それに、月明かりとレイシさんの落ち着いた雰囲気とすごく合ってて、それに夜風がサラサラの髪を静かになびかせていて儚さも漂ってて、すごくかっこいいです!!」
ヒナちゃんが早口でたくさん褒めてくれた。良かった、痛いやつだと思われなくて。
「ふっ、見られてしまったか。こんな姿見せたくなかったんだが…みんなには内緒にしといてくれないか?」
僕は声色を変えてめちゃくちゃカッコつけて言った。
「は、はい!もちろん誰にも言いません…私だけが見たレイシさん…」
「ん?」
冗談で言ったつもりなんだけど─
「じゃ、じゃあ私はこれで!!」
ヒナちゃんがドアを勢いよく閉めて言ってしまった。なにか噛み合ってなかったような。




