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第60話『ファッションショー』

 コムギが僕らのパーティーに仲間入りした。リリスたちも自己紹介したあと、


「コムギは冒険者の資格持ってる?」


 僕は訊いた。まぁ、持ってたら戦力の基準になるし、持って無かったら僕が守ればいいからどちらでもいいんだけどね。


「ついさっき受けてきましたわん」


 やっぱり語尾が“わん”なのいいな。じゃなくて、


「さっき受けたってことはBランク?」


「Aランクです。試験監督はずるい剣を使ってましたわん。でも頑張って倒したわん!」


 あ、絶対フィンだ。やっぱ光神の剣ずるいよね。ムステリオンでほとんど魔力が無かったとはいえ、フィンを倒したのはすごいな。


「そうなんだ。すごいね」


「ふへへ…だわん」


 そう言いながら僕はコムギの頭を撫でた。なんだこの可愛い生き物。ん?なんか後ろから鋭い視線を感じる…


「私の特権…」


 ヒナはそう呟いたが、レイシには聞こえてなかった。ヒナの傍にいたリリスとアマテラスはそれぞれ、「ふふ、ヤキモチとは可愛いものだな」、「ちょっとヒナ怖いよ、ひぇっ」と心の中で発していた。


「貴様、これからどうするんだ?魔道具店に行くのか?それとも─」


 リリスがコムギに視線を送る。僕もコムギの方を見ながら、


「さすがに服が布きれ一枚は可哀想だよね。とりあえず服を買いに行こっか!」


「私お金持ってないですわん」


 コムギが下を向きモジモジしながら不安そうに言った。


「僕が買うよ」


「パーティーの金でな」


 リリスが僕の傍に近寄り付け足してきた。


「いや、僕のお金でだよ!僕そんなにケチくないよ」


「なら僕の服も買ってよー!!」


 アマテラスが僕とリリスの間に入り元気にそう言った。


「アマテラスは自分のお金でね」


「えー!!なんでよー!!」


「コムギさんはお金が無いですし、私たちのパーティーに加入したお祝いですよ」

  

 ヒナちゃんが僕をポコポコ殴るアマテラスを後ろから捕まえて説得してくれている。


「えーっと、じゃあ僕もお金ないもーん!!」


「アマテラスが言うと嘘か本当かわからないよ」


 そんなやり取りをしていると、


「ぷっ、あはは」


 コムギが可愛い声で笑い出した。僕らはコムギの方を見た。コムギがこんなに笑っているの初めて見たな。


「すごく楽しそうなパーティーですね。私このパーティーに入れて良かったですわん」


 そう聞いて僕はにっ、と口角を上げて、


「まだまだこれからもっと楽しくなるからね」


 そう言った。この子が笑えなかった時間のぶんも、いや、それ以上に笑わせてあげようと僕は決意した。




───ビスト王国服屋にて


「これどう!?」


「似合ってるよアマテラス。着物姿かパジャマしか見てなかったから新鮮だよ。元気なアマテラスにぴったりだね」


「でしょー!!」


 案の定、試着コンテストが始まった。試着室のカーテンを空け、水色のワンピースを着たアマテラスがクルクルと回ってその可愛らしい姿を見せびらかしている。


「わ、私はどうですか?」


 ヒナちゃんもカーテンを開けその姿を披露する。

いつもの可愛らしいファッションとはまた違った可愛さだ。ダボダボのデニムに上は薄めの生地でへそ出しだ。これがストリートファッションというやつか。


「普段とのギャップで可愛さが際立ってるよ。普段が禁断の可愛さだとしたらそのファッションは異性として意識してしまう可愛さだね。すごく意外性があっていいよ」


「あ、ありがとうございます!」


 コムギは試着室にはまだいなくて店の奥の方の商品を見定めているっぽい。僕は隣の翼の生えた少女に話しかける。


「リリスはなにか試着しないの?」


「ふむ、興味はあるが私の生きていた時代は今ほど見た目を重視することは無かったからな。センスというものがわからん」


「じゃあ僕が選ぶよ」


「貴様の趣味は偏りがありそうだが…まぁいい。選んでみろ」


「うん、任せて」


 そう言って僕は店内の服を見て回った。良さそうな物品を取ってきてリリスに渡した。


「はい、これでお願い」


「ふむ、貴様が好きそうな服だな」


「僕のセンスだからね」


 そう言いながらリリスは試着室に入った。その間アマテラスとヒナちゃんのファッションショーは続いた。


「レイシ!!これどう?」


 アマテラスがカーテンを勢いよく開け、出てきた。


「アマテラス…それ、」


 アマテラスが横を向いた。


「ちょ、アマテラスそれはアウトだよ!!着替えて着替えて」


 僕はアマテラスを試着室押し込んだ。さすがに裸エプロンはダメだろ。どういうセンスだ…


「レ、レイシさん私はどうですか?」 


 今度はヒナちゃんだ。まぁヒナちゃんは心配しなくても──


「ヒナちゃんそれダメ!!過激すぎるよ!!着替えて着替えて」


 ヒナちゃんも試着室に押し込んだ。マイクロビキニはダメでしょ…

 あ、コムギも服を持って試着室に入ったようだ。楽しみだ。


「おい、来てやったぞ。こんなものまで持ってきて…まったく」


 リリスがカーテンを開けてその姿を見せる。


「リリス、すっごく似合ってるよ!ズボンも似合うし、パーカーにヘッドホン…しかもその気だるそうな感じが最高だよ!」


「キモ」


 リリスがこちらにジト目を向ける。


「ごめん、けどすごく可愛いよ。着てて全然違和感無いよ」


「ふん、まともに褒められるじゃないか」


「着ましたわん」

 

 ついにコムギがカーテンを開けてお披露目してくれた。


「メイド服?そんなものあるんだね」 


 いや、マイクロビキニとかエプロンがあるならまぁあってもおかしくない…のか?


「はい。探してたものが見つかってよかったですわん」


「うん。ケモ耳にメイド服なんて可愛さの反則だよ。それにとても様になってるよ。コムギにピッタリの服だね」


「へへ、ありがとうございますわん。ずっと憧れてたんです。奴隷なんかじゃなくて自分から仕えたい人の元で仕えるメイドさんに」


 その控えめな笑顔にどれほどの感情が篭っているのか僕には想像がつかない。


「コムギ…」


「私、いえコムギはレイシ様たちに仕えたいのですわん」


 その真っ直ぐな瞳を見て僕も言う。


「コムギは僕たちの仲間であり、メイドさんってことだね」


「はい!」


 コムギは首を傾けて眩しいくらいの笑顔を僕に浴びせた。


 みんな試着を終え試着室を出てきた。


「レイシは服買わないの?」

 

 アマテラスが僕に訊く。


「僕は能力で作れるから」


「ずる!!」


「貴様、さすがにそれはコスいぞ」


「冗談だよ…僕は今の黒いコートを気に入ってるからね…かっこいいし」


「みんなでレイシさんの着せ替えショーをするのはどうでしょうか?」


 ヒナちゃんが突然不穏なことを言い出した。嫌な予感がするな。


「さんせーい!!」


「ふむ、面白そうだな」


「コムギはどんな姿のレイシ様も受け入れます」


「やっぱ嫌な予感がするよ」


 うん。嫌な予感というものは当たるんだ。


「か、可愛いです!!」


「ふふん、僕が選んだ服だからね!!」


 歓喜するヒナちゃんにアマテラスが自慢げに言った。


「ふ、滑稽だな」


「レイシ様、似合ってますよ」


 僕は今、女装をさせられている。上はヒラヒラした生地に下はスカート。うぅ。あんまりだ。


「レイシは中性的な顔だから絶対似合うと思ったんだよね!!」


「でもレイシさん、意外に筋肉あるんですね。腕に血管が出てます。普段、長袖のコートだから全然分かりませんでした」


 アマテラスとヒナちゃんは色々言っている。うぅ。恥ずかしい。女装は勘弁して欲しい。


「そろそろ次のにしようよ」


「貴様、ノリノリじゃないか」


 リリスがニヤニヤしながら言ってくる。絶対僕が恥ずかしいから次にいきたいこと分かって言ってる。


「次は私が選んだ服でお願いします」


 次のチョイスはヒナちゃんか。ビキニのことがあるからちょっと不安だ。


「か、かっこいいです。選んでよかった」


「きものだー!!僕とオソロ!!」


 そう着物だ。黒色が多い着物だ。これはこれで刀とも相性が良さそうだ。


「ふむ、若干着物に着せられている感はあるが、なかなかいいじゃないか」


 リリスが1番まともな感想をくれる。対してコムギは全肯定スタイルだ。


「レイシ様は何を着ても美しいですわん」


「あ、ありがとうね」


「次はコムギですわん」


 コムギに渡された服を着てカーテンを開ける。


「かっこいいわん!!わんわんわん!!」


 コムギはもう敬語すら消えてわんわん言い出した。


「は、鼻血が出そうです」


「いや、なんで」


 ヒナちゃんがよく分からないことを言い出した。今日のヒナちゃんは愉快だな。


「執事服かっこいい!!」


 そう。アマテラスの言う通り僕は漆黒の執事服だ。まぁなかなか悪くないと思う。スマートになった気分だ。


「ふむ、悪くない」


 リリスも褒めてくれてる。


「次は私だな」


 リリスの持つ服を受け取る。リリスの趣味か…いやこれは──


「えーかっこいい!!」


「か、かっこよすぎです…!!」


「その姿で助けられてみたいですわん」


 みんな褒めてくれる。僕は今王子様コスプレをしている。これはリリスの趣味よりアリスだな。


「ふっ、良いではないか」


「最上級の褒め言葉いただきました」


「キモ」


 そんな感じでファッションショーは幕を閉じた。結局買ったのはみんなの最初の1着目だった。僕は自分にはなにも買わなかった。



 

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