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第58話『剣聖と神器』

───ビスト王国ギルドにて


 あれ?今日はギルドにたくさんの冒険者がいる。昨日はビスト王国の武闘大会で冒険者が会場に集まっている影響でギルドに冒険者がいなかったのは分かる。にしても今日は人が多すぎる。掲示板に冒険者がごった返している。依頼の取り合いだ。ギルド職員さんが順番に、とか譲り合ってとか声をかけているが冒険者たちは全く聞いていない様子だ。


 僕はリリスたちを入口近くのテーブル席に待機してもらった。あ、掲示板の人達が散っていく。


「Aランク以下の依頼は全て無くなりましたー!」


 そのように受付の職員が大きな声を出す頃には、群がっていた冒険者たちは既に散っていた。空いてていいね。

 僕は掲示板に近づき見上げた。Sランクの依頼が数枚残っている。えーと、未踏のダンジョンの攻略兼マップ作成に、郊外の森林で幻のキノコの採集、敷地外に一切の被害を出さずに廃ビル撤去…ダンジョン攻略かな、未踏なだけで中身は簡単なダンジョンの可能性も十分にある。それとほかの依頼は無理難題すぎる。幻のキノコなんて聞いたことないぞ。ビルの撤去も僕らのパーティーでは手に余る。ダンジョンが無難だな。そう思い依頼書に手を伸ばし掴むと、


「「あ」」


 同じ依頼書に手を伸ばし掴んだ人がいた。見ると、僕より背が高く、騎士の鎧を纏った金髪のイケメンがいた。


「すまないね、この依頼は僕に譲ってもらってもいいかな?」


 横にいるこの騎士はイケメンスマイルで僕に依頼を譲るよう言ってきた。むしろ騎士なら譲ってもらいたいくらいだ。


「僕の方が早く依頼書を掴んだ」


「でもまだ君は依頼を受けていないだろう?」


「それはそうだけど」


「それに僕はこの手の依頼には慣れている。単独でダンジョンを攻略したこともあるんだ。…あとは分かるね?」


 分からない分からない。


「え、どういうこと?」


 するとイケメンは「はぁ」とため息をつき、


「いいかい?これはSランクの依頼なんだ。Sランクというだけでとてつもなく危険なんだ。それなら慣れている者が依頼を遂行した方が無駄な犠牲や被害も出すことなく且つ最短で依頼を達成出来るんだ。だから僕に譲ってくれないか?」


 めちゃくちゃ正論だけど、この人他人の実力も知ろうとせず、自分の方が優れている前提で話を進めている。僕は返答をせずにいると、


「おい、あれ昨日の武闘会の優勝者のフィンじゃねぇか?」


「本当じゃねぇか!」


「その隣にいるのはAランクのレイシだぞ」


「レイシってクロノス王国の武闘会で優勝したっていう」


「レイシさんは先日の国王会議でSランク冒険者に認定されました!」


 冒険者の会話を聞いていたギルドの受付がギルド内全体に聞こえる声で言った。


「そりゃあすげぇ!!」


「どうしてあの二人一緒にいるのかしら」


「なんだ?依頼の取り合いか?」


「それなら戦って決めりゃあいいじゃねぇか!!」


 結局戦うことになった。

 ギルド裏の普段は冒険者試験を使っている闘技場で、観客席にはリリスたちや依頼を受けれず、暇を持て余した冒険者、噂を聞きつけた近所の人たちも座っている。


「君がレイシなのか。アストライオスを倒したらしいね。彼は僕の良きライバルなんだ」


「へぇー」


「興味なしかい?寂しいね。ちなみに僕はAランク冒険者であり剣聖でもある」


「へ、へぇー」


 このイケメン、ずっと笑顔だ。それほど自信があるのだろうけど。


「昨日は使わなかったけど、相手が僕と近い年齢でその上Sランクとなれば、負けたくないから使うよ」


 そう言って男が腰に携えた剣を抜いた。すごく神々しく光っている。


「おい!フィンが剣を抜いたぞ!」


「あれが神器、光神(こうしん)(つるぎ)…!!」


 観客席の方がざわついてるな。神器か、初めて見た。


「ずるいと思わないでおくれ」


「いや、全然思ってない」


「ふっ、そうか。昨日もこれを使えば国王様に勝てたかもしれないね」


 さすがにビストには勝てなかったか。そりゃそうか。ほとんどの攻撃がノーダメージで逆にこっちが一撃まともに食らうと致命傷レベルだからな。

 僕も腰の武器に手を掛けた。


「刀か。いいね」


「準備はいいですか?」


 ギルド職員の女性が僕らに問う。


「大丈夫です」


「もちろん」


 女性が頬を赤らめてフィンを見ている。剣聖ってイケメンしかいないのか?……ちょっと…ちょっとだけ羨ましい。


「それでは依頼争奪戦───開始!!」


 開始と同時に僕は空中に飛び上がる。そして腰の刀を抜き、右手を後ろへ引く。剣先をフィンに向け、


───流れ星


 既に僕は地に足をつけて、フィンの後ろに立っていた。


──キラッ☆彡


 弾かれた。フィンは僕の攻撃を認識できていないと思ったけど攻撃が当たる瞬間フィンの右腕が動き、神器で弾かれた。


───キーンッ!!


 遅れて金属音が響く。僕は後ろを振り返り距離をとって、フィンを見る。


「いや、まさかアストライオスの技を使うなんて思ってもなかったよ。僕のライバルの技を使って倒そうとするなんてなかなかいい性格してるね」


「…」


 フィンは変わらず笑顔だ。僕は1度刀を鞘に納めて脚を前後に開く。


──流星一閃


 また弾かれた!!すかさず僕はフィンの後ろから攻撃を仕掛ける。


───キン


 後ろからも防がれた。フィンが振り返り、こちらを向く。


「どうやら君の攻撃速度じゃ僕には追いつけないようだよ」


「神器の力でしょ」


 フィンが初めて表情を変えた。驚いている。


「早いね。もう気づいたのか」


「さすがに後ろから防ぐ時は不自然な腕の動きをしてたからね」


「そうだね。これがこの神器の能力のひとつ。あらゆる攻撃を自動(オート)で防いでくれるんだ…ずるいと思わないでくれよ?一応僕の能力を上乗せして速度を上げてるんだ」


「わざわざ説明どうも。ずるいとは思わないよ」


「ふふ、ありがとう。お礼にこの神器のもうひとつの能力をお見せしよう。相手から近づいてきたら、自動で防いでくれる。自分から近づいたらどうなると思う」


 なるほどね。男は両腕を引き、剣先を僕に向けた。このままじゃまずいな。強制突破(オーバーフォース)僕は最高出力の魔力強化で凌ごうとする。


「光芒一閃」


 一瞬フィンの剣が強い光を放ったと思ったら目の前からフィンが消えた。いや、見えなくなるほどの速度でこちらに向かってきた。オーバーフォース状態でも何とか凌げるほどだ。


───キキキキキーン


 全然一閃じゃなかった…!!一撃防いだと思ったら、すれ違いざまに複数の斬撃を仕掛けてきた。自分から近づいたら自分の意思でした攻撃+自動攻撃とか…さすがにずるいでしょ。


「すごいね。今の全部防ぐなんて」


 後ろに立ったフィンがそう言った。自分の力じゃないのに、我がものヅラで褒めるな!!


「逆にこれは防げるかな?」


「ん?何をするのかい?」


 最大出力連撃付与…


───キキキキキキキ


 僕は無数の突きを繰り出す。もちろん神器はそれに対応する。


「すごいねもっと早くなるんだ!」


 いや、本当にどの立場で言ってるんだ。まぁいいや。さらに、最大出力反重力付与…!!

 連撃を仕掛ける刀に赤色のオーラが纏う。


────ギャギャギャギャギャギャ


「ぐはっ」


 連撃を鎧に受けたフィンが後ろに吹き飛ぶ。


「流石に食らうよね」


「何をしたんだ…?」


 倒れた上体を起こすフィンが驚いた表情でそう言った。


「僕の刀にも弾く力を付与しただけです」


「なるほどね…けど僕も負けてられないね…本気で行かせてもらうよ」


 そう言ってフィンは立ち上がる。剣を握り、構えた。凄みがある。魔力の流れが変わった。


「僕にも騎士としての意地がある。ジュシ国近衛騎士団副団長としての意地が…!!」


「そうですか。なら僕にも意地があります。守る側の…保護者としての。こんなとこで負ける訳にはいかないからね」


「ならこれで決着をつけようか。剣聖フィン・ペンドラゴン」


「少女の保護者レイシ」


全能全魔(ムステリオン)───集光散断斬(フラッスラッシュ)


 剣聖の振り上げた剣には凄まじい光が集まり、こちらに振り下ろされる。

 重力を圧縮するイメージ…それを放つイメージ。

 僕は右手を前に出し、そこに力を集中させる。


────最大出力

 

黒闇穿衝(ブラックインパクト)


 時間がゆっくりに感じる。僕の放った小さな黒い球はフィンの振り下ろされた剣の光さえ飲み込み、進み、フィンの前で止まった。そして僕は左手の指を鳴らした瞬間、黒い球は破裂し、闘技場に凄まじい衝撃波が走った。


 会場が沈黙に包まれる。観客たちは唖然としている。闘技場の中心には僕1人。壊れた闘技場の壁にフィンが倒れている。


「勝者レイシ!!」


 その声の後いつも通り観客は盛り上がった。しばらくしてフィンが目覚めた。


「レイシ、僕の完敗だ。全力を尽くしても君には勝てなかった」


「世の中には自分より強い人なんていくらでもいるんだよ。もちろん僕より強い人もたくさんいるよ」


「実はビスト王国の武闘大会に参加したのは、騎士団団長に『揉まれてこい』と言われたからなんだ。けど楽に優勝できて、僕は調子に乗ってしまったようだね。レイシ、君のおかげで目が覚めたよ。もう一度、騎士というものを学ぼうと思う」


「そっか。お互い頑張ろう」


 僕らは握手をして仲を深めた。


「依頼の件は君に任せる。武運を祈る」


「任された」


 僕は笑顔でそう言った。


「あの、フィンさん、おつかれのとこ申し訳ないのですが、臨時で冒険者試験の実践試験監督になっていただけませんか?Aランクの冒険者は皆依頼に出てしまっていて…」


 近寄ってきたギルドの女性職員がフィンに申し訳なさそうに言った。


「喜んで受けます」


 フィンは爽やかに答えた。フィンがこちらに向いて、


「もし僕がいるジュシ国に来ることがあればその時にまた会おう」


「うん、またね」


 僕らは軽く手を振って別れた。手を振るフィンに職員さんはメロメロだった。全く…羨ましいやつめ。


「帰ってきたか、なかなかやるじゃないか」


 ギルド内に戻ると、リリスたちが迎えてくれた。


「おつかれー!!」


「お疲れ様です」


「ありがとう。依頼勝ち取ってきたよ」


「私たちはなんの依頼かも知らないがな」


「あ、そっか。えーっと、ダンジョン攻略兼マップ作成だよ」


「私はマッピングは出来んな」


「僕もー!!」


「わ、私もやったことないです」


「まじか…」


 誰もマッピングできないなんて…この依頼も無理難題だったのか。僕は下手くそな笑顔を作り、


「と、とりあえず、行ってみよー!!」

 

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