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第53話『最後から二番目の食事会』

───クロノス王国王宮食堂にて


「賑やかになったね」


 レイシは食堂に入った途端目の前の光景を微笑ましく思い1番奥の席にいるクロノスに呟いた。


「僕は仕事が楽になってうれしいよ〜」


「─!?」


 奥で席に着いていたクロノスが突如目の前に現れ、レイシは驚き、身を引いた。


「それでもやっぱレイシくんたちがいるときが1番賑やかだよ〜」


 クロノスくんが下から覗き込むように僕を見てくる。


「私以外が騒がしいからな」


 え?リリス?


「えー!?」


「リ、リリスさんも騒がしいですよ」



 アマテラスとヒナが否定の意を込めて言う。


「リリスちゃんが1番すごいと思うよ〜?だっていつかの夜レイシくんをベッドに拘束して──」


「やめてくれ…あれは魔が差したのだ」


「リリスちゃん元々悪魔なのに魔が差したの〜?」


「まぁまぁクロノスくんそこまでにしてあげたげて。リリスすごく顔が赤くなってるから」


 クロノスが追い打ちをかけ、リリスの顔には恥辱が浮かんでいた。


「別に意地悪するつもりじゃなかったんだよ〜ごめんね〜」


 クロノスくんは片手を後頭部に持っていき、申し訳なさそうにしている。クロノスくんちょっとSっぽいとこあるから本当かどうかわかんないよ。


「……もん…」


「ん?」


「なに〜?」


 リリスがなにかを発した気がして僕とクロノスくんは聞き返した。ヒナとアマテラスも気になっている表情を見せている。


「…ただけだもん……酔ってただけだもん!!」


────!?


「……リリス?」


 リリスが前傾姿勢で両拳を握り赤い顔で大きな声を出す。


───ゴチンッ!


「いた〜」


「国王様が悪いです」


 クロノスくんの後ろに立ったソロネさんがクロノスくんにゲンコツをした。さすがソロネさん。


「ふん!」


───ドゥン!


「いてっ」


 リリスにみぞおち殴られた。痛い。すごい音出た。


「おいおいそろそろ食わせてくれよー」


 静かに席に座っていたハデスが痺れを切らした。メアリーは「まあまあ」とハデスをなだめていた。


「あんた頼み方を知らないのかい?」


「うっせ」

 

 クロノスくんの席の近くに座っていたアルコンがハデスに言った。


「僕もお腹空いたぁ」


「アマテラスさんは欲に忠実ですね」


「素直って言ってよー、それじゃ動物みたいじゃん!」


「ふふっ、動物だったら犬っぽいです」


 アマテラスとヒナも楽しそうに会話していた。


「そろそろ食べよかっか!」


 クロノスがそう言い、各々席につき食事会が始まった。


「みんなーお疲れ〜、今日は僕とソロネとレイシくん一行の国王会議お疲れ様会だよー、かんぱーーい!!」


「「かんぱーい!!」」


 乾杯した途端リリスがすごい勢いでお酒を呑み始めた。


「リリス、一気飲みは危ないよ」


 僕は隣のリリスを心配する。リリスは横目で不服そうに僕を見て、


「全く貴様は…一体誰のせいだと…」


 いや、僕はむしろ庇った側なんだけど!?ってもう2杯目注いでるじゃん。


───ぱしっ


「本当に危ないから」


 僕はグラスを持つリリスの右腕を掴んだ。


「リリス」


「触るな」


 えぇー冷たいんだけど!初対面の時並に冷たいよリリスさん。


 リリスはなにか気づいたような表情を見せたあと、口角を上げ、


「そうか…この体はアリスのものだから心配しているのか」


 意地悪だ。あーもう本当に…可愛らしいな。


───ガシ


 僕はリリスの両肩を掴み、真っ直ぐに深紅の瞳を見た。


「リリス、君を心配してるんだよ。君を想って心配してるんだ」


 その言葉を聞いたあとリリスは顔も赤くし、


「まさか、ここまで言われるとは…」


 目を逸らし小さな声で言った。その後、リリスはゆっくりと多量のアルコールを摂取した。


「レイシさん!!私にも構ってください」


 今度はリリスと逆側の腕をヒナちゃんに捕まれ揺らされる。


「どうしたの?ヒナちゃん」


「え、えっと…その…」


 急にヒナちゃんにしては大胆なことしてきたと思ったらモジモジしだして、


「言ってごらん」


 レイシの優しい声色と表情を見て、ヒナは一息吐き、


「あーんしてください!!」


「あ、えっと、うん──はい、あーん」


 レイシは言葉を聞き、エンガワの寿司を箸で取り、わさび醤油につけヒナの口へ運んだ。


 ヒナは自分の好きな食べ物を選んだことへの喜びが表情に出て、


───はむっ


「美味しいです」


 ヒナちゃんすごく喜んでくれてる。良かった。


───食事が進み、


「レイシくん」


 クロノスくんが僕の後ろに立った。その真剣な表情を見て、僕も立ち上がる。


「どうしたの?」


「大事な話なんだ。とても。……僕は未来予知が使えるんだ」


「知ってるよ。アルコンが戦う時に言ってたね」


「うん…それで、数秒先の未来は正確に見えるんだけど……それより先の未来はざっくりとしか見れないんだ…もちろん多くの人の行動によって不確定なのもあるんだけど…」


 クロノスくんがらしくない不安そうな顔をしている。


「今日は色んな表情をするね」


 レイシは優しい笑顔でクロノスに言った。


「がっかりしたかな、最強なのに…こんなので」


「ううん、逆だよ。安心した。すごく人間らしくて」


「あはは、僕のことなんだと思ってたの〜?」


 クロノスくんはいつもの元気さと表情を取り戻してくれた。


───なでなで


「もちろん友達だと思ってたけど、クロノスくんはなんでもできるから遠い存在だと思ってたけど…今わかったよ。クロノスくんは普通の男の子だって」


「え〜僕235歳だよ~?」


「関係ないよ」


「あはは〜ありがとう。元気出たよ」


「友達として当然のことをしただけだよ」


 クロノスくんはふっ、と笑ったあと一息つき、いつもの薄ら笑いを浮かべ話し始める。


「未来予知で遠い未来を見ようとすると、どこかのタイミングで真っ暗になるんだよね〜」


 真っ暗…それってつまり未来がない……クロノスくんが…死ぬってこと…?


「どこかのタイミングっていつなの?」


「どこかのタイミングはどこかのタイミングだよ〜…遠い未来を見る時は時系列がバラバラだからわかんないんだよね〜」


「そっか…」


「そんな暗い顔しないでよ〜、僕が居なくなった時のために代理国王のパトロンと近衛騎士団があるんだからさ〜」


「…そういうことじゃないよ」


「レイシくん…」


 クロノスくんが高い位置に手を伸ばす。そして僕の顔に流れいていたものを拭き取る。そうか、僕は涙を流しているのか…


「僕は…僕は君に生きてて欲しいよ…いなくならないでよ…寂しいよ」


 レイシは震えた声で本音を語った。


「大丈夫だよ、レイシくん。僕もこれだけ長生きしているからね〜そう簡単に死ぬ気はないよ」


 そっか…ちょっと空回ったのかな。でもあの表情は生を諦めているような…生に執着してなかったような…


「そうだよね、クロノスくんは最強だからね…それに、なにかあったら僕もいるから」


「レイシくんも頼もしくなったね〜……ここからが1番言いたいことなんだよ、レイシくん」


 クロノスは話の初めと同じ真剣な表情となる。


「…うん」


 僕は一息飲む。クロノスくんは話し出す。


「レイシくん、君は今まで最善の道を進んで来たんだと思う。これからは最善にならないこともある…最善だとしても零れてしまうものもある。だから、その時に自分を責めないように、傷つけないようにするんだよ。そうしたら自分以外にも優しくあれるから。つまり…レイシくんはレイシくんのままでいてね」


「うん、わかったよ。後悔をしないように最善を尽くすよ」


「うーん、そういうことじゃ…ま、いっか!もう食事会も終わりが近いね…リリスちゃん酔いつぶれちゃってるから運んであげなよ〜」


 そう言いながらクロノスくんは去った。リリス、机に突っ伏して寝てる。


「リリス、運ぶよ?」


 僕はリリスをお姫様抱っこした。アマテラスとヒナちゃんを見て、


「2人はまだ食べる?僕らは部屋に戻るけど」


「僕もうお腹いっぱい!眠い!戻る!!」 


「歯磨きしましょうね」


「えー!ヒナがしてよー」


「仕方ないですね」


 4人で部屋へ戻ることにした。部屋に戻るまでの廊下を歩いていると──


───そういえば、リリス全然酒臭くないな。


 今まで全然気にしてなかったけど、すごいな。むしろいい匂いだ。甘い。酔いそうなほど甘いのに不快感を感じない。


「レ、レイシさんなにしてるんですか?そんなにリリスさんの顔を近くで眺めて、も、もしかして…キ─」


「ち、違うよ!リリスがあれだけお酒飲んで酒臭くないからびっくりしてただけだから!」


──スンスン


「ほんとだー!!」


「ん?確かにそうですね」


 アマテラスとヒナちゃんがリリスに近づいて匂いを嗅いだ。


───部屋にて

 

僕はリリスをベッドに寝かせ、同じベッドに腰掛けている。


───シャカシャカ


 ヒナちゃんが膝枕しながらアマテラスの歯磨きをしている。僕の方を見て、


「レイシさんは歯磨きしないんですか?」


「僕は能力で綺麗な状態にできるから」


「本当に便利な能力ですね」


「ヒナちゃんとアマテラスにも使おうか?」


「いえ、なんだか今日は…しない方がいいかなって」


「それもそうだね。アマテラスも気持ちよさそうだし」


 そう言って立ち上がろうとした瞬間、


──ぱし


「いや…待って…」


 リリスが僕の腕を掴み、悲しそうな寝言を言っている。


「リリス…」


「隣で寝てあげてください」


 ヒナちゃんが真剣な声色で言った。そうだね、さすがにこんな寂しそうな顔で寝ている子を放っておけない。

 僕はリリスと同じベッドに寝転び、頭を撫でた。リリスの表情が少しだけ楽になったように見える。



───長い1日だったな



私にしては珍しく一日の出来事を書くのに7話も使いましたね

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