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第51話『死の箱』

「2つ目の議題の転生者の国についてです。最近になり、転生者が急増しました。依然は異世界転移者が多かったのですが、現在は転生者が増えだしました。この現象はリュウト様、あなたの国でしか起きてません」


 ドールが淡々と説明したあと、リュウトの方を見つめている。リュウトは沈黙だ。


 うん。僕は分からないことばかりというか知らないことしかないから黙っておこう。


「お前の国で異世界の人間について研究していることを俺は知っているぞ」


 リュウトより先に口を開いたのはヴァニタスだった。


「そりゃあお前をこの世界に転移させたのは俺の国だからな」


「そうだ。俺は、俺たちはお前のせいでこの世界に連れてこられたんだ。いつお前を消したっていいんだからな」


 ヴァニタスはリュウトを強く睨んだ。リュウトは身振り手振りを使い、


「あのままだったらお前は事故で死んでいたんだぜ?それを俺らは救ってやったんだ。それなのに俺らを悪くいうのは筋違いじゃねぇか?それにそんなに元の世界に戻りたいならお前の能力で戻ればいいじゃねぇか」


 それを聞き、ヴァニタスは口の中で歯を食いしばり、顔を逸らした。


「自分を前の世界に戻すことだけはできないんだよね〜」


 机に肘をつき、口角を上げながら言葉を発したのはクロノスだった。


「…元の世界に戻す研究もしてるんだろうな?」


「もちろんだ。術式の完成は遠い未来では無いが、おそらくこちらの世界に召喚する時よりも莫大な魔力が必要だぞ」


「早く完成させろ…」


「いいじゃねぇか、俺ら転移者は歳を取らねぇんだから。気軽に待ってろ」


「そうだ、なんでお前は転移から転生に変えたんだ?」


「なぁ?そんなに国の事情話す必要があるか?」


 リュウトは周りの国王たちを眺める。全員が真剣な顔で自身を見ていることに気づき説明を続ける。


「転移の方が強力な能力を持っていることも多いが、なにせ自我が強すぎる。俺の国を離れて国王にいるやつもいるし、他国の犬になるやつもいる。1番の問題は帰りたがるやつが多すぎることだな。それなら、多少弱い能力でも、この世界に留まり続けるやつの方が都合がいいんだよ」


「それってさ〜、軍隊で使うのに都合がいいってことでしょ〜?本当になんでそこまで強さ求めんのさ〜。君が積極的に魔王軍と戦うイメージないし。新たな魔王軍になるつもり〜?」


 肘をついたままクロノスが気怠そうにリュウトに訊いた。


「それは言わねぇ。だが、国を発展したいとだけ言っておく。……元の世界が充実しすぎてこの世界だともどかしくなんだよ」


「なるほどね〜」


「次の議題だ。次の議題」


 リュウトはドールに指示を出す。ドールはまた淡々と話し出す。


「3つ目の議題は魔境についてです。こちらについてはどの国も調査をしていないため全く進展していません」


「まぁその調査は僕がレイシくんにお願いしたんだよね〜」


「はい、お願いされました」


 急に話が飛んできてびっくりした。僕は隣を見た。リリスはつまらなそうに聞いてるし、アマテラスとヒナちゃんに限っては寝ちゃってる。天使の寝顔だなぁ。


「何ニヤニヤしている」


「いやぁ、こんな可愛い寝顔を毎日見れる僕は幸せものだなぁって」


「キモ」


「すみません」


 リリスとそんな会話をする。楽しいな。


「元々お前の国があった場所なんだからお前が何とかしろよ」


「別に国がなくても私たちは仕事をできるのよぉ?」


 リュウトと濃桃色の女性が会話をしている。


 へぇー。魔境があった場所にこの人の国があったんだ。気の毒だなーとはならないな。この人の態度。すげぇ国政に興味無さそう。


「まぁまぁロースエも今は自分たちのことで精一杯だからさ〜」


 クロノスがフォローする。


「クロノスちゃん本っ当に最高だわぁ。やっぱり私とシましょうよぉ!」


「僕には心に決めた女性がいるので(キリッ」


 クロノスくん最初は躱すの上手いと思ったけど、毎回同じ言葉で切り抜けてるっ!ていうか国王たち3人しか話してないよね。


 レイシは他の国王の様子を見て驚いた。


 寝てる!!おじいさんも藍色髪は最初から眠そうだったけどビスト!!腕組んで寝てる。大丈夫なの?国王会議……


「魔境のことはレイシちゃんに任せるわぁ。ごめんねぇ、私たちは日銭を稼ぐことでいっぱいいっぱいなのぉ」


「任せてください。お互い頑張りましょう」


「あらぁ、いい子ねぇ。それじゃあ次の議題にいきましょぉ」


 ロースエはドールにそう言うと、ドールはまた淡々と話し出す。


「4つ目の議題は魔王軍についてです。レイシ様が五大魔導兵器(グラディウス)の1人と接触したことをクロノス様から聞いております。また、ヴァニタス帝国が未だに最前線で戦っていることもヴァニタス様に聞いております」


「そうなんだよね〜、確か包帯ぐるぐる巻きの男で姿を変えたり、速度を変えたりの変化を司る能力なんだよね〜?それに未来予知の魔眼も持ってるらしいよ〜」


「はい、それに斬撃の能力も持っていました」


「そうか、だが最前線でも幹部は現れない。つまり内側から侵略を始めたという仮説は正しかったか。まぁいい。最前線は俺の国が抑える。他の国は他の国で何とかしろ。ていうか1番大事な情報を考察で出させるな」


 こう聞くとヴァニタスがすごく頼もしく思える。きっと正義感が強いが故に僕を消そうとしたんだろうな。


「うんうん、いいねぇ〜君ならその結論に辿り着けると思ってたよ〜、ふふ、じゃあどこの国で現れたと思う?」


 クロノスはわざと情報を伏せていたようだ。そして不敵な笑みを浮かべてヴァニタスに問う。


「まぁまともな政治をしていないカーストのとこだろうな。国を思うなら格差を何とかしろ。というか王を変えた方がいいだろ。むしろ殺されても誰も不思議に思わないからな」


 ヴァニタスがクイズを当てつつ、寝ているカーストを叱る。


 まぁまともに政治してないのは想像がついてたな。貴族のヒナちゃんが見ても国王だと分からないぐらいだしなぁ。表に出てないんだろう。


「今回の国王会議はレイシ達がSランクになった以外進展はほとんどないな。レイシ、俺の国に来た時は消してやる。楽しみにしとけ」


「あははー」


 怖すぎでしょこの人。絶対ヴァニタス帝国には行きたくないね。


「それでは本日の国王会議を終わります。お疲れ様でした」


 ドールがそう言い会議が終了する。


「アマテラス、ヒナちゃん起きて」


 僕は2人の肩を揺らして起こす。


「うーん、あと5分」


「いや、誰もいなくなるよ?」


「あれ?私寝てましたか?」


「うん。めちゃくちゃ可愛い寝顔で寝てたよ」 


「み、見ないでください。恥ずかしいので」


 そのようなやり取りをレイシたちがする中、他の国王たちは自国へ帰っていっていた。


「ねぇレイシくん、今日は僕の王宮に泊まっていきなよ〜」


 クロノスくんがパジャマパーティーに誘ってくれた。絶対違うけど。行くしかない。


「うん!もちろん行くよ」


「やった〜でもその前に魔王軍と戦うのに手伝ってもらうよ〜」


 そういえば前も国王会議の日に魔王軍に攻められてたんだ。あの時はアリスが……


「役に立てるように頑張るよ」


「ありがとう」


 クロノスくんは優しく笑って僕らはソロネさんに触れて瞬間移動した。


「ここは…来たことない」


「そうだね〜レイシくん達が出ていった方向と逆の位置にある村だね」


「うん、まだ来てないね〜……と思ったけど、あっち」


 クロノスくんが指さした方向を見ると草原の奥の方から鎧を着た魔族が隊列を組み、こちらに向かって来ていた。その数は数百。


「気になってたんだけどあいつらはいったいどこから……最前線はヴァニタス帝国が抑えてるんはずなのに」


 僕は疑問に思っていたことを口に出す。


「まぁ魔族はいっぱいいるからね〜ヴァニタス帝国の部隊だけで完全に防ぐのは難しいだろうしね〜。ヴァニタス帝国に向かう軍とヴァニタス帝国を避けて進行する軍に別れるとか…それに転移させられる能力者が魔王軍にもいるかもだしね〜」


 包帯がカースト王国に来た方法もそれかもしれない。


「あれが魔王軍……」


 ヒナちゃんはしっかり軍として魔王軍を見るのが初めてなのか。言うて僕も2回目だけど。


「ふん、私が終焉魔法で一撃で仕留めてやろう」


 リリスが自慢げに申し出るが、


「リリスちゃーん、それされると草原が無くなっちゃうんだよね〜」


「国王様、優しいです」


 渋るクロノスと褒めるソロネ。


「クロノスが治せばいいじゃないか」


「いや〜それはそうだけど、僕が見たいのは君の力なんだよね〜」


 そう言いながらクロノスの瞳に映っていたのはヒナだった。


「え…?わ、私ですか?」


 当然ヒナは驚いた反応を見せる。


「君の能力であの軍隊を全滅させられるんじゃないかと思ってね〜」

 

「む、無理です!……魔力が足りません」


 ヒナが両手を前に突き出し拒む。クロノスは顎に手を当て、


「魔力の消耗が激しい能力なのか…逆に魔力が足りるなら殲滅が可能ということか…うん、君の能力おもしろいね〜……じゃ、レイシくん!草原を傷つけず、あそこの魔王軍を全滅させて〜」



 げっ、クロノスくんが無茶なこと言い出した。うーん、なんの力なら草を傷つけずに済むかな。氷?いやでも魔族が凍るほどだとさすがに草でも傷つきそうだな。草から離れさせればいいかな。風で魔王軍を浮かせて…ってそれだったら草も舞っちゃうな。対象を選択出来るほど僕は器用じゃないからなぁ。雷なら対象を選べるけどそのあと地面に当たって焦げたらダメだよな。やっぱ浮かす方向で……




───私たちは貴様の仲間だ、頼れ。


 リリス……


 レイシの脳裏にリリスの言葉が浮かぶ。


「リリス、魔王軍だけを空中に転移させられない?」


「ふふ、ああ。可能だ」


 少し嬉しそうな顔でリリスは答える。


「それじゃあお願い…アマテラス、バフを頼んでいい?」


「ん?……ああ!うん!!いいよ!」


 うとうとしていたアマテラスは驚きつつもレイシにバフをかける。


「それじゃリリスお願い」


「ああ、転移魔法発動」


「ん?あそこに人間がいるぞ」


 戦闘にいた魔王軍の部隊長のような体格の良い男がレイシたちの存在に気づく。だが時すでに遅し。


「うわあああ」


「くっ、なんだこれは」


 魔王軍は慌てふためく中、地面に沈むように消えていく。そして遙か上空に現れる。


「ありがとう」


───ダッ


 レイシはアマテラスのバフにさらにオーバーフォースを使い、空中へと跳ぶ。



「うん、いい方向に進んでるね〜」


「そうですね」


 仲間に頼るレイシの姿を見たクロノスが感心する。ソロネも少し微笑み賛同する。


「クロノス、やつを試したのか?」


 リリスがクロノスへ問うた。


「バレた?」


 クロノスが片目を閉じ舌を出す。それを見てリリスはフッと笑った。


「私も頼ってほしいですけどね」


 「ヒナちゃんはゴリゴリのアタッカーの能力だからね〜。今回は難しいんだよ〜」


「でもちょっと除け者にされた気分なので、今日の夜ご飯でレイシさんにあーんしてもらいます」


 口を尖らしていたヒナにフォローを入れたクロノスはその後の言葉を聞いてギョッとした。


「え、レイシくんってパーティーの中でそんな扱いなの?」

 



レイシは風の能力を応用し、空中に放たれた魔王軍の元へ近づき、



「これくらいの距離なら範囲内かな」




──ドン、ドン、ドン


 空中に放たれた魔王軍は見えない床へとぶつかり、状況を理解出来ないままでいる。


「な、なんだ」


「何が起きてるんだ」


 国王会議の空間のように作った透明な箱。これなら周りに被害を与えずに済む。


 空中には直方体の透明な箱が現れた。そこには先程まで地に足をつき、進行していた魔王軍が収容されている。


「こんにちは、魔王軍の皆さん。……さようなら」


 レイシが右手を上げ徐々にその手のひらを握っていく。それに伴い、魔王軍のいる空間も縮小していく。


「な、なんだ!?やめろ!!」


「く、きつい」


「し、死ぬ…!!」


 そしてどんどん、どんどんとその空間は小さくなっていき、



───パンッ


 レイシの右手が閉じ切ったとき、透明から真っ赤に染まったその直方体は世界から消えた。



「死の箱…いや、名付けたら他の使い方する時に困るからやめておこうかな」


 レイシは皆の元へ戻った。


「クロノスくん、僕だけじゃなかったけど良かったかな?」


「うーん?草原が傷つかなかったら別になんでも良かったんだよ〜」


 あ、そうなんだ。なーんだ。何かを試してるのかと思った。


「やはり国王様は優しいです」


「ソロネ、今日全肯定BOTになってな〜い?」


「私はいつでも国王様を全肯定していますよ」


「それもそっか〜…じゃ、王宮に帰ろっか」


「承知しました」


 そしてみんなでソロネさんの肩に触れてクロノスくんの王室へと転移した。


「もう少し夜ご飯まで時間があるからさ〜、みんなは先にお風呂に入っておいで〜」


「ありがとう、そうさせてもらうよ」


 僕らはそれぞれ大浴場へ向かったのだけど、





「なんか……いる」


 

ヒナ、クロノス、ヴァニタスは同系統の能力です。

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