第44話『良かった。上手くいって。』
───ビストの王宮の前に着いた。ソロネさんの瞬間移動で。僕は景色とかも楽しみたかったな。国の中心はコンクリートのビルばかりだけどそれはそれで珍しくていいんだよね。というかこの国、獣人の国で戦いを長所としてるのに…なんだか歪だな。しかも国のど真ん中の王宮はそれっぽい。インド・サラセン様式っぽい。言うなればインドの宮殿ホテルだな。ん?メタい?世界観が崩れたって?僕の周りの景色もめちゃくちゃだよ。めちゃくちゃな世界観にはめちゃくちゃな主観でいかねば無作法というもの。
「ようこそボーイたちここが私の家だ」
ビストが両腕を広げ片腕は王宮を、片腕は僕たちに向けて招待する。全員が沈黙する。この人こんな感じだっけ?
「おぉー!!」
クロノスくんがそれっぽい声を出す。
「クロノスちゃんは何度も来たことあるだろう。気遣いには感謝するが。」
「ビスト、どうして宮殿は国の雰囲気に合ってるのに周りはビルが建っているの?」
僕は気になっていることを率直に訊いた。
「おぉう、急に切り出すなぁ。そうだな、これは私の癖だ」
「へ?」
ついアホっぽい声を出してしまった。
「私はスーツに腕時計を着けている男が好きなんだよ。眼鏡をかけてると尚更いいな!」
「そ、そうなんだ」
変な空気が流れる。みんな気まずそうな顔をしている。
「そういう姿のやつが働きに来て欲しくてビルを建てまくったんだが全然来なくてな。廃ビルばっかになったんだ。」
この人が国王で大丈夫か?まぁ狩猟、採集、加工がメインのような原始的な生活に近い営みだから成り立っているのか?
「なるほど、それならご馳走してもらうお礼として─」
僕は能力を発動した。この場にいる全員がスーツ姿になる。眼鏡と腕時計も着用している。それぞれの性格に合った着こなしだ。
「おい!最高じゃねぇか!!レイシちゃん!!」
ビストが歓喜する。そこまで喜んで貰えるとは。やはり性癖は世界を繋げる。
「それなら良かったです」
僕はホストスーツだ。なんかかっこいいから。
「ソロネ〜。僕のは蝶ネクタイだよ〜。」
小さな手で蝶ネクタイの両端を引っ張りながらクロノスくんはソロネさんに見せびらかしている。本当にこの人は国王でなければ普通の男の子だな。
「お似合いです国王様」
「ソロネは秘書っぽいね!」
すると突然ソロネさんが頬を赤らめ胸と股を押さえて、
「ひ、ひ、秘所ですか!?」
「あはは」
そういえばソロネさんはそういうとこがあるんだった。これにはクロノスくんも苦笑いだ。
「おいレイシ何してくれてんだ!」
ハデスが僕にズカズカと向かってくる。五大堕落者はフランススーツにしたんだよね。ハデスは前ボタンを開けている。
「ハデスくん似合ってるしかっこいいよー!!」
ハデスの後方から来たメアリーがハデスの腕に抱きつきながら言う。
「そ、そうか?ならいい」
「僕が能力解いたら元の服装に戻るから大丈夫だよ」
「先に言えよな」
「あの黒いコート気に入ってたの?」
「そりゃ黒いコートかっこいいだろ」
それは同感だ。僕も普段は黒いコートだからね。厨二心をくすぐるよね。
「分かるけどせっかくご馳走してもらうならそれに応えないとね」
「それもそうだな」
ハデスとメアリーは仲間の元へ帰った。
「リーダーこだわり強いもんなー」
「スーツに黒い手袋似合っている」
「うるさいな」
アンテノールは仲良いな。
「貴様、ほかの者ばかり見て私たちは見ないのか?」
後ろから声がして振り返ると、
「おぉー、みんな似合ってるよ」
「ふふ、当たり前だ」
「でしょー!!」
「あ、ありがとうございます」
僕は大きく息を吸い、
「リリスはブラウスを着ることによって普段の印象とは違う可愛い印象になって最高だし、アマテラスは普段は着物だからスーツとのギャップがあってハイヒールを履いてもちっちゃいのも最高だし、ヒナちゃんは普段からワイシャツ着てるから似合ってるのはもちろんいつもはベストで可愛いけどスーツを着ても可愛いのは最高だよ」
僕は早口で語った。
「そんなスラスラと出てくると気持ち悪いぞ」
「この服にしたのレイシじゃん!」
「私だけいつもと印象変わってません」
「あはは、自分でもキモイとは思ったよ」
「そろそろ中に入ろうか!」
ビストがまとめてくれた。僕らはそのまま王宮に入り、使用人に宿泊部屋まで案内された。僕らは別に置くべき荷物はないんだけどね。リリスが基本魔法で収納してくれるからね。ちなみに他の人たちは持ってた荷物をブリーフケースに変えといた。まぁ、もう能力は解除した。さすがにあの人数に能力を発動し続けると疲れる。
宿泊部屋はクロノスくんの王宮と同じようでよく分からない絵や変わったデザインの家具が多かった。あと、リリスが使用人に要求した通りにめちゃくちゃ大きなベッドが部屋にどんと構えてある。まじでみんなで寝る気だ。
みんなでベッドに一列に並んで座っている。。右からリリス、僕、ヒナちゃん、アマテラスだ。夕方の日差しが窓から差し込む中、僕らはお話する。
「みんな僕が居なくなったあと大丈夫だった?」
「リリスが体調崩しちゃったから近くの村に寄って休養してたの」
「そしたらアリスさんに変わって驚きましたよね」
そうだ。アリスに変わったんだ。
「ねぇリリス、なんでアリスに変わったの?」
「ふむ、簡単な話だ。私の肉体の回復のためにそれが最短だったからだ。」
「というと?」
「アリスは天使だ。加護で病気や不調などから守られている。今回は病気というより貴様が私を殺そうとしたせいで起きたことだがな」
「それは本当にごめん。…アリスの魂は今どういう状態なの?」
するとリリスは片手を天井に向け、こちらに見せる。そういえば前は聖力を見せてアリスの魂があるとか言ってたよね。
「見ろ。聖力は、無い。」
───っ!?
まさか、そんな。僕は驚きと絶望が表情に滲み出る。
「ん?違うぞ。そういうことでは無い。今アリスの魂は私の中にある。ただ聖力は魂に帰属しているため私が聖力を纏うことはできないがな。」
なんだ。そういうことか。僕は安堵する。
「良かった。それならアリスの意識はあるの?」
「よく分からない。今の状態はアリスが孤児院にいた時の私の状態に近いからな。もしかしたら今も見ているのかもな。ただ、交代ができたりはしないな。まぁ私の意識が無くなったらまた出てくるかもな。」
「そっか、アリス、今見てたら聞いて欲しい。あの時はありがとう。君がいたから僕はまた立ち上がれたんだよ。」
「ふむ、そうだな。もう少しで私の計画がチャラになるところだった。全く貴様は…1人で背負い過ぎだ。」
リリスは上体を傾け、ヒナちゃんとアマテラスの様子を見る。僕も2人の方を見た。2人とも上体をベッドに倒し、向き合って寝ている。
「天使だ」
「天使はアリスだろう」
「それはそうだけど、そういうことじゃなくて」
僕は手をわらわらと動かして説明しとうとする。
「ふふ、冗談だ」
リリスは口の前に軽く握った手を持ってきて目を細めて笑う。清楚だな。
「2人とも見ていないようだな…ほら、来い」
リリスが両腕を広げ、僕を待っている。日暮れの明かりがリリスを照らす。少し頬が赤い気がするのはこの日差しの熱のせいだろうか。でもリリスが自分からこんなことするなんて、本当に珍しい。
「うーん、でも今はこっちの方がいいかな」
──ぱたっ
「きゃっ」
僕はリリスの膝に倒れた。リリスはらしくない声を上げる。驚かせてしまった。
「ごめん」
リリスは僕の頭を撫でてくれている。
「貴様はよく頑張ってくれている。これくらい構わん。私の抱擁を拒否したのはどうかと思うがな。」
「いらいよりりふ(痛いよリリス)」
リリスが僕の頬を引っ張っている。その後また頭を撫で始める。
「貴様はいつも1人で背負おうとする。戦いの時だって貴様はいつも自分だけが前に出て戦う。私たちは貴様の仲間だ、頼れ。私たちは守られるだけの対象じゃない。」
「そう、だね。でも、僕もみんなに助けられてるんだよ。僕は1人になったらダメだって今回のことで気づいたんだ。みんながいるから僕は頑張れるんだ。だから、その、なんて言えばいいか分からないけど、ありがとう。」
「ふふ、なんだそれは」
僕はみんながいないと不安でしょうがない。ひとりが怖いんだ。今まで誰かが傍に居てくれたから僕は普通でいられたんだと思う。だからみんなが一緒にいてくれるだけで僕は嬉しいんだ。そう、嬉…しいん…だ。
「寝たか、全く…仕方の無いやつめ」
ビスト・リサラスキー 女 24歳
体力:S 魔力量:S 魔力出力:SS
攻撃力:S 攻撃範囲:D 防御力:SS 敏捷:SS
能力:力の権化
肉体、身体能力の強化。獣化との組み合わせにより凄まじい身体能力となる。
好きなもの:サラリーマン、強者
嫌いなもの:嘘、難しい話
マイブーム:風呂上がりのアイス




