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第43話『VSビスト』

「開始!!」


 僕とビストの試合が始まった。


 アリスに会えたあとから魔力出力が上がったんだよね。気持ちって大事なんだね。今の僕ならどれくらいの威力になるんだろう。


「魔力砲」


──ズドォォォォォ


「グルルルル!!」


 ビストは獣化している。


──ダダっ


 速い。避けられた。威力が上がっても当たんなきゃ意味ないよなー。


「グルァァ!!」


 ビストは飛びかかって爪で引っ掻こうとしてくる。僕は腕を天に向け振り下ろす。


──ドゴーーーーン!!


 ビストに落雷が直撃する。そして、


再現(リピート)


──ドゴーーーーン!!


 もう一度落雷が直撃する。


「グルルルル」


 ちょっと服が焦げてるくらいでビストは無傷だ。まじでこの人硬すぎでしょ。この状態は多分ファルコンさんを越える強化状態なんだっけ?うーん、どうしようか。距離はとって戦いたいな。


「ガウッ!!」


 速い!!ビストは一瞬で僕の目の前に移動し、爪で攻撃を仕掛けてくる。僕には能力の常時発動があるとはいえさすがにこれを防げるイメージは湧かない。なら、


ドゴーーーン


 僕は闘技場の壁に吹き飛ばされ砂埃が舞う。観客席がザワつく。だが、砂埃から出てきたのは無傷の僕だ。攻撃を食らった部分に日々の入った岩が付着しておりそれがボロボロと地面に落ちる。岩は飾りだ。本命は能力の常時発動で防ぐこと。岩の防御による精神的な安心で能力の常時発動での無傷でいるイメージを補強する。いや、それにしてもこんな吹き飛ぶなんて驚いた。

 ビストは四足歩行で戦闘態勢でいる。1つわかったことがある。獣化の弱点。それは戦略的行動がとれないこと。真っ直ぐ向かって攻撃してくる。まぁわかったからって攻撃を避けるのも速すぎて厳しいし、こちらが仕掛けても避けられるか当たっても硬すぎて効かない。五大元素竜は少しずつ適応して強化されてくからまだ攻略できた。というかまるで攻略させようとしてるような…いや、これは後で考えよう。獣化は即フル強化だからなぁ。どうしたもんか。僕は顎に手を当て考える。獣化したビストは攻撃してこない。あちらもこちらを伺っている。五大堕落者(アンテノール)は概念系の能力で倒してたな。さすがに相性が悪かったのか。概念かぁ。さすがに触れたら殺せるとかそういうのは真似出来ないなぁ。クロノスくんの触れて早送りとかも難しいなぁ。


 うーん、詰んでね?獣化は常に多量の魔力を消費し続けてるから待てば勝てるかもしれないけどそれは僕が納得しない。命のかかった戦いならその作戦もありだけど試合だと胸を張って勝ったとは言えないな。それにビストの魔力量多いから消費仕切るまでに日が暮れる。相手もそんなこと待ってくれないだろう。

 僕は腰に携えた刀の柄を握る。


「グルァ!!」


───流星一閃


 僕は前方に高速で移動する。やっぱこの人硬すぎでしょ。


ギーーーーン

ドゴーーーン


 僕の前方の壁が大きな音を立てる。ビストがぶつかったのだ。真剣で斬れなかった。腕痛い。


「ガアァァァァ」


 砂埃の中からビストが跳んで出てくる。もういい。真っ向勝負だ。僕は刀と鞘を消し、構える。ビストは既に僕の目の前まで来て、腕を振り上げ爪で引っ掻く構えをとっている。腹ががら空きだ。連撃付与。


───ドドドドドドドドド


 僕の拳がビストの腹を連打する。ビストの爪は僕の首元で止まり、後ろへ吹き飛ぶ。


タタッ

 

 ビストは着地する。もちろん衝撃だけでノーダメージだ。ここまで来たら体力勝負だ。存分に殴りあってやる。


ドンッ


 僕は地面を強く踏みしめ、声を張り上げる。


「行くぞ!!ビスト!!」


「グルルぁぁぁ!!」



ドドドドドドドド  


 凄まじい殴り合いの音が会場に響く。その間、


「レイシさん楽しそうですね」


 ソロネがクロノスに話しかける。


「そうだね〜あんなに楽しそうな顔で戦うの珍しいね〜」


「彼は戦闘は好きじゃないと勝手に思っていたので意外です」


「いや〜僕はレイシくんは戦闘狂の類だと思うな〜、じゃないとあんなにバンバン新しい技取り入れないでしょ〜」 


「ふふ、確かにそうですね。見る度に違う技を身につけてますからね。」


「成長することに貪欲なんだよね〜センスもあるんだろうけど、やっぱり意思の力がすごいね〜何か明確な目標に向かって進み続ける人は強いよ」


「それは国王様もそうでしょう?私はそれを知りませんが、国王様はなにかのためにずっと努力しているように思います。周りから見たらおちゃらけて見えるかもしれませんが私、ソロネは気づいていますよ。」


「ええ〜?なんのこと〜?」


「どんなことがあろうとソロネは味方でおります」


「ありがとね〜。お?レイシくんがまた面白いことをするみたいだよ〜?」


 


 ギリギリついていけてたけどこのままじゃそろそろまずいな。でも、何度も攻撃を受けて理解できた。いける。


「ビスト、獣化(それ)は獣人の特権じゃないですよ」


ズォォォォォ


 僕の周りの流れが変わる。観客席がザワつく。


「なんだあれ?」


「いやまさか」


「獣化だ」


「うおぉぉぉ!!」


「獣人以外にもできるのか!?」


「待て!あいつ意識を保ってないか?」


 僕は意識を保ったまま獣化をした。いや、これはもう獣化じゃないな。


強制突破(オーバーフォース)


 魔力回路を無理やり広げ出力を上げる。僕の魔力が底を尽きることは無いから獣化のデメリットを完全に打ち消せる。いろいろ試したいけど今回は殴り合い主体でいこう。


「いきますよ」


「グルァ!!」


ドゴン、ドゴン


「グウゥ!」


 僕とビストの拳がぶつかり衝撃波が闘技場に響く。僕の方が力が強く、ビストはよろける。


「おい!あいつ国王様に力で勝ってるぞ!!」


「なにもんなんだ!?」


「ガアァ!!」


 ビストが爪で攻撃を仕掛ける。やっぱりそれは隙が大きいな。


「ふん!」


ドゴーーン


 僕の拳がビストの腹部の中央を捉えもう一度ビストを闘技場の壁へぶつける。そして僕もそっちに跳び、


「終わりにしましょう」


 連撃付与。


ドドドドドドドドド


 ビストを壁もろとも連打する。


「グ、アァ…」


 ビストは獣化が解け気絶する。だけどこの人ほとんど無傷だ。防御に魔力を割いて魔力切れを起こし疲労もあり、気絶したんだろう。僕も強制突破を解除する。ふうー。確かにこれは疲れるな。肉体的な問題がありそうだ。


「勝者レイシ!!」


「うおぉぉぉ!!」


「国王様に勝ったぞおぉぉぉ!!」


「俺初めて見たぞ!!国王様に勝つやつを!!」


 会場は大盛り上がりだ。僕はしゃがんで倒れたビストに魔力を送り回復する。


「うぅ」


 ビストが目を開ける。復活が早いな。さすが獣人だ。ビストはこちらに気づき口角を上げる。


「はは、負けたよ!完敗だ!!力で負けるなんて初めてだよ!」


「あはは、僕も咄嗟でなんとかしただけでギリギリでしたよ」


 僕はビストに手を差し伸べ、ビストはその手を強く握り、起き上がる。


「2人ともわだかまりは無くなったかな〜?」


 クロノスくんとソロネさんが2階席からふわふわと降りてくる。


「クロノスちゃん、私はレイシを認めるよ。レイシちゃんもそれでいいかい?」


 1冒険者が国王に認められるのは嬉しいことだ。


「はい、ありがとうございます。でもレイシ“ちゃん”はやめてください。」


「はは!それなら良かった。ちゃん付けはやめないけどな!」


 ビストは腰に手を当て盛大にわらったいる。


「ねぇビスト〜?王宮に呼ぶ人、何人でもいいって言ってたよね〜?」


 クロノスくんが悪い笑顔でビストに話しかけてる。


「ああ、いいと言ったが・・・嫌な予感がするな」


「じゃあこの子たちも!」


 クロノスくんは体を横にずらし後ろに両手を向け紹介する。


五大堕落者(アンテノール)とメアリーさんです!」


 アンテノールはユグドラシル以外みんな気まずそうにしている。ハデスの隣にいるメアリーさんはあははと笑っている。


「ぐむむ」


 ビストは悩んでいたが、すぐに口を開き、


「レイシちゃんに免じて許しやる!お前らにもごちしてやる!!楽しんでけ!!」


 声を張り上げて言った。


「あの、アタイも・・・」


「げっ」

 

 クロノスくんがこんな嫌そうな顔するなんて。アルコンが身を縮めながら会話に入ってきた。


「ああ、嬢ちゃんもクロノスちゃんの知り合いかい?いいだろう。王宮に来な!」


「わあ!ありがとう!感謝するよ!」


「この人知り合いじゃないよ!!」


 クロノスくんがアルコンを指さしてビストに主張する。アルコンは目をうるうるとさせている。


「クロノスちゃん、さすがにそれはないだろう。女の子を傷つけるのは男としてどうなんだ?謝りった方がいいんじゃないか?」


「うぅ〜、ごめん、アルコン」


 え、かわいい。クロノスくんが小さな手でスボンの裾をぎゅっと握って謝っている。


「クロノスー!!」


 アルコンがその可愛さに悶絶してクロノスくんに抱きつこうとする。


ベシッ


 ソロネさんがそれを許すわけがなくアルコンをはたく。


「離れてください。」 


「アンタはアタイの邪魔をすんじゃないわよ!」


「執事ですので」


 ソロネさんとアルコンの言い争いが始まった。ビストは苦笑いで見守っている。みんな各々で会話を楽しんでるようだ。


「なんだこの状況は」


 リリスたちが到着した。


「みんなでご馳走してもらう話してたんだよね、ん?アマテラスとヒナちゃんボロボロじゃない?」


「そうか、こっちは最前席で見てたんだがな、貴様らの戦いで後ろの客が熱中して前に押し寄せて来たせいで私たちは潰れかけたんだ。」


 なんだって!?そんなの保護者の僕が許さないぞ。


「よし、ここの国民皆殺しにしよっか!」


「ふふ、貴様は本気でやりそうだな、私は構わんが」


「やめてー!!」


「わ、私たちは気にしてませんから」

 

「ちょっと楽しかったもんね!」


「それはわかりませんけど…」


「じゃあ直すね」


 僕はそう言って2人の服を能力で直した。


「すごー!!ありがとう!!」


「何でもできるんですね、ありがとうございます」


「いいよいいよ、気にしないで」


「よし!!そろそろ行くか!!」


 ビストが声を張る。みんなで歩いて王宮に行くのも悪くないね。遠足気分だ。ご馳走楽しみだな。


「瞬間移動頼んだぞ!ソロネちゃん!」


 いや、ソロネさん頼みかい!





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